回復を信じて
私の頭は、精神的なダメージから深い傷を負ってしまっていた。
十代後半には文字がろくに読めず、本を一冊読むのに何か月もかかった。しかも、がんばってもニ行ずつ程度しか読めなかったため、意味が全然繋がらなかった。
そして、多くの記憶を思い起こせなくなっていた。
新しい記憶をつくるにも支障があったし、精神的にショックを受けて、記憶が飛んでしまったこともあった。
それでも、必死の日々を抜けて大学卒業時になんとか社会人となり、仕事は続けてきた。ミスをしてしまうことはあったけど、目立つほどではなかった。しっかり評価もされてきた。
それが
昨年から仕事がガラリと変わり、職場では緊張するばかり。そして試験の連続。
そうした環境が、私の頭には堪えたらしい。
頭の状態がとてもしんどくなってしまったのだ。
頭が異様に重く感じられ、ふらふらして、マヒしているような感覚が日増しにひどくなった。よく頭痛がするようになった。
なにもやろうと思えない
すぐ忘れてしまう
計画性を持てない
精神的に不安定になる
まるで、私が私ではなくなってしまったかのように感じられて、怖かった。
立っているのも辛く、家ではほぼ寝ているしかできなくなった。
無事に回復してきてホッとしたものの、そんな生活か何か月も続き、抜け出せない苦しさに、ひどく落ち込むこともあった。
そんなときに、希望の見つけ方が記された、この本に出会った。
これは、脳卒中になり、左脳を大きく損傷したことで、起き上がることも話すこともできない、三次元のものを知覚できない(ものが近くにあるか、遠くにあるかもわからない。誰かが立っていても、その人が動くまでその存在を把握できない、等)状態から、脳科学者として復帰した一人の女性の奇跡の記録である。
ここには、人が困難を乗り越えるために必要なことがたくさん示されている。
一日に何百万回も「かいふくするのよ」と意を新たにし、
できなかったことにくよくよせず、それどころか、いつも「何かできた」ことに驚嘆し、
回復の成り行きに夢中になり、瞬間ごとにもたらされる新しい希望と可能性を見た。
治癒のための睡眠を重んじ、
脳が自己修復するために必要なことを全て知っていると信じ、
完全に回復するはずだと信じてくれる人、これまでの自分ではなく変わってしまった自分を受け入れてくれる人、勇気づけてくれる人を必要とした。
まだ自分は価値があると確認する必要があり、目標になる夢を持つ必要があった。
そして、恩恵もあった。
左脳の働きを失っていた間、右脳の働きによって、自分を流体のように感じ、喜びと幸福、深い心の平和を感じるという「新たな発見」を得たのだ。
そんな、人の脳の働きについての深い知見が表されている。
奇跡の回復を成し遂げたジルさんの言葉は、力強い。
うまく回復するためには、できないことではなく、できることに注目するのが非常に大切。
毎日、何かを達成できたことに喜びながら、どれほど上手くできたかにだけ焦点を絞り続けました。歩けるか、話せるか、自分の名前を覚えていられるか、といったことにこだわらない。もし、息をすることしかできなくても、生きていること自体を喜べばいいのです。GG(お母さん)と私は一緒に息を深く吸い込みました。もし転んだら、ふたたびまっすぐ立てたことを喜びました。もしよだれを垂らしたら、嚥下できることを祝福したのです!できないことにくよくよしてもしょうがない。なにしろ、できないことばかりなんですから。だからこそ、手にした勝利を毎日のように喜んでくれる人が必要でした。だって成功は、それがどんなに小さなものでも、心を勇気づけてくれるものですから。
本には、底抜けに明るくて聡明な治癒の分析過程があり、ジルさんの勇気がつまっていた。
誰もがジルさんのように困難を乗り越えられるわけじゃない。
それでも、人には希望が必要だと思う。
だから、生きている一瞬一瞬、希望を分かち合えたら、嬉しい。
***
ちょっと理系な感じですが、脳について細かに書かれ、脳の再生のための知恵、回復のための知恵がつまっている本でした。よかったので、ご紹介です。
この本を読んで、私も「絶対にかいふくするのよ」となんどもなんども意を新たにしたのです。
頭のひどいフラフラと闘う日々の後、次に出てきたのは動悸でした。
常に長距離走を走ったあとのように疲労感があり、何もしていなくても息がゼイゼイして、心拍数が上がり、夜も目が覚めてしまうのです。
私はとうとう体を壊してしまったんだろうか。
本当に怖かったです。体が動かなくては何もできないということを、改めて突きつけられました。
そんなこんなで、先が見えなくて辛かったのですが、ここ数日、なんとか回復の兆しが見えてきました。
少しホッとしています。
よかった。
また走れるようになるのが夢です。
本当に無理ができなくなって、はじめて力が抜けたように思いました。
だから、やっぱり何かを教えられてる。そんなふうに感じます。
温かいメッセージをくださった皆さま、本当に本当にありがとうございました。
ギリギリの状態にあったので、私に元気を与えてくれた何が欠けても今の状態までの回復はなかったと思います。
皆さまの温かさにも、本当に救われました。
さまざまな喜びを分かち合ってくださったこと、声をかけてくださったこと、どんなに嬉しいことだったでしょうか。
本当に、本当にありがとうございました。
まだ回復途上にあるけれど、元気になれたらおむすびつくったり、家族や友達に会いに行ったり、やりたいことがたくさんあるので、毎日必死に体を元気づけています。
脳の修復が必要な私には、眠ることが本当に大事なんだとわかりました。そして、リラックスできる場所に行くこと。特に自然の中に入ることは、深いやすらぎをくれます。
だから、疲れたときは怠けと思わずによく休むこと、体からのメッセージを受け取って応えることがどんなに大切かを学ばされました。
皆さまも無理されず、ご自身を大切にされてください。人生に、体がもたらしてくれるギフトは測りしれないと思います。体があることにより出会える世界、体験は、かけがえないものと心から思います。
私は未熟で弱い人間です。
それでも、生きる場所を与えてくれたこの世界には感謝しかありません。
これから少しでもしあわせなことを広げられたらと思います。
じぶんにも、ひとにも。
人が持つ可能性を、ずっとずっと信じています。
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