78. スマートフォン使用前後で調節力と輻湊の測定値には差がなく,これらの結果は,既存の文献に反するエビデンスを示唆する

The impact of smartphone use on accommodative functions: pilot study

Allen L, Mehta J. Strabismus. 2023 Mar 3:1-7. doi: 10.1080/09273972.2023.2179076. Epub ahead of print. PMID: 36866799.


スマートフォン使用による調節への影響に関するエビデンスは限られており結論は出ていない。いくつかの研究ではスマートフォン使用後の症状またはnear triad(近見反応:輻湊・調節・縮瞳)の測定について調査している。これらの研究は,短期間ではあるが,スマートフォンが近見反応に悪影響を及ぼし,症状を引き起こすことを示唆している。さらに最近の研究では,スマートフォンの過度な使用による輻湊要求が原因と考えられる急性後天性内斜視(AACE)の症例が報告されている。今回,スマートフォン使用30分前後の調節力測定値を調査するためのパイロット研究が実施された。16~40歳の参加者を募った。30分間の習慣的なスマートフォン使用前後の調節facility(AF),調節近点(NPA),輻湊近点(NPC)を評価した。NPAとAFは両眼を開いた状態(BEO),右眼(RE),左眼(LE)で評価した。調節facilityは±2DSのフリッパーレンズを用いて評価し,1分あたりのサイクル数(cycles per minute:cpm)で測定した。NPAとNPCはRAF(Royal Air Force)ルールを用いて評価し,センチメートル単位で測定した。18人の参加者が集められ,平均年齢は24±7.6歳であった。スマートフォン使用後のAFは,BEOで3cpm(p= .015),REで2.25cpm(p= .004),LEで1.5cpm(p = .278)改善した。BEOのNPAは2cm悪化し(p = .0474),REは0.5cm悪化し(p =.0474),LEは0.125cm(p = .047)悪化した。輻輳は0.75cm悪化した(p = .018)。これらの結果はスマートフォンの使用による測定値の変化を表しているように見えるが,Bonferroni補正によるpost-hoc分析では,有意水準0.07で統計的に有意ではないことが示された。このパイロットスタディでは,スマートフォン使用前後で調節力と輻湊の測定値に差がないことがわかった。これらの結果は,既存の文献に反するエビデンスを示唆している。このパイロットスタディと先行研究にはいくつかの制限があり,それについて説明する。この分野における限界に対処してさらなる知識を得るために,スマートフォンの使用が近見反応に及ぼす影響を探るための今後の作業に関する情報を提供する。

※コメント
多くの先行研究ではスマートフォン画面の「テキストを読む」課題を遂行しているようですが,本研究では,画面内容を特別言及せず,「いつも通り」使用してもらうようにした。その違いは異なる結果を招いた可能性があります。また,統計解析方法も先行研究と異なることを本文内で述べられています。
個人的にですが,一般的にスマートフォンの使用は今回の研究距離30cmよりも短くなることがほとんどなので,実環境の反応(結果)とは異なるのでは?と思った次第です。

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