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タイ駐在員が語るー板挟みで働く駐在員のメンタルヘルス課題ー

「みんなに期待されて海外赴任したから頑張らねば」と弱音を吐けなくて、潰れてから相談に行く人が多いんです。もっと前に誰かに相談していればということが多くて…

そう語るのは、バンコク在住4年目の駐在員の竹内さん(仮名)。新型コロナウイルスが世界的に流行する直前、2019年に日本を離れタイへ渡った竹内さんは、日本に本社を置く金融会社の現地法人駐在員として活躍なさっています。

おそよ6万人の日本人が暮らすバンコクは、ロサンゼルスについで、世界で2番目に多く日本人が暮らしている海外の都市です(外務省『海外在留邦人数調査統計』令和3年版)。現地には大小さまざまな日本人コミュニティが点在しており、多様な関係性が織りなされています。

今回は竹内さんにタイで経験された海外駐在員ならではの悩みや人間関係についてお話しいただきました。
すでに海外で働いている方や、出張や駐在でこれから日本を発つ方、そして社員を海外に送りだす経営者や人事担当の方々にも、ぜひお読みいただければとおもいます。

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タイで知るメンタルヘルスの問題

ータイではどんなお仕事をなさっていますか?
ふだんはタイの現地の方たちに囲まれながら営業やマーケティングの仕事に取り組んでいます。 もともとは入社以来ずっと首都圏で営業の仕事をしていまして、タイには2019年頃に駐在員として赴任してきました。赴任先の会社の社員はほとんどがタイ現地の方たちで、部署にいる日本人は私一人だけなんですよ。

営業などのほかには、駐在員の主な業務として日本からの出張者へのアテンドもあります。出張に来た本社の方たちの移動や食事の手配をしたり、観光の案内をしたり。出張期間中も連日深夜まで付き添うなんてこともあります。

最近はコロナの規制が日本とタイのそれぞれで緩和してきたこともあって、日本からの出張者が爆発的に増えていて。アテンドの仕事が増えて自分の仕事をする時間があまり取れないくらいです。
夜遅くだけじゃなく、休日も出張で来られた方に付き添って対応しなくちゃいけないこともあります。私自身は独身なので自由な時間がまだ取れる方ですが、ご家族と一緒にタイに来られた方は家族の時間が取れなくて、今はとくに大変なんじゃないかなと思います。


ーメンタルヘルスの問題に興味を持ったきっかけについて教えてください。
もともと私の父が心の病気を患っていたので、タイに来てからもメンタルヘルスに関する問題については敏感でした。中学生の頃に父が調子を崩して、その後浮き沈みがあったんですけれども、私が高校3年生のときにとりわけ酷い時期があり、家族みんな大変な思いをしながらその頃は過ごしていました。

日本人はまだまだメンタルヘルスの問題を語ることに抵抗がある人が多いと思うんですが、タイに来て、そういった抵抗感が日本だけのものではないことに気がつきました。心の病気への偏見はタイの方々にも強く根付いているようで、基本的に心の病気は「悪いもの」として他人に打ち明けない人が多いようなんです。タイは微笑みの国と言われることもあるんですが、実際には若者の自殺が多く、東南アジアの中でも特に自殺率が高い国なんです。

また、タイに移り住んだ日本人のコミュニティに関わっていると、日本を離れてからメンタルヘルスが悪化した方のお話を聞くことは少なくありません。駐在員の奥様が自殺なされたといった痛ましい話を耳にすることもあります。そうやって身の回りで心の問題について触れる機会が増えて、なにか自分に出来ることがあればと思い、cotreeを通じて自分の経験や思いを発信することにしました。

駐在員になって感じる苦労

ータイで駐在員として働いてどのような点に苦労されていますか?
昔からある言葉なんですがOKYって表現があります。 「お前が(O)、ここに来て(K)、やってみろ(Y)」を略した言葉なんですが、本社から無理難題や現地の実態に合わないような依頼がきたときに、「お前がここに来てやってみろよ」って日本の上司に言いたくなる、そんな駐在員の不満を率直に表しているんですよね。

私自身も日本の社員とタイのローカルなメンバーとのあいだに立つことも多いんですが、板挟みになって双方からプレッシャーをかけられることもあります。
たとえば、「日本人の納期感覚」で、明日までにこれくらいできるだろうって依頼が本社から飛んでくるんですが、それが現地の人からすると無理な納期に感じられるものだったり。良くも悪くも日本人の勤勉さというか、残業してでも間に合わせるっていう日本の仕事習慣が必ずしもタイの方たちにはないので、そこで軋轢が生まれてしまうことがあるんです。結果として自分のところにしわ寄せが来て、自分が残業して何とか辻褄を合わせることもあります。

もちろん、できるだけ本社にはタイの実情というか、タイと日本の文化の違いについては説明をしているんですが、なかなか理解を得られないところがあって。とはいえ、全部本社のいいなりになってしまうと現地のやり方とあまりに乖離していってしまうので、そこは少しずつ本社とコミュニケーションを続けながら改善策を模索しています。

それと、やっぱり言語の問題はありますね。私の勤めている会社だと、非タイ人とのコミュニケーションは英語ですがローカルメンバー同士のコミュニケーションはタイ語なんですね。自分はタイ語を事前に学んでいたのでどうにかついていっているんですが、どうしても細かいニュアンスとかで食い違ったり、文化の違いで伝えたいことが伝わらないことも多いです。日本人にするのと同じ依頼の仕方をすると、前提や重要度の認識違いが生じすれ違いが起きてしまうので、そこは苦労しています。

ムラ社会の日本人コミュニティ

ーバンコクには日本人がとても多く住んでいますが、現地で日本人同士の交流はありますか?
そうですね。バンコクには大小様々な日本人コミュニティがあって、そこで交流することが多いですね。フットサルとかバレーボールなどのスポーツを介したコミュニティだとか、日本人が経営している居酒屋やバーがハブになっているコミュニティだったり。ほんとに幅広く無数にありますね。
ただ、タイで出会う一番距離が近い日本人というと、やっぱり会社のひとなんですよね。

駐在員の方はみんなそうなのかなと思うのですが、日本人同士の上司部下の距離がとても近くて、密に交流するようになります。同じ会社の中に日本人が数名しかいない状況になると、自然と密なやり取りが生じるようになって、夜も休日もずっと会社の人と一緒にいるなんてことも少なくないと思います。
もちろん、上司と部下との間で相性が良ければそれでよいのですけれど… 相性が悪いと仕事の時間外もずっとストレスを抱えてしまったり、プライベートな時間にパワハラ気味なことをされる場合もあって、それで精神的に参ってしまう人も結構います。

それと営業の人は会社をまたいでの接待も多くて、土日にゴルフに行きましょうとか、平日夜も一緒に飲みに行きましょうとか、仕事とプライベートが曖昧になりやすいんですね。そうすると、本人もそうなんですが、ご家族の方も参ってきてしまって。旦那さんがほとんど家にいないので、奥様が家事も子育ても全部ひとりでしないといけなくなって、自分の時間が取れないまま、悩みがどんどん大きくなってしまったり、次第に孤立していってしまうといったことが長年の問題としてあるようですね。

現地の日本人コミュニティは良くも悪くも狭いです。コミュニティが狭いからこそ、友達を作ろうと思えば、誰でもすぐに作ることができて、年代幅広くいろいろな人に出会える良さもあるんです。ただ一方で、友だちの作りやすさの裏面というか、コミュニティのネットワークが密になる分、すぐに噂や悪い話が広まってしまうこともあります。

それこそ、病院だとかカウンセリングに行ってることが誰かに伝わると、すぐにコミュニティ全体にドコソコに行ってるんだって広まってしまったり。ムラ社会って言い方もできると思うんですが、そういうコミュニティのあり方は好き嫌いが分かれるのかなと思います。

弱音を吐く難しさとフラットな相談相手の大切さ

ー密なコミュニティがあるというお話ですが、ストレスが溜まって誰かに相談したいというときは、どうするのでしょうか?
うーん、誰かに相談するってことがあまりないですね。大変になる手前の段階で誰かに相談するという文化がまだ全然なくて、本当に大変になってはじめて病院や専門機関に行く人が多いのかなと思います。

もちろん、会社からは「不安を感じたら会社の産業医に連絡してください」とは言われているんですが…正直、ほとんどの方は会社の産業医に相談したりはしないんじゃないかと思います。
産業医に相談したら精神的に病んでいるってことが会社にバレてしまうんじゃないかとか、会社にバレたら、すぐに帰国させられたり、昇進の道が途絶えてしまうんじゃないかと心配して言えない人がほとんどだと思いますね。会社に相談するのはホントに最終手段という印象です。

一般的に「海外赴任」というと「出世コース」と捉えられることも多く、期待されて赴任したのに任期半ばで帰国してしまうことをプライドが許さなかったり、キャリアコースから外れるかもしれないことが不安だったり。そうやって弱音を吐けずに溜め込んでしまって、潰れてから相談に行く方が多いので、そのまえに相談に行けていれば、予防できていればよいのになと思いますね。

ーどんな支援が身の回りにあれば予防できると思いますか?
産業医が秘密を漏らすとかそういうことはないだろうけど、やっぱり「会社が提供してるもの」って考えると、どうしても不安になってしまうところがあります。だから、勤めているところから独立した、それこそcotreeさんのように会社や身の回りの人に漏れることなく、フラットな立場の第三者に相談できるような場所を使えるといいのかなと個人的には思います。

駐在員として海外で暮らしていると、日本で働いている時とはまた違った様々なストレスにさらされます。そんななかで「簡単には弱音を吐けない」「与えられた状況で何とか結果を出さなければいけない」という「思い込み」がご本人を追い詰めてしまうのかなと。 ただ、潰れてしまってからでは回復にも時間がかかりますし、潰れる前に不調を防ぐことの大切さは身を持って感じますね。

海外赴任の期間はあくまで長いキャリアのうちの一部です。中長期的な視点をキープしつつ、メンタルヘルスの問題にもう少し目を向けて、自分なりの相談できる他人というか、どこか相談する相手とか場所を見つけておくのが大事だなと思います。

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それぞれの国や地域の事情に詳しいカウンセラーに相談をしてみることで、少しずつ状況が変化し、楽になってくるかもしれません。海外で生活することに不安がある方や、海外で働く従業員をサポートしたいという経営者や人事担当の方々は、ぜひcotreeの利用をご検討いただければと思います。


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