82. 10歳未満の小児で33 cm の視覚刺激からぼけと視差の手がかりを取り除くと,調節精度が低下し,調節の変動性が増加する。成人ほど効率的な適応ができないことから,求心性の視覚経路が未熟であることが示唆される

Impact of Visual Cues on the Magnitude and Variability of the Accommodative Response in Children With Emmetropia and Uncorrected Hyperopia and Adults

Roberts TL, Manny RE, Anderson HA. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2019 Apr 1;60(5):1527-1537. doi: 10.1167/iovs.18-25256. PMID: 30994863; PMCID: PMC6736278.


目的:発達中の視覚系において,ぼけと視差の手がかりが調節の精度(ラグ)と変動(時間[root mean square:RMS]と周波数領域[low-frequency component:LFC])に与える影響を調べた。

方法:合計59人の小児(3~9歳,等価球面屈折 [RE] = -0.3〜+4.91D)と10人の成人(23~31歳,RE = -0.37〜+1.15D) が参加した。ぼけ+視差(両眼,20/50視標),ぼけのみ(単眼,20/50視標),視差のみ(両眼,ガウシアン刺激)の3条件について,フォトレフラクション(25Hz)を用いて100cmと33cmで1分間右眼の調節力を測定した。ぼけと視差の手がかりが調節ラグ,RMS,LFCに与える影響を評価した。

結果:小児と成人の各条件において,100cmから33cmまでの調節ラグ,RMS,LFCが増加した(P < 0.001)。小児では,ぼけと視差の手がかりが刺激に残っているときが最も正確で安定しており,33cmでぼけや視差の手がかりを取り除くと,輻湊の正確さが著しく低下し,変動が大きくなった(P < 0.001)。成人では,刺激からぼけを取り除いたときのみ輻湊の精度が有意に低下し,変動が大きくなった(P < 0.022)。成人と一致した屈折異常を持つ子どもは,手がかりを取り除いたとき,成人に比べて近見での調節反応の精度が低く,変動が大きかった(P ≦ 0.02)。

結論:小児および成人において,RMSおよびLFCの増加は,調節ラグの増加に関連している。また,10歳未満の小児で視差やぼけの手がかりを取り除くと,成人ほど効率的な適応ができないことから,求心性の視覚経路が未熟であることが示唆された。

※コメント
調節を働かせるためにぼけと視差が必要となりますが,小児では正確な調節惹起のために両factorが大切なようです。近見視時の闇雲な低矯正眼鏡にはリスクが起こりうる可能性を支持する内容かもしれません。屈折矯正の大切さがわかります。

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