「本当の自分らしさ」をはかる12の質問 ーオーセンティシティ尺度ー
こんにちは。紀藤です。昨日は「オーセンティシティ(本物の自分らしさ)」をテーマに「オーセンティシティは3つの要素の一貫性である」というお話を、論文よりお伝えしました。
本日も続けてまいります。本日はそれらの要素から「オーセンティシティ尺度を開発した」という論文のメイン部分についてです。それでは、まいりましょう!
オーセンティシティの歴史
本題に入る前に、オーセンティシティの歴史についてお伝えしたいと思います。カウンセリング心理学において「オーセンティシティとは幸福の最も基本的な側面」とされてきました。
たとえば、オーセンティシティのかつての研究では、いくつかの示唆が得られています。たとえば以下のようなものです。
外部からの影響に対して、自分の欲求を従属させる人は、自尊心のレベルが低く、うつ病が多い(Neff and Harter, 2002)
オーセンティシティと人間関係の満足度は、正の相関関係がある。(性別、自尊心、コミットメント等を調整しても同様の結果になる)(Lopez Rice, )
社会心理学の研究において、「役割の間で自分の性格が異なると感じる程度」が少ないほど、幸福度が高いことがわかった。(Roberts&Donahue, 1994)
オーセンティシティを感じることは、不安・ストレス・抑うつと負の相関があり、自尊心と正の相関があった。(Sheldon, 1997)
オーセンティシティを感じることは「主観的幸福感(Subjective Well-being)」と集団の繋がりの両方に関連していた。(Bettencourt and Sheldon, 2001)
なとなど。こう並べてみると、確かにオーセンティシティも特に個人の幸福感に重要な影響を与えていると感じます。
しかし、これらは実証的な検証がされていなかったものがほとんどであったようです。本論文で述べているオーセンティシティの3つの要素の一部しか見ていないなどあり、実証的な研究が求められている、というのが本研究の背景でもありました。
オーセンティシティ尺度の開発
さて、そんなオーセンティシティを実証的に測定するために、オーセンティシティの3要素「自己疎外(self alienation)」「本物の生き方(authentic living)」「外部からの影響の受け入れ(acceptiong external influence)」を測る項目を設けました。
ポジティブ心理学の専門家や心理療法家が、オーセンティシティに関わる文献を調べ、上記に該当する25の質問項目を作成しました。
そして、大学生200名を対象にしたサンプルにより、因子分析を行い、オーセンティシティ尺度を作成して、特に因子負荷量が多い4項目を、3要素それぞれで抽出しました。そして、合計12項目の「オーセンティシティ尺度」を作りました。内容は以下の通りです。
オーセンティシティ尺度の研究からわかったこと
そして、オーセンティシティ尺度について、いくつかのサンプルに調査したところ、以下のことがわかりました。
⑴ 民族や性別、職業間でも変わらなかった
合計4つのサンプルに調査をしました。
1つ目は、民族的や職業が違ったサンプル180名(独身・既婚・離婚、黒人・白人・アジア人、職業もエンジニア、教育、販売など)、2つ目は大学生のサンプル(単位取得の見返りなし)、3つ目も大学生(単位取得の見返りあり)、4つ目は大学つながりのコミュニティから選ばれました。
その結果、いずれのグループの質問の因子負荷量も誤差の範囲であり、異なるグループ間でも同様の結果が得られるとのことがわかりました。
⑵再テスト信頼性が示され、ビックファイブとも違っていた
また再テストを行った際に、平均値は2-4週間の間で安定を示しました。状態の変化は心理テストではあるものの、受けるたびに変わるものではない(少なくとも2-4週間の間では)ということがわかりました。
また特性を示すビックファイブの概念との一致を確認したところ、オーセンティシティの概念が「6つ目の因子」とはならず、区別されることがわかりました。
⑶自尊心と幸福感と相関があった
オーセンティシティ尺度と「自尊心」の尺度の相関を調べたところ、下位尺度との相関があることがわかりました。(「本物の生き方」「外部からの影響の受け入れ」は中程度)
または「主観的幸福感(Subjective Well-being)」との相関があることもわかりました。他、もう一つの幸福感尺度である「心理的幸福感(Psycological well-being)」とも相関があることがわかりました。
まとめ
「オーセンティッシティ」とは、これまでもよく耳にする言葉でした。
オーセンティック・リーダーシップなども大学院でも勉強しましたが、なんともつかみどころがない印象でした。それらを一つの尺度として、質問項目にすることで、手触り感を感じる論文でした。
また一つ視点が広がり、なんだかワクワクしました。いつもながら、先人の研究者ってすごいなあ、と感じた次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!