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10 Best Albums of 2021

何とか2021年のうちに打つことができました。来年はフェスとか海外のバンドのライブが本格的に復活するかなーと思っていたところでまた変異株。どうなることやら。Olivia Rodrigoは好きだけど流石にティーンエイジャーや職業評論家の方々と同じ熱量では聴けない年頃な人間が今年、好んで聴いたアルバム達です。

次点 Silk Sonic / An Evening With Silk Sonic

ご存知Bruno MarsとAnderson Pakk.によるレトロでチャラくてスウィートな最高のソウル/ファンク・アルバム。(恐らく本人的にも)アイドル売りだけではキツくなってきているBruno Marsですがこんなアルバムを作れるあたり、地力の高さに頭を垂れるほかありません。

10. The Killers / Pressure Machine

 Sam FenderにBruce Springsteen狂としての年季の違いを見せつけた貫禄の一作。パッと聴きの地味さからかキラーズ王国として名高いイギリスではSamの方が売れたみたいですね。
The War On Drugsなど今年はBruce Springsteenぽいと言われる作品が多くありましたが、彼らの場合はBruceっぽさの先にThe Killersとしての色が充満しているのが良いですね。一曲目の壮大すぎて少しクドいギターのアレンジだったり2曲目の泣きのメロディーとシンセの相乗効果によるエモさだったり。ギターのDaveも復帰してThe Killers完全復活を告げる作品です。一般的な彼らへの期待からすると地味であることは否定できませんが。


9. The Coral / Coral Island

1960年代の隠れ名盤と言っても通用しそうな2枚組ガレージサイケポップ集。シーズンオフの人がいない観光地というノスタルジックでありながらどこか不気味な設定もパンデミックでさらにリアリティを増すという、頭でっかちサイケおじさんが奇跡的に時代と再び交錯したアルバムです。コンセプトを気にしなくても円熟のソングライティングが素晴らしい。"Lover Undiscovered"の美ガレージサイケはどうでしょう。Blossomsと話が合うのかますます不安になる一作です。


8. Snail Mail / Valentine

1stの魅力はそのままにソングライティングとアレンジの幅を広げた理想的かつ隙のない2nd。少し一本調子なところがあり聴いててダレることもあった1stの課題を見事にクリアしています。恐るべし。隙がなさすぎて可愛げがありません。その分エレキギターのアレンジの多彩さが薄れたのが少し残念と言えば残念ですが。monchicon!のインタビューによると本作の制作中はoasisをよく聴いていたそうで、その感性にも抜群の信頼が置けます。

7. Mild High Club / Going Going Gone

Ariel Pinkとかが流行っていた時代を彷彿とさせる少しオシャレなサイケ・ポップ。本作はシティポップからシャンソン風の曲まで、これまでで一番振れ幅が広く、かつポップで気持ちいいです。時代はようやく90sリバイバルと言われるようになってきたかな、というくらいなので2000s後半な雰囲気は若干前時代感もありますが、その時代に青春を過ごした私は抗えません。"Me Myself And Dollar Hell"は名曲です。

6. The Wallflowers / Exit Wounds

このバンドに関してはもう時流とか余計なことは考えずに王道のオルタナカントリーをやってくれれば最高なんですが、久しぶりのアルバムではまさにそれをやってくれたので最高でした。以前にも書きましたが惜しむらくは2000年代から何も変わっていないButch Walkerのパキッとしたプロダクションで、もっと生々しい音で聴きたかったなと。本作のソングライティングにもButch Walkerが関わっているようなので一概には言えませんが、次はJohnathan Radoあたりといかがでしょうか。

5. Gruff Rhys / Seeking New Gods

ここからは何と上半期ベストと(若干順番が入れ替わっている気がしますが)ほぼ同じです。生活スタイルが変わったため下半期の作品は上半期ほど聞き込めていないという個人的な事情もありつつ、それだけ上半期にいい作品が多かったということかと思います。これはSuper Furry Animalsの才人による白頭山にインスパイアされたサイケ・ポップ絵巻。
休火山としての孤独、山にまつわる神話など、様々な物語を展開しながら、国境にある山として、バンド時代から一貫して描いてきた相互理解の難しさを噛み締める結末(「僕らはこれまでになく近づいたけど/それでもとても遠く感じる/雪の中で真実と智慧を探すように」)に至る展開は見事というしかありません。

4. Paul Weller / Fat Pop (Volume 1)

キャリア(恐らく)後期の傑作の誕生です。シンプルなソウル/R&B、ブルースといえばそうなんですが、何よりも感動するのはそこに特化していたソロ初期、30年前の作品群よりも若々しく聴こえることです。一体どうなっちゃってるんでしょう。しかも当然のように全英1位を獲得し、今月にはオーケストラと共演した企画盤も出すというバイタリティ。太々しいPopのVolume 2に期待しかありません。

3. Hiss Golden Messenger / Quietly Blowing It

The Wallflowers同様、この人ももう得意のカントリー・ソウルをただ演ってくれればいい域にいますが、本作はここ数作で指折りにメロウな作品に仕上がっています。その曲調のとおり作品に通底するのは諦念ですが、底抜けにポップに開き直って終わるのが最高です(「救済/絶望/そういったゲームが教えてくれたことは/時にフェアじゃないってこと」、「嫌な気分/憂鬱で、そんな考えから抜け出せない/でもそんな気分をどう歌えばいいか分かってる」)。今年は更にホリデーアルバムも出していますが、そちらも"Silent Night"がタイトルと歌詞を見るまでそれと分からないという、狩野英孝みたいな仕上がりで最高でした。

2. Clairo / Sling

唯一、上半期ベスト上位陣の中に割って入れたのが本作。60s後半のサンシャイン・ポップ〜70sのSSW、Brian WilsonとかTodd Rundgren、Carol Kingの系譜に通じる職人的ポップソングが光る傑作です。そこに持ち前のボソボソした低血圧っぽい歌声が乗ることで宅録感、インディーポップ感が付与されて2021年の作品として違和感なく聴くことができ、つまりは攻守揃った完璧な作品。2曲目の"Amoeba"は今年を代表する名曲です。

1. Maxïmo Park / Nature Always Wins

上半期ベストにも選びましたが、今回改めて聴いて、1年通してもベストだと言い切りたいと思います。まあ正直、Clairoと比べた時に贔屓目、長い付き合いのよしみが入ってはいますが。
若手やレジェンドばかりでメディアに取り上げられる機会こそ少なくなっているものの、メンバーの脱退やレーベル移籍を乗り越えて地道に活動し、クオリティの高い作品を作り続けている中堅〜ベテランこそ評価されるべきです。本作で久々に全英2位にランクインした事実はもっと語られるべきでしょう。
時代をリードするような作品ではないかもしれませんが、"All Of Me"、"Versions Of You"などの本作に収められた切なくもポップな"うた"、思わずUKロックなんて言葉を引っ張り出したくなる楽曲達が何よりも雄弁に物語っています。

***

 Band Of Horsesが延期になってしまったのでCat Powerのカバー作とBernard Butlerの再録記念盤という、前向きなんだか後ろ向きなんだかよく分からない作品からスタートすることになりそうです。SpiritualizedとCarl Baratのソロが出るようなので(Libertinesはどうした)、来年もとても楽しみです。

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