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メンタルサポートとキャリアコンサルティング -医療従事者への支援事例をとおして考える-


医療職は、離職率が高いことで知られていますが、医療現場における人手不足は十分な治療、ケアが行えなくなるだけでなく、人員の配置基準を満たせなくなることで、経営上の大問題ともなります。
そのため、医療機関に勤務する心理職は、患者へのケアを求められる一方で、同僚職員へのケアも同等かそれ以上に求められることがあります。
今回は、cotree Academyで講師を務める梨谷竜也氏に、医療機関で職員に対して行われるメンタルサポートやキャリアコンサルティングの事例をご紹介していただき、それを題材に、より良い支援の方法や工夫について考えていきたいと思います。


医療機関におけるメンタルヘルス支援

企業等、組織に対するメンタルヘルス支援には組織内部での支援と、組織外部からの支援の2つあります。内部での支援はその組織の健康管理センターなどになりますが、その企業に属しているので、問題の背景要因を推察しやすい、各部署と連携がとりやすいなどのメリットがあります。
外部からの支援はEAP(従業員支援プログラム)を提供している会社との提携などになりますが、外部のものなので、プライバシー保護について従業員に安心してもらいやすい、中立性を保ちやすいなどがメリットになります。

医療機関の場合も同様ですが、どこの医療機関もそれほど経営に余裕があるわけではないですし、元々患者支援の要員として心理職を抱えていたりするので、患者支援と従業員支援を兼務で行う形の内部メンタルヘルス支援になることもあります。その場合、心理職はチーム医療の一員として他の医療スタッフと協働しつつ、同時に彼らの支援者でもあるという二重の関係になってしまいます。これは、例えば臨床心理士の倫理規定等にも定められているとおり、本来は望ましくない関係性と言えます。

しかし、現実的にはこうせざるを得ないところもあります。私の本務先では幸い心理士が複数おり、担当する病棟などを決めているので、スタッフのメンタルヘルス支援をしなければならないときは、その病棟の担当ではない心理士が実施するようにするなどし、極力二重関係を避けてはいます。
もしそれができないのならば、二重関係の危険性に注意しながら最小限の関わりに留めるなどの工夫が必要と言えます。



【メンタルヘルス不調者への対応】

-架空事例1・うつ状態により休職したケース-

[基本情報]
公立総合病院の看護師、35歳、女性。主訴は「しんどくて仕事に行けない」


[来談経緯]
最近、仕事を休みがちであるということで、病棟看護師長が面談をしたところ、体調不良、不眠などで仕事にどうしても行けない日があるとのこと。内科を受診しているが、「ストレスでしょう」と言われたのみ。師長が精神科受診を勧めたが行きたくないとのこと。しかし、このままではどうにもならないので、臨床心理士に「どうすればいいか相談しては?」と提案され来談。


[インテーク]
見るからにしんどそうな様子で来室。非常に暗い表情で、小さな声で話す。まずはこれまでの経緯を話してもらった。

高校卒業後、5年間会社員をしていたが、待遇もあまりよくなく、前から興味があった看護師をめざし、退職し看護学校へ。卒業後、病院へ就職し、呼吸器科で6年勤務した。結婚を機に退職し、間もなく出産。しかしその後すぐに離婚。実家に帰るが居心地が悪く、すぐに実家を出て看護師として当院へ再就職した。

経験のない脳外科勤務となったが、必死で勉強し仕事はそれなりにこなせていた。しかし次第に、家で子どもがグズると叩いてしまうこともあるなど、精神的に不安定な状態となり、仕事も次第にしんどくなっていった。体重が7㎏減り、仕事には何とか行っているものの、家事はまったくできない状態に。見かねた母が手伝いに来てくれるようになったものの、しんどさは変わらず。

ある日、病棟で医師から仕事の不備を強い口調で指摘されたのをきっかけに、出勤するのが怖くなり休みがちに。ここ1,2か月くらいは死にたいと思うこともあり、リストカットをすることもある。
うつ性自己評価尺度(SDS)の得点は65点。精神科の受診を促すも最初は拒否。しかし、説得に応じ、薬をたくさん出さないところならばということで受診に応じた。そして、まずは2週間休んではどうかと提案。ある程度楽に仕事に行けるまで、経過も見させてほしいと伝えるとそれには同意。隔週1回ペースで来談することとなった。師長には、うつ状態にあることと、精神科受診が必要なこと、休職が望ましいことを伝えた。精神科に紹介状を書き、受診してもらうことになった。


[経過]
精神科では、「心因反応」との診断。「2週間の休職を要する」との記載。入眠導入剤と抗うつ薬が処方された。
面接では、まず、仕事の中でしんどくなりやすい場面やパターンを明らかにすることから始めた。その結果、ひとりでは難しい仕事をふられても、誰にも言えずに一人で抱えてしまうことや、きつい口調で何かを言われたときに、頭が真っ白になるといったことが語られた。こういった場面での自動思考を明らかにするとともに、生育歴や生活史を振り返っていったところ、支配的な母親との関係に悩み続けていたことや、離婚した夫からDVを受けていたことなどが明らかになった。

家では、母親との関係があるため、子育てにはかなり神経質になっているようだったが、十分によくやれていることを確認し自信をもってもらうことを意図した話をすすめた。2週間後の精神科受診でさらに1ヶ月の休職となった。

1か月後くらいから、やや調子は改善し始め、2か月後には面接で笑顔もみられるようになった。「自分のせい」「人に頼って迷惑をかけてはいけない」などの思考も若干ではあるが修正できるようになっていった。母親のことがテーマになると、怒りをあらわにすることもあったが、むしろ最初の頃より自然な感情表出ができるようになったとThは感じた。

復職に向けた話し合いを師長と本人の間ですすめ、最初は日勤のみで復職することに。休職から3か月で復職。まずは看護補助近い業務内容に限定。面接はそのまましばらく継続。復職後3回面接を行ったが、調子は安定、SDSもやや高めだが47点と大きく下がっていた。DVのことや母のことなど、まだひっかかりがあるようだったが、そのことはこの面接ではこれ以上取り上げないということになり、終結となった。


メンタルヘルス不調者への対応のポイント

本人に直接対応する場合、まず、現在の心身の状態、受診の必要性、就労継続の可否、不調に至った要因、職場の問題点などをアセスメントします。次に、心理教育、就労に関すること、どのような治療があるかなどを助言します。上司や人事部門等に対して、本人の同意を得ている範囲でアセスメント結果を伝え、本人への対応方法についても助言あるいは一緒に考えます。

あとは必要に応じ、医療機関へ紹介したり、カウンセリングを導入したりします。カウンセリングはどこまで扱うのかという問題が出てきますが、あくまでも業務支援の一環として行っているカウンセリングですので、業務復帰に必要な内容に限定すべきで、先に挙げた架空事例1のように、たとえ、本人の中に“問題”が残っていたとしても、それが業務を行う上で大きな妨げになっていないのであれば、職場内のカウンセリングという枠組みでは扱わず、本人が希望するのであれば外部のカウンセリングを案内することになります。


職場復帰支援の流れ

病気休業開始から職場復帰後のフォローアップまでにどのような支援を行うかについて、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」というマニュアルが厚労省から出されています。これは心理職の役割に特化したものではなく、職場全体としてどのような支援をすべきかについてまとめられているものですが、心理職もこれを念頭においてその中で自身の果たすべき役割を考える必要があります。

●心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き

休職中の面接で心理職が行うこととしては、心身の調子について把握する、休職に至った要因を明らかにする、有効なストレスコーピングを検討する、必要に応じて認知の修正をはかる、働き方や職種を含めたライフスタイルの見直し、復職時期の検討などが挙げられます。

医療専門職の職場復帰については、他の職業とは少し違った視点も必要になります。それは患者の健康、命に関わる業務を行っているため、元の業務内容に復帰して危険性がないかを慎重に判断しなければならないということです。まずは安全な業務内容で復帰し、体調、注意集中力などの具合を見ながら、元の業務内容への復帰を考えることが必要です。


業務遂行能力に問題が生じているケースに対する支援

-架空事例2・業務遂行能力に問題があるとされたケース-

[基本情報]
大学病院の薬剤師、29歳、女性。
上司からの主訴は「仕事がまったくできない。仕事中にいなくなることがある」


[来談経緯]
関係部署から事務長を通して、指導困難な職員がいると臨床心理士に連絡があった。人事課に一度面接をしてもらい、仕事がうまくいっていないなどの問題があれば、臨床心理士の面接を勧めてもらうことに。その結果、本人も希望したため、臨床心理士が面接をすることに。


[インテーク]
話してみると、年齢の割に幼い印象。外見も特に気遣っている感じではない。<仕事がうまくいっていないと聞いていますが>と話を向けると、部署の中で仕事ができないことについて、毎日のように怒られているといった話をする。しかし、うつ状態を示唆する症状はなく、むしろ明るい感じ。怒られてばかりと言いつつも「仕事はすごく楽しいです」と話す。

中学、高校は成績優秀で、有名大学の薬学部に現役で進学、6年で卒業している。会話内容からも知的には高いと考えられた。しかし、時折会話がかみ合わないことがある。「空気が読めないと言われる」とのこと。

職場で姿が見えないことがあることについては、部署の部屋から遠いフロアへ手を洗いに行っていると言う。自分の得手不得手を知って、仕事に生かすためにということで、知能検査を含む心理検査を提案したところ、是非受けてみたいとのこと。


[検査・フィードバック]
WAIS-Ⅳの結果、全IQは120で比較的高め。しかし群指数のばらつきが大きく、処理速度は群指数72とかなり低め。PFスタディではGCRがやや低め。TEG-Ⅱは、AとACが高かった。

本人には、論理的に考える力はあるけど、細かい作業を素早く正確に行うのが苦手なのと、状況判断が少し苦手で、平均的な反応の仕方をしにくいところがあるようだといったことなどを伝えた。その結果を踏まえ、仕事でうまくいかない場面を具体的に取り上げ、うまくいく方法を検討することを目的に、面接を継続することとした。

人事課と所属長には、本人が意図的に不真面目というわけではなく、能力的な特徴として現在の業務内容が難しいこと、なるべく具体的に指示を与えたほうがよいことを伝えた。また、強迫症状についても簡単に説明した。


[経過]
面接頻度は隔週1回程度。当初は仕事がうまく処理できず怒られた場面(例:書類の記載内容に繰り返し不備があった)で、どのようにすれば良かったか、Thからヒントを出しながら考えてもらい(例:そもそもどこがダメなのかよくわかっていなかったので聞きやすい人に聞いてみる、他の人を真似してみる、読み手が何を知りたいのか考えてから書く etc.)、次回までにそれをやってみて、その結果をまた検証するといったことを繰り返した。

それと並行して、少しずつ、なぜこの仕事を選んだのかという部分に焦点をあてるようにした。仕事は、同業である母親が選んだもので、そのことに特に疑問は持たなかったこと、人と話して感謝されるのは楽しいが、薬剤師業務そのものにはあまり興味がないといったことが語られた。勉強もほとんどしておらず、「受験勉強が終わってホッとしている」と言う。

薬剤師としてやっていきたいのか、やっていってもいいのか、そのためには今すべきことは何だろうかといった話にもなるが、薬剤師としてのプライド、自分の事務処理能力の低さ、両方の面から今さら他の仕事は考えられないと言う。

部署の人間関係はさらに悪化していったが、部署での指導方法にも問題があるように考えられたため、人事課を通して上司と指導方法について再度話をしたほか、一部パワハラに該当しかねない言動もみられたため、これについては事務長から注意がなされた。

その後、配置転換により薬剤部からは離れたところで薬剤師として勤務することになった(事務長から案が出て、Thに事前に相談があった)。本人は、新しい職場に対する不安も口にしたが、不安をひとつずつ解消する方向で面接をすすめ、その後は安定して業務を行えるようになったため、終結となった。


業務遂行能力に問題が生じているケースに対する支援のポイント

従業員支援において、病気の治療や、障害そのものの改善は原則として行いません。仕事上の問題を解決し、仕事が少しでもできるようになることが支援の目的となります。


医療現場における心理的危機対応

-架空事例3・自殺事案のポストベンションのケース-

[基本情報]
精神科病院の看護助手、22歳、女性。
主訴は「患者が首つり自殺しているのを発見してから、恐怖が消えない」


[来談経緯]
入院患者が病室で縊死しているのを最初に発見。その日は何とか終業時間まで勤務できたが、次の日は、亡くなった患者がいた病室の前を通るだけで、発見したときの光景が頭をよぎり、震えが止まらなくなった。その日は仕事を続けることができず早退。翌日から2日間は元々休日であったが、休日明けの日は出勤できず。縊死発見から5日後、出勤はしたものの、看護部長の判断で仕事はさせず、臨床心理士に面接の依頼があった。


[インテーク]
「すみません、わざわざお時間を作っていただいて」と恐縮した様子で来室。最初に、現在の状態を確認。

首を吊っている場面を繰り返し思い出すほか、不眠、食思不振、気分の浮き沈みを訴える。また、家でも一人でいることができず就寝時も含め母親についてもらっているとのこと。縊死発見前、最後にその患者と話をしたのが自分であると言い、その時になぜ自殺の兆候に気づかなかったのか、あるいはそれ以前からもっと何かできたのではないかと言う。
また、発見時何とか人を呼ぶことはできたものの、自分は何もできずに立ち尽くしていたことを責めるような発言をする。

改訂出来事インパクト尺度(IES-R)は35点。再体験と過覚醒が中心。結果の説明とともに、トラウマ反応の一般的な説明をした。そのような反応が起きることは一般的なことであること、通常は数日でおさまることが多いことを伝えた。

自責感について尋ねると、数年前に祖母を自死で亡くしており、そのことも影響して、将来的には看護師になろうと思っていたにも関わらず、今回よく話していた患者をこのような形で死なせてしまったことを悔いているといったことを語った。悔いる気持ちが起きることは十分理解できるが、実際問題気づいて何かすることができたかどうかといったこと、できたとしても自分ひとりで責任を感じることではないのではといったことなどを伝えた。

最後にリラクゼーションを実施。法人内の内科診療所で睡眠薬を処方してもらうよう手配し、翌日以降も無理をして来なくていいこと、来られたとしても仕事は配慮をしてもらえることを伝え、1週間後に面接を約束し終了。


[経過]
病棟師長からは、面接日の翌日以降は休まず出勤、見た感じは明るく働いているとの報告があった。

前回面接の1週間後に再度面接。その後睡眠薬の効果もあり、よく眠れるようになったとのこと。リラクゼーションも家で行っているとのこと。最初は仕事が怖かったが、この2,3日はそんなに怖さもなくなっていると言う。IES-Rは13点。自責感について尋ねたが、多少はあるものの、仕方なかったのかなとも思うと言い、今はこれから先、ちゃんと患者さんの話を聞ける看護師を目指そうと思っているとのこと。もうおそらく大丈夫だと思うが、今後もし辛いなと感じたら、いつでも相談してほしいと伝え終結とした。1か月後に師長に確認したが、すっかり元通りの様子だとのこと。


医療現場における心理的危機対応のポイント

患者や職員の自殺、医療事故、事件・事故・災害に巻き込まれるなど様々なケースが想定されますが、ここでは患者の自殺事案があった場合の対応について考えてみたいと思います。

患者の自殺は、関わったスタッフにとって、外傷体験となりうるものです。それに対して、心理士は、外傷後のストレス反応が重篤化しないよう援助を行います。

患者の自殺が起きた際の、ポストベンションとして、まず直後から数日は、情報収集を行うとともに、当該の部署の管理職に対して支援内容の提示を行います。数日から1,2週間にかけて、心理教育、個人面接、グループミーティング(心理的デブリーフィング)、トラウマ反応等のチェックリスト、専門医療機関への紹介を行います。その後、3ヶ月くらいまでは経過観察をしつつ、必要があれば個人面接への導入などを行っていきます。

心理的デブリーフィングは、誰それのせいで自殺したといったような犯人捜しにならないように注意する必要があります。また、参加はあくまでも任意となるようにすべきです。心理士自身が自殺案件に関わっている場合は、自分自身も傷つきダメージを負っている可能性がありますので、自分への配慮もしたほうがよいでしょう。


キャリアコンサルティング

-架空事例4・キャリアコンサルティングが中心となったケース-

[基本情報]
特別養護老人ホームの介護福祉士、45歳、女性。人間関係の問題で部署を異動したが、その後も不安が強く、上司の勧めで来談。


[来談経緯]
介護職として10年以上経験を積んだ後、特養に転職。人間関係がうまくいかず、心身の不調を訴え、別の事業所へ異動。そこでもうまくいかず、さらに別の事業所へ異動し体調が回復するまでということで事務職に。しかし、不安が強いということで上司がカウンセリングを受けることを勧め、来談。本人はなぜカウンセリングを勧められたのかよくわかっていない。


[インテーク]
本人はカウンセリングを“受けさせられた”という認識。心理カウンセラーではあるが、キャリアコンサルタントでもあり、今回はどちらかというとキャリアコンサルティングということで受けていただいてはどうかと提案。そういうことならと同意。まずは入職から今日までの経緯を話してもらった。

入職後、研修を経て特養に配属。しかし、人手が足りない、入所者への態度が悪いスタッフがいるなどでストレスが強く、異動を希望。同じ法人内の訪問介護事業所へ配属された。

そこでは挨拶以外会話がない。自分以外は楽しく話している。自分が入ると会話が途切れる。業務に関しては仕方のないことでも言いがかりをつけられるということが続き、不眠、冷や汗、情緒不安定、イライラして人に当たるなどが起こるようになった。半年後に退職を希望したが、退職を認めてくれず事務職に異動になった。

前職の介護事業所には数年間勤めていて、そこでは評価されていた。難しい判断などを自分に委ねられることがあるなど、やりがいもあった。しかし、自宅からは通えないところへの転勤を命じられ、高齢の母を置いて転勤はできないため退職を余儀なくされた。それで家の近くのこの法人を選んだ。

以上のような経緯を話してもらったあと、Thから介入的な働きかけをした。
まず、退職については退職届を出せば雇用側は退職を拒否できないこと、民法上は退職届提出後2週間で出勤義務がなくなることを説明。直接受け取ってもらえない場合は内容証明郵便で送付することもできることなどを伝えた(退職を認めてもらえないと退職できないと思っていたとのこと)。

退職後どうするのか尋ねたところ、実は転職活動はしていて、ひとつこれまでのキャリアを買われて、指導的立場で採用するといってくれているところもあって、待ってくれているとのこと。それは自分としてはやりがいを感じるし、興味がある。また、前職からも戻ってきてほしいと言われているとのことであった。人間関係に加えて、自分の能力を正当に評価されていないというのも、辞めたくなる要因として大きいのかと確認すると、大きくうなずく。

辞め方がわからなかったとは言え、1年もこの法人に残っていたことや、そもそもここに就職を決めたのは、家から近い以外の理由もあるのだろうかと聞くと、大きい法人で安定感があること、違法な残業などがなく、組織がしっかりしていることなどを挙げる。

最終的には、体調が安定するまで、ここで事務をしばらく続け、その間にここが残るに値するところか判断し、やはり転職のメリットが大きそうであれば、退職届を出すということを本人が選んだ。本人の希望により、1か月後に再面接をすることとなった。


[その後の経過]
1か月後、体調はかなり回復したとのこと。事務的なことはわりと得意なので、仕事はうまくいっているとのことであった。いつでも辞められるとわかって、それで安心感があると言う。しかし、これからどうしたらいいかはまだ迷っているとのこと。これについて、その後月1回ペースで計4回の面接を行った。1年、5年、10年先にどうなっていたらいいと思うか、自分の強みが何かなどを考えていき、最終的には残業のない今の仕事をしながら、ケアマネージャーを取得し、転職できる幅を広げる方向でやってみることになった。


キャリアコンサルティングのポイント

職業能力開発促進法で、キャリアコンサルティングとは「労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うこと」と規定されています。このキャリアコンサルティングを行う専門家をキャリアコンサルタントと言い、日本では2016年4月より、名称独占資格として国家資格になっています。

キャリアコンサルティングの流れは以下の図のとおりです。実際に行うこととして、自己理解の促進、意思決定を支援するという部分などは、心理カウンセリングと同様ですが、平均的な心理カウンセリングと比較すると、助言の占める割合は多くなります。制度の紹介や業界の関する情報提供などがそれにあたります。

医療現場でキャリアコンサルティング的関わりをする場合、労務管理に関する基礎知識はもちろんですが、医療業界の現状や医療・保健・福祉領域の職場に関する知識、各資格の業務内容やキャリアラダーなどについて知っておくと役立ちます。

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