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「精神科医とカウンセラーの協働について」#cotree研究所ラヂオ 第10回レポート

cotree研究所に所属する千葉と原田がカウンセリング研究の現在について喋ったり喋らなかったりするラジオです。ゲストをお招きして毎週水曜日の19時からYouTubeにて配信しています。

第10回放送のアーカイブはこちら

今回のゲスト:精神科医 前田佳宏さん

医者8年目の精神科医。
国立精神神経医療センターにて薬物依存やトラウマ治療に関わる。
コーチング学習サロンや哲学カフェ、講演活動など幅広い活動をしている。

 数少ない「心理療法もする精神科医」の前田さん。「精神医療においては、本人の「生活をよくする」ことが重要」と語ります。対処の三本柱は「薬物療法・心理療法・環境調整」ですが、薬物療法だけでよくなるパターンは限られるため心理療法の出番になるそう。精神科医とカウンセラーの2つの顔をもつ前田さんにお話をうかがいました。


カウンセラーと精神科医、協働のポイント

 カウンセラーと精神科医の役割分担で1番重要なのは、「患者を混乱させないこと」です。医師が治療の方針をたて、患者に目的を説明して、納得してもらってカウンセリングに進むことが大切だといいます。医師が心理療法家に指示するという枠組みですが、互いの役割を認識したうえで共通認識をもって協働するのが理想です。カウンセラーの強みは患者と向き合う時間が医師より長いこと。必然的に患者についての情報量はカウンセラーの方が多くなります。

 カウンセラーと精神科医の連携ではカンファレンスが役立つと前田さんは語ります。医師がもっている治療方針をカウンセラーに説明し、カウンセラーが持っている患者についての情報を提示し、互いにすり合わせて認識を揃えることが重要です。
 前田さんは、カウンセラーしか聞いていない情報についてそれとなく患者に質問してさらなる情報を引き出し、治療を進めていくといいます。またカウンセラーに「医師にも安心して話してください」など投げかけてもらうこともあります。
 なおカウンセラーと医師が連携してほしいと思っている患者と、あくまで別々の関係性としてみてほしいと思っている患者がいることには注意が必要そうです。

精神科の「5分診療」の秘密と心理療法の評価

 「精神科行っても5分10分話をして終わりってことが多いのはなぜ?」という千葉の素朴な疑問。実は診療報酬の仕組み上、特に30分を超える診療だと人件費に対して採算があわないのだと言います。経営上の観点からは、診察は短時間であればあるほど望ましいのです。千葉と原田からは、カウンセリングは人が一定時間拘束される労働集約型で、利益につながりにくいビジネス構造であるとの指摘がありました。前田さんは、カウンセラーが、時間のかかる心理療法の経験を積むことができる環境がないと指摘します。心理療法の実践の場がないとカウンセラーの能力は向上しません。すると心理療法自体の価値が認められず報酬が上がらない、という悪循環に陥っているという指摘もありました。

 心理療法が評価され、保険点数がつくには、「治療効果がはっきりある」と示す必要があります。しかし現状ではどうしてもカウンセラーの質に効果が依存していると前田さんは語ります。千葉も、クライアントから見て「よい」とわかるわかりやすい指標がないことを指摘。そうなると、カウンセラーが心理療法の技能を向上しようという動機にはつながっていくのではと語りました。

 最後に前田さんが語ったように、「心理療法の効果・価値をしっかり理解してもらって、治療者がきちんと評価される仕組みになってほしい。」そう感じるお話でした。



次回予告:10月28日(水)19:00~

次回の放送は10月28日(水)19:00から。(21日はおやすみです。)
ゲストは永井玲衣さん(@nagainagainagai)で、「哲学対話とカウンセリング」をテーマにお送りいたします。お楽しみに!
次回放送はこちら

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