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お金の価値が定量的から定性的に。繋がりを作るための副次的なツールである。 | 杉原 淳一 × 深井 龍之介
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お金の価値が定量的から定性的に。繋がりを作るための副次的なツールである。 | 杉原 淳一 × 深井 龍之介

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法人COTEN CREWへ参加してくださった企業の方々へのインタビュー。第一弾の対談相手は、国内の研究課題や研究者のデータベースサイト「日本の研究.com」を運営し、科学技術の情報を日々発信している、株式会社バイオインパクトの杉原淳一さんです。

COTEN RADIOがきっかけでCOTENを知った杉原さん。歴史と科学、全く異なる分野から、実はどちらの会社も同じ山を登っている…。そんな2人の社会への思いや、「お金」への考え方がつまった対談です。

杉原さんお写真

杉原 淳一(スギハラ ジュンイチ)さんプロフィール:
株式会社バイオインパクト代表取締役。各省庁や研究機関の科学研究費助成(ファンディング)情報とプレスリリースを組み合わせた、国内最大級のアカデミア研究データベース「日本の研究.com」を運営している。主に、研究試薬・機器会社等へ、研究関連データベースを用いた販売支援事業を行う。また、自然言語処理や機械学習を用いて構築した、研究分野等の独自分析アルゴリズムを活用し、製薬企業等の産学連携マッチングやKOL探索等もおこなっている。

法人COTEN CREWについてはこちら

法人COTEN CREWになった経緯

下西(COTEN広報):本日はよろしくお願いいたします。実はバイオインパクトさんが法人COTEN CREW第一号なんですよね。それが全ての始まりになっています。どのような経緯でなってくださったのでしょうか。

杉原淳一さん(以下、杉原):弊社は「知的探求活動の環境を改善し、研究内容が皆に評価される文化の構築に貢献する」を社是に、「日本の研究.com」の運営を通じて、もっと広く世の中に科学を伝えていくことを目指しています。研究課題テーマ、規模や金額を研究者毎にまとめたデータベースサイト運営だけでなく、大学や研究機関の研究最前線の成果をプレスリリースニュースとして配信しています。

最新の研究情報を配信することで、ちょっとずつでも世の中へ知的刺激を届けたい。その障壁となるのが科学技術の専門用語の伝わりにくさだと感じています。多種多様の研究情報を理解することは非常に難しいでしょう。その結果、該当分野に興味がある人だけに向いた情報サイトになってしまいがちです。

一方、ここ数年スマートフォン、特にiPhoneの普及のおかげで、例えば”Bluetooth”や”Wi-Fi”という専門用語を、皆がおぼろげながら知ることとなり、通信分野リテラシーが向上したと感じます。と同時に、これはなにも通信分野に限らないのでは、とも考えています。

現に、弊社のスタッフは、研究畑の人間は、実はいないのですが毎日研究プレスリリースの配信に関わっていることもあり、何となくではありますが最新の研究トレンドが掴めていたりします。「科学技術の情報に触れる機会を増やすことで、少しずつでも情報概要を掴めるようになるのではないか」そんな仮説をもっています。

今、日本の研究.comニュースのFacebookページやtwitterのフォロワーは科学情報系サイトとしてはかなり大きな規模となっています。そうしたSNS等を通じ、科学技術の情報に触れる機会を増やしていく。少しずつ、自分達の座するネットワークにとどまることなく、情報湿潤された世界と繋がっていく人が増える。そこでは今までなかった興味喚起をもたらされ、新しい出会い、人生の分岐点への水引をもたらす。そのような大それた結果に繋がればとても事業の満足感が得られるだろう、と。そんなふうに考えています。

最近は、事業体も遠い外部との繋がりを積極的に作った結果、新しい組織形態へ導くことができるのでは、とも考えていて、日頃その仮説を検証したく考えていました。そこでまずは代表者である自分が興味のある歴史分野へ関わりの橋を作ってみたらと閃いて、元々COTEN RADIOのリスナーだったこともあり、友人を介して深井さんにコンタクトをとりました。

深井龍之介(以下、深井):杉原さんが最初にアクションをとってくれたことが、本当にありがたいですね。これはすごく難しい、レアなことだと思っています。COTENを応援したい、お金を出しても良い、という人はたくさんいたんだろうと思うんですけど、実際に「払います」と言ってもらったのは初めてだったんです。この差はすごく大きかったなと。法人COTEN CREWについてはずっと考えていたんですが、杉原さんが言ってくれたお陰で動きだしました。なんかバスティーユ牢獄襲撃みたいですよね(一同、笑)。ボルテージはあがっていたけど、襲撃があったからこそフランス革命が始まった、みたいなものだと思うんです。

杉原:歴史を切り開いたようで嬉しいです(笑)。ここ数年、お金の価値観が変容してきたから起きたことだと思っています。大きな視座で人生を考えたとき、お金は繋がりを作るための副次的なツールであり、適切に活用しなければと考えていた矢先に、「企業からのサポートについて検討している」という旨をCOTEN RADIOで聞いて、そのタイミングを図っていました。

変わってきているお金の価値観

杉原:多少会社が安定してきて、家庭も落ち着いてきたとき、友人に言われたんです「杉原さん、これからどうするの。計画してるの。」って。
それなりに積立てなどもやっているので、老後にまとまったお金が入るかもしれない。でもそれをどうするのかは全く考えてなかったんです。60歳の初老の体力でやりたいことはできそう?そこからまた資産運用?それ以上増やしてどうするの?となりまして。それで、今の資産を今適切に活用することを考えて、家族や友人、お世話になった人と一緒に時間を過ごすことや、人との繋がりを増やすことの優先順位を目一杯あげたんです。お金を稼ぐことが目的じゃなくなった瞬間に、人生観が変わりましたね。お金って定量的じゃないですか、でもそこには時間の要素もあり、定性的な価値観に変換出来るな、と。

深井:世の中では、お金が豊かさに対する絶対的尺度だと思われていますよね。でも個人的には、人間にとっての貨幣の価値は所有量の絶対数に応じて途中から下がっているように思います。例えば年収一千万円まではすごくお金の価値が高いけど、一千万円から先はどんどん価値が下がっていっている。でもそれを人間が認識していない、という感覚があります。

杉原:すごくわかります。それなりに落ち着いた人たちは皆、お金の用途に迷っていますよね。ゴルフクラブをいっぱい買ったりとか、夜な夜な銀座に行ったりとか。
私はやっぱり、自分の同心円に近い人たちと楽しい時間を過ごすためとか、普段触れていて応援したいと思うコンテンツに積極的に関わっていきたいなと。それこそCOTEN RADIOとかにですね。あとは、頑張っている人や素敵な人の話を聞くことにも価値を感じるので、そういった場にもビジネス要素を除いて関わったりもしています。自分が人間的経験値を上げていくための投資だと思っていますから。皆それぞれ、時間に紐付くお金という資産の投資先は、しっかり考えるべきだと思います。

深井:めちゃくちゃ共感します。とても良いお金の使い方だと思う。

下西:自分もそこにお金をもっと使いたいけど、なかなか難しいところですね…。

杉原:どうしても若いうちは人生の土台を創っていかなければならないので生活第一になりますよね。でも、ある程度落ち着くときは必ず来るので、準備はしておいた方がよいんじゃないかな、と。

深井:お金を稼げている人たちがそのように使っていけたらいいですよね。考え方は人それぞれではありますけど、世の中のお金に対する価値観が変わってきていることは、多くの人が感じてると思います。

お金は川のように流れている

深井:COTENもこういった形でお金を集めなくても、ビジネスをやろうとしたらできはすると思うんです。COTEN RADIOのエピソードを半分有料にしても、誰も文句は言わないと思うんですよ。だけどそれでは僕たちのミッションである、人類に対して「メタ認知を高めるきっかけを提供する」ことに違ってしまう。あとは広告をすると、難しい題材は選ばなくなる気がします。例えば「マルクス・エンゲルス」なんて、めちゃくちゃ難しいですから。多分聞いている人の1割くらいしか理解できないと思う。本当に難しくて、収録前日まで勉強してました。教授に質問会を開いたりもして。でもその難しい内容をわかる人が聞いて、わかっちゃった!みたいな方が総合的な価値は高いと僕は思ってるんです。

杉原:たとえわからなかったとしても、「難しい」ということが伝わるのが大事でもありますよね。「なんとなくどういうことなのか」を捉える準備ができるとおもいます。

深井:ほんとそうだと思いますね。こういった活動が、一般的な資本主義のロジックの中では阻害されてしまうのがなんかもったいないなと思っています。
「もしかしたら自分には返ってこないかもしれないけど、世界には返ってくる」という概念でお金を贈与的に提供し合うと、僕たちも最短距離でデータベースが作れるし、最短距離で効果の高いメタ認知のきっかけが提供できると思うんです。この辺りの考えも、改めて資本主義を全部勉強し直したことによって補強されました。事業形態もポスト資本主義に寄せていくことにしましたし、これらの決断ができたのが、まさに杉原さんからの連絡がきっかけでしたからね。

杉原:いやいや、自ずとそうなる予定だったと思いますよ。こちらは軽い気持ちでご連絡したので…そんなお話しをお聞きすると、汗かいちゃいますね。

深井:軽い気持ちでいいんです。きっかけってそういうものですから。
僕たちは一旦、株式会社でビジネスをしないという決断をしたわけです。でも僕はポスト資本主義的な感覚は持っているとはいえ、今まで普通にビジネスやってきてます。だから自分が責任を持ってやっている会社を、ビジネスをしないで成り立たせると覚悟を決めるのは、社長として相当の覚悟が要りました。

でも最近は「僕たちが世界にとって良いことをしていたらお金は集まるし、自分たちのためだけに何かしても集まらない」という当たり前のことが起こるだけだな、という感覚になっています。世界について良いことをしっかりやり続けたら、世界に生かされるだろうな、と。

杉原:抽象度をあげると、お金は川のように流れていて、その流れを引き込む作業がビジネスだと感じています。土を掘って、自分のところに川の流れを引き込む。その水の流量がすなわち売上などの総量であるイメージです。ちまちま飲んだり、過剰に溜めたり、先を考えず労費しないで、適切に人間関係や事業の構築に活用していく。

深井:そうですね。そしてその引き込んだ川をどこに流すのかが、すごく大事なんだと思います。その人にお金を持たせたら何に使ってくれるかが、お金が集まるかどうかのポイントになっている。当たり前のことなんですけど。「自分のために頑張ります」と言ってお金が集まっている例も、資本主義だからいっぱいあります。でもそうじゃないお金の集め方が出てきた。ここ数年で世界が変わってきたと感じています。

杉原:そういったお金の活用法が広まって、様々な企業と繋がって、大きな川の流れが確立できたら安心して事業に向かい合えますよね。
ビジネスって定量的な正誤判断がされやすいじゃないですか。儲かってるのか、利益がどうで、とか。COTENさんは今新しい判断基軸を作ろうとしているから、ステークホルダーに理解してもらうことも大事だと思います。

同じ山だけど違う登山道

杉原:COTENさんが開発されているデータベースも、それ自体が目的ではなくてあくまで歴史を世の中に広めて深掘りするための手段ですよね。視座が高くなっている感覚なのかな。

深井:そうですね。メタ認知というのが正しくその視座です。僕たちがやっている全ての活動は、人類が視座を一段階なり二段階なり上げられるようなきっかけを提供し続けるためなんです。

杉原:いいですね。それは僕たちが研究情報に対してやっているアプローチとかなり近いかもしれない。

深井:そうだと思います。よく言われる、同じ山だけど登山道が違うだけという気がしますね。歴史と科学という、アプローチするジャンルが違うだけで。人文学領域も大事だし、科学領域も大事だし、相互扶助しながらそれぞれが人類に対して貢献していければすごく良いなと思っています。

杉原:世の中の課題解決の裏には必ず科学技術が存在しているので、現代人の誰もが科学技術に関わりがあるといえます。実は歴史もそうで、皆が勉強で触れていて汎用度が高い上に、生活の基盤である文明や産業にも関わってるので、現代人の誰もが否応なしに関わりがある。科学技術の発展による大きなうねりとなって残っていった結果が歴史なわけですから関連性が高いと思っています。

新しい技術によって世の中が劇的な変化を生んだとき、歴史がどうかわっていったのかを考えるのが楽しいですよね。それこそ世界史のデータベースに蓄積されていく情報なのかな、と思っています。

深井:本当にそうですね。過去に新しい技術が開発されたときは、世の中がこうかわっている、というのも横断的に比較できるようにしたいと思っています。歴史という枠を超えて、色んな分野の方々に活用していただきたいですね。


余談:COTEN RADIOの面白さ

杉原:COTEN RADIOの歴史コンテンツ自体も、もちろん非常に良いんですが、僕がぐっときたのは皆さんの表現力ですね。歴史上の人物がすごく身近に感じるような表現が実に素晴らしい。歴史上に現代人が存在したら、こんなリアクションをしただろうね、という表現をする。フランス革命とかで一般大衆が「キレる」とか、絶対教科書に書かないし、大英帝国が「ライジングする」という表現なんか勉強では出会うわけない(笑)。「おもしろ!」と心を掴まれますよね。音声メディアは、音としての言葉の表現が非常に大事じゃないですか。歴史=教科書のイメージだったのが、すごくリアルに感じられるところが本当に好きですね。喋りもお上手ですし。

深井:とんでもないです。全てがたまたまなんですよ。戦略的にやってないから、再現性もないし…

杉原:それがまた良いんじゃないですかね。実は番外編をあまり聞いてこず、最近聞き始めました。番外編もとっても面白いですね!

深井:番外編も感想が分かれるんですが、「聞いてよかったです」と言ってくださる方々もいて、本当にありがたいですね。

杉原:歴史を直接的に伝える、というだけではなく活動が副次的になっているのも、とても良いなと思っています。色んな門外漢フィールドと繋がってみて欲しいです。

深井:本当にありがたいです。それを法人COTEN CREWという形で成り立たせられるかもしれない、という全てのきっかけがまさに杉原さんですから。

杉原:そう言っていただけて嬉しいです。今後ともよろしくお願いいたします。


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