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「お願いします」「ください」は同じ?違う?

「お願いします」「ください」は同じ?違う?

「お願いします」も「ください」も、相手に何かリクエストをするときに使う表現です。ただ「どちらも ”Please”ですよ!」と言ってしまった日には大変。そのうち「禁煙席、ください」「もう少しゆっくり話してお願いします」、「東京駅まで ください」などの誤用がわんさか出てきてしまいます。「やばっ。やっちまった」の瞬間です…。

 1. ○「ビール、ください。」 ○「ビール、お願いします」
 2. ×「禁煙席、ください。」  → ○「禁煙席、お願いします」
 3. ×「東京駅まで ください。」→ ○「東京駅まで お願いします」
 4. ×「もう一度、ください」     → ○「もう一度、お願いします」

初級の段階で、例文1のように注文したり買い物したりするときは「ください」も「お願いします」を用いることができるという説明で良いと思います。

でも、例文2〜4の場合「ください」はNG! なぜ使えないのでしょうか。

「お願いします」は使用範囲が幅広い

「ビール、ください」は”ビール”というものを求めています。「ビール、お願いします」は単に”ビール”というものを求めている場合もありますが、”グラスに入ったビールをテーブルまで運んでもらう”というサービスを求めている場合もあります。なので、この場合は「ください」も「お願いします」も使うことができます。

一方の「禁煙席」「東京駅まで」はちゃんと言うと、「禁煙席に案内してもらうこと」であり「東京駅まで(タクシーなどで)連れて行ってもらうこと」です。したがって、ものではなくサービスなので「ください」を使うことはできません。

このように、「お願いします」はサービスを頼むとき、ものを注文するときの両方のケースで使えますから、「ください」より使用範囲が広いと言えます。

教えるときの注意点は、「N(を)お願いします = N(を)ください」としないことです。そうすると、例2や3のような誤用が出てきてしまいます。


日本語教師脳を刺激すべく、ちょこっと掘り下げます。

ちなみに…

「ください」は名詞だけでなく、動詞のて形と一緒に使うことができますが、「お願いします」は動詞のて形と一緒に使うことができません。でも、これもときどき見られる間違いです。

×「しょうゆを取ってお願いします。」→○「しょうゆを取ってください。」
×「もう少しゆっくり話してお願いします」→○「もう少しゆっくり話してください」

「ください」の元の形は「くださる」→「くれる」です。「ゆっくり話してくれた」「しょうゆを取ってくれた」、「動詞のて形+くれる」は相手に対して感謝の気持ちを表すときに使われる表現ですよね。これをリクエストの形にすると「ください」になる、と考えるといかがでしょうか?

もうちょっと…

「ください」の元の形は「くれる」ですから、動詞「くれる」には必ず目的語が必要です。もし、単体で例文4のように「ください!」と言ったら、「え、何を?」と聞かれるでしょう。(幼少のころ、「く〜だ〜さい!」と言いながら駄菓子屋さんなどの商店の扉を開けたのは昭和時代の良き思い出ですが、今は聞いたことがありません。ってあれ?私だけ??・・・つまり、単体で使うことはまずないと言いたかったのですが、脱線😓)

一方、「お願いします」はすでに文として成立しています。ですから、次の会話例の最後にある「お願いします」のように単体で使うことができます。

<会話例>

客   「すみません、生ビールとグラスワインの赤をください」
店員 「生ビールとグラスワインの赤ですね。ただいま、お持ちします」
客   「はい、お願いします」


「ちなみに…」も「もうちょっと…」も、学習者にする説明ではありません。簡単&便利なサバイバル表現を教えるときこそシンプルに!が私のモットー。ということで、これらはあくまでも先生方の頭の整理用です。でも、こうやってちょっと掘り下げてみると、この表現への向き合い方や導入方法が変わってくるかもしれませんよ。


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