見出し画像

【COVID-19 多言語支援プロジェクト】日本語ページを新設しました

私たちCOVID-19 多言語情報プロジェクトは2020年4月の立ち上げ以来、やさしい日本語や英語をはじめとする16ヵ国語(注1)で、新型コロナウイルスに関係する情報を翻訳し、記事として多言語情報ポータル(以下、ウェブサイト)上に公開してきました。

ウェブサイトに諸外国語で掲載している各記事には、もとになっている「日本語原稿」があります。「日本語原稿」には、私たちが設置した7つのカテゴリー分類に沿って、政府や自治体が発信している情報を体系的にまとめられています。


これまで私たちが、日本語原稿を記事としてウェブサイト上で公開していなかった理由は、2つ挙げられます。ひとつは情報発信の対象が「日本語での情報取得が難しい在留外国人の方々」であることを踏まえたとき、日本語での情報および、多くが日本語でのみ掲載されているその情報源をウェブサイトに掲載した場合、ウェブサイトの利便性が落ちるのではないかと判断したためです(注2)。またふたつめの理由としては、このプロジェクトを立ち上げた直接の動機が「新型コロナウイルス関連の情報が、諸外国語でうまく広まっていないことによって混乱している、在留外国人の方々の助けになりたい」というものであり、限られた運営メンバーの人数の中この目標を達成していくには、「諸外国語での記事発信とその掲載方法の質を高めていく」ことを最優先にする必要があると考えていたためです。


しかし今回、当プロジェクトは活動を再開するにあたって、日本語原稿のウェブサイト上での公開も始めることを決定しました。その目的としては、以下の3つがあります。

注1: やさしい日本語、英語、韓国語、簡体字、繁体字、フランス語、スペイン語、イベリアポルトガル語、アラビア語、ベトナム語、ドイツ語、タガログ語、インドネシア語、ブラジルポルトガル語、ウルドゥー語、ネパール語(公開日時順、ネパール語翻訳は(株)アークコミュニケーションズより提供)。現在はイベリアポルトガル語、ドイツ語を除いた14ヶ国語でウェブサイト公開中。

注2: ただし、当該記事の翻訳言語で参照できる行政のウェブサイト等がある場合には、記事内でリンクを掲載する形でそれを紹介しています。

①情報発信過程の透明化

これまでnote記事を通して、私たちの情報発信における正確性確保の取り組みを公表してきました。しかしながら、その取り組みの結果としてどのような内容の日本語原稿が作成されているのかは、公表できていませんでした。

ウェブサイトで多言語情報発信を行うまでには、日本語原稿としてまとめたいテーマをリサーチ→リサーチした情報を「日本語原稿」としてまとめる→日本語原稿をダブルチェックする→完成した日本語原稿を多言語で翻訳する→翻訳をダブルチェックする→ウェブサイトに記事として掲載するという過程を踏んでいます。日本語原稿をウェブサイト上に公開することで、特に情報発信における前半の過程をより明確に知っていただけます(日本語原稿の詳しい構成については、次項②をご覧ください)。

また、日本語原稿は各言語の翻訳記事の大元でもあります。公開することで、読者の皆さまに翻訳記事と日本語の記事を比較しながら、ウェブサイト上で読んでいただけるようになります。翻訳によるズレや間違いが生じていないかを皆さま自身で確認していただくことができます。

②母語・国籍を問わずより多くの人に、整理された情報を届けたい

日本語記事の公開により、日々刻々と変化していく状況や、それに伴って流れてくる膨大な情報を整理できないでいる日本語母語話者にも、必要な情報を届けやすくなると考えています。その理由は、私たちの執筆する日本語原稿の「構成」にあります。

各言語に翻訳される前提で私たちが執筆している日本語原稿は、「タイトル」「本文」「参照リンク集」から構成されています。

まず「タイトル」は、呼びかけ調や原稿の内容を簡潔に要約したものになっており、読まれた方が、ご自身の状況に当てはめられるような文体を心がけたものになっています。
次に「本文」には、私たちが行政機関のウェブサイトやメディアのニュース、時には関係各所に電話をかけながら収集した情報をまとめています。しかし、ただ単に情報を切り取って貼り付けるのではなく、在留外国人の方々が置かれている状況と、各自治体ごとの対応を考慮しながら、適切な行動フローを示すことができるよう、情報の配置に気をつけています
最後に「参照リンク集」には、私たちが日本語原稿を作成するにあたって利用した、すべてのソースが列挙されています

画像1

当プロジェクトの情報発信は、在留外国人の方々のために始めた活動であり、現在も「在留外国人の方々が置かれている状況を考慮しながら、発信する情報を精査していく」という姿勢には変わりありません。

しかし、このプロジェクトで作成している日本語原稿には「コロナウイルス関係の困りごとを解決するために、まず何をすればいいのか」「どのような行動フローを辿ればいいのか」といったことが簡潔にまとめられています。その中には、国籍や使用する言語に関係なく役立てていただける情報があるはずです。私たちが発信する情報は、人種差別相談窓口から体調不良時の相談窓口、家賃補助、生活費補助と多岐にわたっています。みなさま是非、ご自身に有用な情報がありましたらご参照ください。

今回のパンデミックのような非常事態下では、政府や行政機関が発信する情報は日々変化しています。国籍や使用する言語に関係なく誰でも、中立的で、イデオロギーなどによって曲げられていない情報を取捨選択することや、自分にとって必要な情報にアクセスすることが難しいと感じられることも多いはずです。

今回の日本語原稿公開を通し、諸外国語だけではなく日本語でも整理された情報を届けることは結果的により多くの方々の、情報取得における助けになれると信じています。

③要支援者への支援の輪を広げるきっかけに


ウェブサイトのトップページ上に諸外国語と日本語の情報発信ページを並列したり、「このプロジェクトについて」ページを設置することで、まずはウェブサイトを訪問してくださった方に、当プロジェクトが「日本語を含むさまざまな言語で、情報の正確性を第一にしながら情報発信を行っている」ことを知って頂ければと思っています。

もちろん、「多言語で情報発信が行われている」ことを知っていただくだけでは、支援の輪を広げることにはならないかもしれません。ですが、まずは地道に日本語および諸外国語での情報発信を続け、ウェブサイトで発信するコンテンツの質と量を強化し、「多言語情報ポータルサイト」としての基盤を固めます。それと同時にウェブサイトそのものや、ウェブサイトを作り上げるまでに得た知見を利用しながら、このプロジェクトをひとつでも多くのコミュニティに浸透させることを目標にかかげていきます

画像2

参考資料:ウェブサイトの仕様

例えば今回の日本語記事公開により、ウェブサイトには「多言語に翻訳された記事に加えて、それらと同じ内容の日本語記事が公開されている」という特徴が生まれます。このことによって、ある日本語話者が、日本語での情報取得の難しい在留外国人の方に、有用な情報を伝えたいと思った際に、まず日本語で、彼らの支援に必要な情報を得ることができます。そして、必要な情報を日本語で咀嚼した上で、各言語に翻訳されたページに在留外国人の方々を誘導できるというメリットが出てきます。

なぜ、上記のことが「メリット」と言えるのか。それは、在留外国人の方々の情報取得経路に理由があります。例えば、東京都国際交流委員会の調査(2018年12月)によると、情報収集の手段として「日本人の友達に聞く」と答えた人は76%で、「スマートフォンを利用する」と答えた人(90%)に次いで2番目に多い数字を記録しました。日本語での情報取得が難しい在留外国人の方々を支援するにあたって、日本語話者が情報を正確に把握することは、非常に重要だといえるでしょう。周りの日本人から得られる情報は、在留外国人の方々の生活を大きく左右する可能性があります。

このようなメリットをより広く伝えるため、プロジェクトの公式SNS(Twitter/Facebook /note)では、記事更新アラートの定期的な発信を行います。また、記事内容を日本語で画像化したものの発信を行うなど様々な形で、ウェブサイトで発信されている情報についての広報を行っていく予定です。
さらに、SNS上の広報活動だけでなく、各自治体の外国人相談窓口や国際交流協会といった外国人支援の大きな担い手にも、直接コンタクトを取っていきます。そのような過程の中で、口コミを通してこのプロジェクトを知る人が増え、結果としてより多くのウェブサイトを必要とする人に届く、という流れができればと考えています。

画像3

参考:記事内容を日本語で画像化する発信
(出処:COVID-19 多言語支援プロジェクト 公式Twitter


おわりに


以上のような狙いで日本語原稿を公開することにより、より多くの方々に必要な情報を届けていくことを実現したいと考えています。

このプロジェクトの運営チームは、大学院進学を控える大学卒業生や在学生、まだ社会に出て間もない若者たちにより構成されており、至らない点もあるかと思いますが、どうぞ忌憚ないご意見を賜れれば幸いです。

本件について、またプロジェクト全体についてお気づきの点、伝えたいことなどございましたら、以下の連絡先までご連絡ください。
メール:covid19.multilingual.jp@gmail.com
宛先:COVID-19 多言語支援プロジェクト
代表 加藤 万結(かとう まゆ)

完全ボランティアワークですが、ウェブサイトの運営に少額ながらかかる費用を賄うため、ほんの少しだけご支援いただけますと幸いです。首都圏に住む外国人の方が周囲にいらっしゃれば、ウェブサイトやTwitter、Facebookを拡散いただけるだけでも大きな助けになります。