おすすめの一冊『静かに退職する若者たち 部下との1on1の前に知っておいてほしいこと』
こんにちは。紀藤です。さて、毎週日曜日は、最近読んだ本をご紹介する「おすすめの一冊」のコーナーです。今回の一冊は、こちらの本です。
本書の特徴
こちらの書籍は、金沢大学の教授である著者が、「最近の若者の考え方」について、様々なデータと著者自身のインタビューから調査した一冊となっています。
「静かに退職する若者たち」とメインタイトルで掲げられていますが、続く副題には「部下との1on1の前に知っておいてほしいこと」とあります。読んでみた感想としては、どちらかというと著書のメインテーマとして副題の方に比重があるように感じます。
本書では若者の傾向や価値観を著者なりに分析した上で、「なぜ表面ではいい子・優秀な子と見えるのに、急に辞めてしまうのか?」をデータとインタビュー調査を含めて検討し、そして「その上で若者と1on1を行う上で、何を心がければよいのか?」について提案を行っています。
若者の傾向「いい子症候群」
具体的には、著者の視点では若者の特徴として「いい子症候群(素直で真面目・優秀に見えるがあまり目立ちたくない)」があるのでは、と述べています。そして、一部の積極的な層を「自己実現系」と本書では称しています。
若者101人への調査
本書で興味深い内容が、若者101人へのインタビュー調査です。くわえて、「1on1苦手度チェックリスト」なるものを独自に作成・調査されて、その上で1on1に対するタイプを、以下のように更に細かく分類をされていました。
そして、上記のそれぞれのタイプに当てはまる若者が、どういった心理があるのかをインタビューを元に検討し、それぞれのタイプに対して上司側はどのようなスタンスで1on1に取り組めば効果的なのかを、を提案しています。なるほどなあ、、、と興味深く読めました。
様々なデータが参考になる本
本書では、著者自身の101人に対するインタビューの他にも、様々なデータが引用をされていました。それらが若者の現状を検討したり、あるいは上司の若者に対するアプローチを検討するために参考になると感じます。
たとえば、「上司に期待していることは?」「理想的だと思う上司や先輩」「あなたにとっての理想の上司とは?」などを、それぞれエン・ジャパン、日本能率協会、SHIBUYA109エンタテイメントなど、調査した団体がデータを横断的に紹介しています。共通項目として見えてくるものもあり、興味深いです。(たとえば、「仕事について丁寧な指導をしてくれる」「耳を傾けてくれる」などは度のデータでも理想の上司として上位に入っている傾向があるようです)
他にも、「1on1における課題」「1on1に求める成果について」「1on1において得られたと感じる成果はなにか?」などを、様々な調査データを引用して説明しています。また、1on1とコーチング、カウンセリングについての立ち位置も示されていたり、現在の現場で行われている1on1のタイプ分けなどを著者の見解でわけていることなどが、参考になります。
まとめと個人的感想
読みながら思った印象は「現場のリアルから見た若者像」という感想でした。
データを扱いながらも、インタビューで見聞きした情報や、上司の方の現状などを想定しながら仮説を立てているため、客観性もエッセンスに加えつつ著者独自の視点による「生っぽさ」が本書の特徴であると私は感じました。
ユーモアを交えた語り口からスラスラ読めることと、著者自身の見解から大胆な切り口で提案をしているところが特徴的です。一方、タイプわけなどでわかりやすくする副作用として「本当にそうだろうか?」「そのように一括りをすることもできないのでは」と感じなくもありません。(たとえば、「いい子症候群」と症候群としてしまうと、どうしても悪い印象がしてしまう、など)。
そいずれにせよ、それも含めて新たな視点を提供してくれる一冊だと感じました。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!