不安な時代に農業に興味を持った方へ(1) 食料自給率
新型コロナウイルス関連でこのような記事がありました。
食料価格危機が再燃兆し「戦時中と同様措置の可能性」 一部で穀物輸出規制
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、世界的に食料買いだめの動きが活発化する中、ロシアや中国など一部の国が穀物の輸出規制や食料備蓄積み増しに動き始めた。世界の食料のサプライチェーン(供給網)が阻害され、食料が高騰する可能性があり、自給率が低い国には大きな打撃となりかねない。
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200327/mcb2003271250016-n1.htm
なくなってすぐに生活が成り立たなくなるものに水や食べ物があります。不要不急の外出に自粛が要請される中でも、食料を買いに行くことはどの国でも禁止されていませんし、食料の生産や流通に関わる産業を止めることはできません。
このような状況下でも日頃都市に食べ物を切らさず送ってくれている農家さんや流通を担っている方々は本当に素晴らしいですし、我々も多少役立てればと思っています。
急に食べるものが全く手に入らなくなることはないかと思いますが、食料が得られなくなるのではないかと不安になることも頷けます。では実際食料は大丈夫なのでしょうか?「食料がなくなる」と言っても幾つかのパターンがあるので少し整理します。
生産量自体が足りないのはもちろん問題ですが、それだけでなく「もしかしたら?」という不安が不足を引き起こすことがあります。(予言の自己成就と言ったりします。)
食料ではないですが、トイレットペーパーは図の中でパターンT、マスクはパターンMかなと。
では食料はどうかというと、今のところ日本で不足が起きていたとしても、パターンTであり、スーパーで売り切れていることがある、という程度だと思います。
真に恐ろしいのは、パターンMになることだと思います。ただ、今の所、国際機関は大きな混乱は避けられていると見ているようです。
世界中で穀類在庫が減り、食料価格が高騰した2008年と比べ、潤沢な供給力があり、FAOなど国際機関は大きな混乱は避けられていると判断する。農水省も「日本は、これらの国からの輸入実績は大きくない。影響は限定的だ」(食料安全保障室)とみている。
https://www.agrinews.co.jp/p50452.html
不安になる理由として、日本の自給率が低いということがあるかと思います。
またもう一つには、日頃農業や漁業など食料生産の現場との直接的なつながりがあまりないことが理由だと思います。
例えば親戚筋や友人にお米を育てている人がいれば心強いですし、自分で作物の育て方を知っていると安心ではないでしょうか。
実際アメリカでは「自分で野菜を育てる」ことへの注目度が上昇しているそうです。
世界各地で外出禁止令が出され、「流通の停滞や買い占めから食料が得られなくなるのでは?」という不安が募る中、人々が農業に目を向けだしています。世界的な危機の中で、「食料システムを自分でコントロールすることなしで、人が本当に自由になることはない」とする自家栽培への注目度の高まりを、アメリカの公共ラジオネットワーク・NPRが伝えています。
https://gigazine.net/news/20200403-pandemic-vegetable-gardens/
我々は生産者と消費者の距離を近づけることを一つのミッションにしており、農家直送のオンラインショップや会員様が自分で野菜を育てる体験農園を行っております。
そこで今回は、日本の食料自給率はどうなっているのか、生産との距離を縮める方法はどんなものがあるのかをまとめました。
この記事は2部構成になっています。(長いので2つの記事に分けました)
食料自給率について知りたい方は、そのまま下記お読みください。
生産に関わる方法を知りたい方は、次の記事「農への10の関わり方」をお読みください。
食料自給率について
まず現在の日本の食料自給率について。40%を下回ったと数年前にニュースになったのでご存知の方も多いかもしれません。
平成30年度の数値だと、カロリーベースで37%となっています。
(生産額ベースだと66%)
まずそもそも、食料自給率というものが何かというと、下記の計算で出される値となります。
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/attach/pdf/012-12.pdf
そして、カロリーを基準に計算したものと生産額をベースにしたものがあります。
メモ:例えば、カロリーベースの食料自給率が低く、生産額ベースの食料自給率が高いなんてことがあります。これは、野菜などカロリーが低くて高価なものは自国で生産し、小麦などカロリーが高く安価なものは輸入している時などに現れます。
では、それぞれの内訳はどうなっているか。
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/attach/pdf/012-12.pdf
左がカロリーベース、右が生産額ベースになります。説明がごちゃごちゃするので、カロリーベースの食料自給率だけについて説明します。
どういう図かというと、四角のすべての面積が1日に一人の人が摂取するそうカロリー(2443kcal/人・日)になります。そのうち青色の部分の面積が国内で生産しているカロリー(912kcal/人・日)、白色と黄色の部分が海外からの輸入部分になります。
また、それぞれ品目別の自給率も分かります。お米はほぼ100%国内の生産であり、逆に油脂類はほぼ100%輸入のもののようです。
また、これら品目ごとの推移は下記のようになっています。
https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h24_h/trend/part1/chap2/c2_2_00.html
1965年度からの推移を見ると、主に国産のお米で摂取していたカロリーが現在は輸入の油脂類や畜産物で摂取するようになっているようです。
もしもの時は輸入に頼らずとも食べていけるのか?
「今食べている分の自給率は分かった。このまま平時が続けば国産でも輸入でも問題ない、しかし非常時に国内だけの生産でやっていく能力はあるのか?」
と気になった方もいるかもしれません。
自給する能力があるかどうかの指標が「食料自給力指標」と言います。現在食べることができないものを育てている農地や再生可能な荒廃農地にカロリーが高い作物を植え、フル活用した場合どれだけのカロリー生産ができるかという指標です。
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/attach/pdf/012_1-9.pdf
農水省は幾つかの農地の活用パターンを出しており、それぞれどのような作付けを行うと、どの程度のカロリーを供給できるのかを表しています。
大雑把に言うと、栄養バランスを一定程度考慮した上でイモを植えまくると(下図パターンC)、必要な摂取エネルギーを生み出す力があるという結果となっています。
(しかし、芋を植えることを要請されるのはとんでもない事態ですね。。)
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/attach/pdf/012_1-9.pdf
また、食料自給力は下図のように減少傾向にあります。
ここまでの結論は、
日本では食料を海外に6割以上頼っているが、最悪の場合イモばっか育てて食べれば飢えはしない。
しかし、自給力は低下傾向にあり、そこは食い止めたい。
もちろん、自給率や自給力を考えると輸入ストップはまじで困る。
ということでしょうか。
では実際に食料生産との距離を縮める方法はどんなものがあるのか、まとめてみました。
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