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香りを刻め。

先日、レースの打ち上げの席で「におい」の話になった。今回は「臭い」ではなく「匂い」のほう。レース終わりでお風呂上がりだったこともあり、清潔な石けんの香りに加え、なにかしらの香りをまとっていた。女性に限らず、男性も。「天神で飲み会やけん、ちょっとおしゃれしとくかー」のノリかもしれないが、あらためて鼻をクンクンしてみると、それぞれの手首や首元あたりからほのかにいい匂いがする。いつも泥だらけ、汗まみれで会うことが多いメンツなだけに、ちょっとドキッとしてみたり。そういうの、なんかいいじゃない。

普段使いには「Jo MALONE LONDON」のネクタリンブロッサム&ハニー、夜のお出かけなどには「DIPTYQUE」のDOSONを愛用している。鼻のいい友人は「あ、カナちゃんの匂い」と気づいてくれるが、大半の人は気づかない。まぁ、指摘されるほど匂い(臭い)がしていたら、今でいうところの「香害」であり、別の問題をはらんでくる。つけすぎ、だめ、絶対。

いわゆるコロンではなく、香水をつけるようになったのは二十歳をすぎてからだったと思う。晩酌で酔っ払って饒舌になった父が、「おう、カナは香水はもっとるか。もっといた方がいいぞ〜。お父さんは、お母さんが昔つけていた資生堂の……あの香水の匂いがとても好きでさ。お母さんに『つけたほうがいいよ』とゆうたけど、どうやら廃盤になったらしくて。でも、何年もたった今でも似た感じの匂いの人とすれ違うと、お母さんを思い出すっちゃんね〜。そんなこともあるっちゃけん、おまえもいい匂いでおらんといかんぞ」……とかなんとか。香りを心(記憶)に刻めか……父さん、いいこというやん。

この話が記憶のすみに残っていて、なにかしらいい匂いのものを持つようになったし、なにより抗うことのできないDNAの誘いにより、父同様、異性の香水の匂いが大好きだ。すれ違いざまにふわ〜っと香る瞬間、当時の彼氏のことを思い出してみたり……。刻まれているもんだ。わりとしっかりと。

洗面台を掃除していたら、以前フランスで購入したボディクリームを発見した。消費期限はとっくに切れているだろうが、見たところ、触ったところ、嗅いだところ問題はなさそうだ(気にならないO型)。今夜は飲み会だし、ちょっとつけてみようかな。そうそう、この匂い、この匂い。やはり香りの本場、おフランス製である。遠慮なんか一切ない、これでもか! といわんばかりの、濃厚かつエレガントな香り。ほのかに香る……ないない。あまりの濃さにベビーオイルで薄めてみたが、「香りのベール」どころか「香りの毛布」に包まれたかのよう。香水の類いは、時間がたつにつれ馴染み、薄れていくものだが、このクリームの威力はすごい。肌をこえて服の繊維にまで浸透し、ワンピースの袖に鼻をあてるだけで甘い匂いがする。同席した人に「カナさん、香水きっついなー」なんて思われたかもしれない。家に帰ってからもなお、脱いだ服から濃厚な匂いが漂っていた。

これを書いている最中、私のベッドでずっと寝ていた猫が起きてきた。ふわ〜っ……あ、いい匂いがする。そうか、私が寝る前にシュッシュするピローミストの香りか。ちなみに私の今の香りは……肩こりがひどくてたまらず貼ったサロンパスの匂い。もとい、臭いだ。猫に負けとるぞ!

もちろん、人工的な香りではなく、その人から醸しでる匂い(臭い)についても書きたいが、長くなったのでまた今度!



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