細さ5ミリの後輩くん
しゅーです。
何気なく他人の恋の芽生えを見かけたとき心がフッと明るくなるような経験をしたことはないだろうか。
冬の枯れた枝に緑が萌えるような晴れた冬明けのような感覚。
今日は最近見かけたそんな感覚について話していこうと思う。
ある日、僕は就業後に会社のカフェスペースで残った仕事をしていた。
そこは会議室がいくつかあるフロアで、中央のカフェスペースに置かれた机に僕はいた。
作業中に別部署の後輩くんが話しかけてきたので何気なく雑談をした。どうやら遊びの予定があるようで僕のもとを去っていった。
僕はバリスタが店をたたんだ後も作業を続けていた。
しばらくすると、背後に別部署の年下女性社員が誰かを探すように会議室を覗き込みながら歩いていた。
顔見知りだが、急いでいる様子だったので声をかけそびれた。
彼女の手には2つの缶ジュースが持たれていた。
そして1番角の会議室へ入っていった。
一通りの仕事を終わらせた僕は人気(ひとけ)のある会議室に、顔を出そうと1番角の会議室に向かった。
会議室のドアには縦に細いガラス窓がついている。
横に長い部屋の奥の片隅まではギリギリ見えるようになっている。
その人目に付きづらい奥の片隅に、細さ5ミリの後輩くんとボードゲーム、そして缶ジュースがギリギリ見てとれた。
そういえば。
後輩くんはよくボードゲームサークルに来る人だった。
彼女もよくボードゲームサークルに来る人だった。
もしかしたら邪推かもしれない。でも彼の向かいに座る人は想像できた。
その奥ゆかしさや手の届かなさ、若さはあまりにも人を寄せ付けない雰囲気があった。
なんだか悪いことをした気になってしまい、そっとドアノブに触れた手を離して帰路についた。
得も言われぬ芽生えを感じた夜だった。
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