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Industry-Up Days:ユビキタスヘルスケア産業(Spring 2021)

「ユビキタスヘルスケア産業」は、SUNDREDの「新産業を創る」と言うビジョンのもと、「新産業共創スタジオ」で早い時期から取り組んでいるテーマです。毎回カンファレンスでは具体的なビジネス、そして産業としてのイメージが、カタチになり、実感できるので、楽しみなテーマです。

「ユビキタスヘルスケア産業」の取り組みについて
医療、ヘルスケアの世界を、Society5.0(人間中心の社会)に対応するために、何をアップデートするのか、いろんな可能性について議論できるテーマですが、何から取り組むのかと現実的な話に落とし込むと、意外にできないのがこの分野です。
それを「新産業共創スタジオ」では、医師と患者との接点となる「聴診器」、患者の状態を知るところから始めると、初めて聞いたときは、なるほどと衝撃でした。
そのトリガーは、シェアメディカル社が、取り組んでいるデジタル聴診器「ネクステート」です。デジタル聴診器というプロダクトだけで考えていると、既存の200年ほど前からある医師たちが愛用している聴診器の代替にすぎませんが、それを1つのプロダクトで考えるのではなく、医療、ヘルスケアと言うテーマで考え、産業という概念を取り込んだことで、その後のプロダクトの位置付けが代わり、新しい価値を創造し、人間中心の社会に向けてアップデートするきっかけになりました。

「ユビキタスヘルスケア産業」の可能性
この「ユビキタスヘルスケア産業」での取り組みには2つの大きなゴールがあります。
1つは遠隔医療、もう1つはパーソナライズヘルスケアです。

遠隔医療については、「ネクステート」の存在により、医師が患者の状態を知るツールをデジタル化することで、医師と患者の距離を超えることができ、COVID-19の感染拡大の影響もあり、その効果が社会で実証され、実装が開始されました。従って、このプロジェクトは次なるステージへ進んでおり、「データ」の活用が大きなテーマとなり、2つめの「パーソナライズヘルスケア」を考えるタイミングになって来ています。

今回のパネルディスカッションでは、患者の状態を知る音をデジタル化したことで、データとして記録し、そのデータを分析することで、診断や状態の予測が可能になるのではないかと可能性を示していました。さらに、現時点では患者の音による健康状態の把握は医師にしかできませんが、将来的には患者自身で知ることができ、専門家でなくても知ることができる時代が来るのではないかと言うことを示唆していました。これが実現すると、医療・ヘルスケアにおいて新しい価値を生み出せると感じ、大いに期待したいところです。

医療・ヘルスケア領域におけるビジネスモデルについて
医療・ヘルスケケア領域を外から見ていると、新しいビジネスモデルが生み出される可能性を強く感じるのですが、実際に自分で新しいビジネスモデルにチャレンジしてみると、なかなか立ち上げることができないことを痛感します。

では、どのようにアプローチすれば、医療・ヘルスケア領域において新規事業を立ち上げることができるのか、そしてなぜエコシステムが求められているのかについて討議されていたので、私なりに理解した内容をまとめてみます。

まず私はデジタルに関するヘルスケア領域の事業を見るとき、そのビジネスモデルはどこに分類されるのかを考え、どのように組み合わせたら、どんな新しい価値を生み出せるのかと考えています。そのときの分類は下記のような5つのタイプです。

1)データ化
2)記録
3)分析
4)診断・予測
5)治療

今回のパネルディスカッションでは、「ヘルスケアサービス」と「保険サービス」の組み合わせをテーマに討議されていたので、前述の分類に当てはめて考えてみたいと思います。

現在の「ヘルスケアサービス」は身体的な状態や精神的な状態を、1)データ化、2)記録すると言うサービスが中心です。また、某社の「保険サービス」は「ヘルスケアサービス」との組み合わせになっているので、1)データ化、2)記録、3)分析となります。
つまり、「保険サービス」に新しい価値を提供するには、新しいテーマを作り、新しい変数をデータ化し、分析することで実現ができると言うことになります。だから、新しい価値創造を加速するために、外部とのコラボレーションが必要であり、その準備が進められているとのことですので、新しい解決すべきテーマができれば、「新産業」を生み出す強いポテンシャルがあることを感じました。

次に、このヘルスケアに関する5分類で、ヘルスケアに関するビジネスの立ち上げに苦労する理由を簡単に説明することができます。

実は、1)データ化、2)記録3)分析は、テクノロジーを活用することで実現できる領域で、ITが得意な分野です。一方、4)診断・予測、5)治療はサイエンスかつ生命に関わる領域であるため、論理と倫理の両方を満たす必要がある領域であり、既存のルールがある領域であるため、そのルールに従ってきっちりロジカルに証明していかなければならないので、時間とお金がかかります。ここをクリアするのが大変ですが、今いくつものスタートアップや新規事業として取り組んでいるプレーヤが存在するので、いずれ近いうちにブレークスルーし、画期的な診断や治療方法を提案する会社が出てきると思います。

ヘルスケアビジネスに求められること
今回の討議の中で、ヘルスケアビジネスをアップデートするために必要な要素として、2つが挙げられました。
1) ペイシェントジャーニー
これまでの医療・ヘルスケアはサービスを提供する人たちを中心に考えられてきましたが、これからのSociety5.0(人間中心)の時代は、サービスを利用する利用者(患者)を中心にアップデートする必要があります。

2)ペイシェントエクスペリエンス
利用者(患者)はこれまでの時代、自分の身体的な情報、精神的な情報を知るためには、医療機関へ訪問する必要があり、さらには自分でその情報を保管し、活用することができませんでした。しかし、これからの時代は自分がそれらの情報を管理し、必要に応じて活用もできる時代になっています。その情報を活用するために情報を蓄積するためには、ワクワクするインセンティブを与える必要があります

これら2つのことを意識して新しい価値を創造するために活動すれば、ヘルスケア領域は大きくアップデートされると思います。この「ユビキタスヘルスケア産業」はやはり先行して進捗しているプロジェクトだけに、創りたい未来、あるべき未来がクリアで、そこにいくつくためのプロセスも課題もはっきりしているので、次回のカンファレンスでの成果、進捗報告が楽しみです。

株式会社シェアメディカル https://www.sharemedical.jp/
「ネクステート」https://www.nexstetho.com/

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