45. 小さな調節ラグで眼軸長が大きく変化したことは,視覚タスク中の調節ラグが眼軸長伸長のトリガーになりうるという理論を支持することはできない

Greater axial elongation associated with low accommodative lag: new insights on accommodative lag theory for myopia

Thakur S, Verkicharla PK. Greater axial elongation associated with low accommodative lag: new insights on accommodative lag theory for myopia. Ophthalmic Physiol Opt. 2021 Nov;41(6):1355-1362. doi: 10.1111/opo.12893. Epub 2021 Sep 27. PMID: 34569632.

目的:近視の調節反応に異なる影響を与えることが知られている3種類の近見視標を用いて,調節ラグが眼軸の伸長に与える影響を評価し,調節ラグ説と機械的張力(mechanical tension)説を検証すること。

方法:42名の若年成人を対象とした。紙の文字を読む,スマートフォンの文字を読む,スマートフォンで動画を見るという3つの近見視標のうち1つを眼から20cmの位置に置き,15分間の視覚課題の前後に非接触型バイオメーターを用いて眼軸長を測定した。また両眼開放型オートレフラクターを用いて,近見視標を見ているときの調節反応を測定した。

結果:スマートフォンで動画鑑賞(0.92 ± 0.10D:平均±標準誤差),スマートフォンの文字を読む(0.59 ± 0.08 D),紙の文字を読む(0.24 ± 0.09 D)の3タスクで,調節ラグが有意に異なっていた。紙の文字を読んだ後(15分後:10.5±1.9μm),スマートフォンの文字を読んだ後(5.2±2.7μm)に眼軸長の有意な増加(p<0.05)がみられたが,スマートフォンで動画を見た後(-0.5±1.7μm,p=0.47)ではみられなかった。硝子体の深度は,動画視聴と比較して,読書タスクで有意に増加した(紙・スマートフォンの文字を読む:33.9±4µm・31.7±4µm vs. スマートフォンで動画を見る:14.6 ± 5 µm,p = 0.001)。

結論:小さな調節ラグに関連したより大きな眼軸長の変化は,視覚タスク中の調節ラグが眼軸長の伸長のトリガーになりうるという理論を支持することができなかった。近い読書距離での紙やスマートフォンでの読書は強い調節を要求し,結果として眼軸の伸長を促す可能性がある。おそらく調節時の「毛様体筋の緊張」が増加することが原因であると考えられる。

※コメント
短時間かつ若年成人が対象ですが,大きな調節ラグが眼軸伸長につながるわけではないという結論のようです。
mechanical tension theoryは個人的にはあると思います。過度な調節によって眼球そのものが引き延ばされるベクトルを持ってしまった場合,それは眼軸伸長のリスクだと思います。
実際には,「若年の小児」に対する「長期的な」(大きい)遠視性デフォーカスが重要だと思います。
視点を変えると,網膜へ焦点をしっかり合わせようとするならば,動画の視聴よりも文字を読み書きする方がより効果的であることが実証されたことになります。弱視訓練目線では有益な情報かなと思いました。

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