Kings Of Leon / When You See Yourself (2021) 感想
うむむ
現在Foo Fightersと並び、泣く子もシンガロングするアリーナ・ロックで世界を熱狂させるKings Of Leon、あまりにもあんまりなジャケットの前作から5年振り8枚目の新作です。ですが、これはうむむむ、正直、なかなか厳しいアルバムです。
前回の記事でも少し触れましたが、2013年の6th「Mechanical Bull」以前と以降では彼らに対する期待感の種類が違います。現在の彼等は音楽的なチャレンジや成長、バンドとしてのギラついたエッジーさみたいなものを期待して聴くのではなく、フェスのメインステージで6万人が気持ちよく合唱するアリーナ・ロック、その盤石の横綱相撲を楽しむバンドです。本作でも前作「Walls」からの流れを汲むクリアな音像で、爽快なスケール感の大きいロックを聴くことができます。
私はと言えば未だに一番好きな彼らの作品は南部のストロークスと言われた1stなので、そもそも退屈な売れ線ロックと批評的にもイマイチな前作からの流れを感じる先行曲(いやいい曲ですが)を聴いてやっぱりか…と少し残念な気持ちもありましたが、それでも。本作、前作に増して、耳に残る曲が…な…。
ルージング・ゼア・エッジ
勿論基礎体力が非常に高いバンドですので、曲自体が駄目ということではありません。エッジーさは皆無なれど、真面目なバンドが作った真っ当なロックソングが並んでいます。4."Stormy Weather"〜5."A Wave"(サーフロック風という新規軸を見せる余裕綽々さ)〜6."Golden Restless Age"の、アップテンポな曲が続く前半の流れなんかはドライブに最適なBGMって感じです。
そう、本作は良くも悪くも耳当たりのいい、何となくロックが聴きたい時のBGMとして最適な作品です。バンド華やかなりし2000年代中盤、彼らがマスからもインディーファンからも支持される、当代きってのロックスターまで成り上がった理由はそこじゃないだろうと、初期からのファンであればあるほど一抹の寂しさを感じる最近の彼らを象徴する、そこそこの打率で安定した一枚。残念ながら将来、キャリアの晩年に本作が敢えて語られることは無いと思います。
「自分を見つめた時」に見えたものが本作だとしたら、彼らが今後目の覚めるような曲、アルバムをリリースすることはないでしょう。彼らはこのまま新世代のBon Joviで終わってしまうのでしょうか?
点数
5.2
アリーナロックと言うと安易にU2を喩えに出しがちですが、贔屓目もあれど、U2をその手のバンドだと思ったことは一度もありません。特に近年のU2の音楽は常に、老いてトレンドから取り残されたという事実を何とか払拭せんという、現役のバンドならではの気概と意地に満ち溢れています。作品の出来不出来は別にして。
片や彼らはもはやトレンドなど知らぬ存ぜぬ、2作続けての安定しつつもスリルとは無縁な横綱相撲。KOLの明日はどちらでしょうか。
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