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「 漫画家 青井秋先生とつくる 『 きのこ 』 の箔押し便箋 」

コスモテックの青木です。
今回は、漫画家 青井秋先生とつくるコスモテックサンプル直売所( オンラインストア )の新作 『 きのこ 』 がテーマの箔押し便箋についてご紹介します。今回の便箋は、青井秋先生自ら 『 菌糸の森 』 と命名してくださいました。


◉ 漫画家 青井秋先生について

青井秋先生は主に動物・植物や鉱物などをモチーフとしたファンタジックな作品を描く漫画家・イラストレーターです。青井秋先生の著書には 「 ゴンドワナの眠り 」「 百草の裏庭 」「 ゆうづつは藍にとける 」 などがございます。また、青井秋先生は 「 愛なき世界 」( 著者:三浦しをん )、「 言葉の園のお菓子番 」( 著者:ほしおさなえ )などの装画を手がけられております。

Twitter : https://twitter.com/aoiaki_info 

◉ 漫画家 青井秋先生との出会い

さかのぼること2016年。コスモテックは 『 きのこ漫画名作選 』 という、きのこマニアときのこファンに捧げる 「 きのこ漫画 」 のアンソロジー書籍のブックカバーへの箔押し加工をお手伝いさせていただきました。

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全面金箔押しブックカバーの 『 きのこ漫画名作選 』 は当時話題に
ブックデザインはセプテンバーカウボーイの吉岡秀典さん

この 『 きのこ漫画名作選 』 のアンソロジー内に青井秋先生の 「 爪先に光路図 前篇 」 が収録されております。 『 きのこ漫画名作選 』 の刊行イベントがライブストリーミングチャンネル DOMMUNE で放送される機会があり、僕は製作陣の一人としてゲスト出演させていただきました。

イベントのスペシャルゲストとして、青井秋先生も DOMMUNE スタジオ 現地より声のみ生出演してくださり、僕が先生とお会いしたのはその時がはじめてでした。


『 きのこ漫画名作選 』 の製作が漫画家 青井秋先生と知り合うきっかけをつくってくれたのです。

◉ 過去の3作品と制作過程

コスモテックサンプル直売所( オンラインストア )で販売している製品の中で漫画家 青井秋先生がデザインとイラストを手がけているものは、完売したものも含めて3作品あります。また、作品名も青井秋先生に名付けていただいております。

【 完売御礼 】 生命の帯(マスキングテープ)

【 完売御礼 】 Systema Naturae(クリアファイル)

【 追加製作 】 イリスの庭(便箋)


3作品すべてが大人気を博し、完売!

美麗な箔押し便箋 「 イリスの庭 」 は完売後、増産希望の声を特に多くいただき追加製作・販売しております。 SNS上で漫画家 青井秋先生とともに製作させていただいた作品をお手に取ってくださったお客さまから

「 青井秋先生の描く線は本当に美しい! 」
「 青井秋先生の世界観が大好きです! 」

というお声をたくさんいただきます。
確かに青井秋先生の描かれる図案は箔押しするとため息が出るほど美しく映えるため、箔押し加工する職人たちも感嘆の声を上げているほどです。

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クリアファイルの全面に3色の繊細な箔押し加工をほどこした
作品名 『 Systema Naturae 』

また、今までの3作品の制作において、コスモテックから青井先生にお願いする際は加工上の細かい仕様はあえて言わずテーマのみを先生にお渡しし、先生が描きたい世界を自由に描いていただきました。

その後、コスモテックの箔押し技術で
「 どうすれば かたちづくれるだろうか? 」
「 どうすれば 青井秋先生の美しい線を箔押しで表現できるのだろうか? 」

と、『 技術 』 そして 『 表現 』 を追求していくということを3作品の制作を通して、繰り返し行なってきました。また、加工実験的な要素も非常に多いことも特徴に挙げられます。

コスモテックとしても、青木個人としても、毎回テーマをお渡しした直後に青井秋先生から上がってくる素敵なご提案と美しい線画、特有の世界観に一瞬で魅了されてしまうのです。

◉ 新作のテーマは 『 きのこ 』

ずっと以前から、コスモテックサンプル直売所( オンラインストア )に寄せられるお客さまの声の中に 「 コスモテックの箔押しで 『 きのこ 』 の箔便箋をつくってほしい! 」 というものが多くありました。

「 『 きのこ 』 といえば、青井秋先生しかいない! 」 という気持ちをひっそりと温めていた僕は今回、満を持して先生に4作目のご相談をさせていただき、「 ぜひとも! 」 とうれしいご回答をいただきました。その後、先生から届いたデザインラフに僕は仰天しました!

日本で見られる 『 きのこ 』 をメインに、 多種多様な 『 きのこ 』 が大集結しているのです。 これはすごいです!

漫画家 青井秋先生より
日本で見られる 『 きのこ 』 達をメインに菌糸束、胞子紋と一緒に、細胞などをイメージした幾何学的枠デザインで繋いで菌糸で繋がっているようなデザインにしてみました。 『 きのこ 』 モチーフは有機的なデザインのものが多く、逆に硬質なデザインのものをあまり見かけない気がするのでこういった感じにしてみたのです。

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漫画家 青井秋先生の貴重なデザインラフイメージ

タマゴタケ( デザイン完成時、ベニテングタケへ変更 )、ササクレヒトヨタケ、アカカゴタケ(※)、スジチャダイゴケ、ハナビラタケ、シロオニタケ、キヌガサタケ、シロアンズタケ、ツチグリ、ハナウロコタケ、アミガサタケ … 

※ アカカゴタケのみ海外種で、アカカゴタケ科の名付けもとになっている 『 きのこ 』 なのです。

漫画家 青井秋先生より
さらに、選んだ基準をもう少し詳しく説明すると…
『 きのこ 』 好きにはその子自体の姿の多種多様さに惹かれる方も多いと思うので、似通わない形を持つ 『 きのこ 』 達をバランスを見て配置したかったのでこのような選出になりました。

その 『 きのこ 』 の有機的なデザイン性と対比して際立たせる為に、枠は幾何学的なデザインにしてあります。全体にかかる、ゆるやかな線のモチーフは、見えない地中で繋がっている菌糸をイメージして配置しています。

便箋の枠にぐるりと配置された日本で見られる 『 きのこ 』 達をメインとした漫画家 青井秋先生のセレクト。 これは、本当に 『 きのこ 』 好きにはたまらない図案でしょう……。

そして、最終的に箔押し加工で表現するにあたって、3色の箔色を組み合わせて今回の作品、青井先生命名 『 菌糸の森 』 を完成させます。漫画家 青井秋先生がデザインラフをベースとして仕上げた図版が下記です。3色に色分けされている部分はそれぞれ箔色をコスモテックで決めて、まずは校正( テスト )加工します。

いくつもの 箔 × 箔 × 箔 の校正パターンをつくり、青井秋先生と共有してご意見をおうかがいする… という流れで制作しております。

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デザインラフ時のタマゴタケは、ベニテングタケへ変更

デザインラフの時にはあった真ん中部分の罫線を取り外すことで、縦型だけでなく横型の箔便箋としてもご利用いただくことができるようになりました。 便箋のサイズは B5サイズ( 182mm×257mm )です。

どの向きで使用してもぐるりと周りを取り囲む 『 きのこ 』 を楽しめる自由な便箋なのです。

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縦・横、自由自在に使用可能

◉ 箔押し便箋 『 菌糸の森 』 をつくる

現場の前田です。
漫画家 青井秋先生の 『 菌糸の森 』 便箋の箔色選びと箔押し加工を行いました。今回の箔押し加工は、B5サイズの3枚の図案を重ね合わせることで 『 菌糸の森 』 が完成します。3枚の図案それぞれに異なる箔色をセレクトして、全3回におよぶ全面箔押しを行い、かたちづくります。

箔押し加工に使用する3枚の金属版

はじめて 『 菌糸の森 』 を見た時、息を飲むような美しい線画で描かれたさまざまな 『 きのこ 』 が便箋の縁をぐるりと囲み、輪を成している様子に感動し、興奮しました!

とにかく線画が美しく、魅力的です。
ただ美しいだけでなく、どこかダークな雰囲気も漂う不思議な 『 きのこ 』 ワールドに引き込まれます。青井秋先生が今回描いて下さった 『 菌糸の森 』 のイメージに寄り添えるよう、箔色選びを熟考しました。

◉ さまざまな 『 きのこ 』 の世界を想像

箔色のセレクトは青井秋先生よりコスモテックへ一任していただいており、校正( テスト加工 )で合計8パターンの 『 菌糸の森 』 の世界をつくり出しました。この校正8パターンを青井秋先生に実際見ていただき、ご助言をいただいた上で最終決定します。

校正で製作した8パターンの 『 菌糸の森 』

校正を8パターンつくり出す過程は、まるで加工実験でした。
組み合わせる箔色一つとっても、仕上がりの印象が大きく変わりますので、組み合わせを考える作業はどきどき・わくわくもしますが、責任重大でプレッシャーを感じます。

また、校正時は組み合わせのリストをあらかじめ作って加工に臨みますが、いざ箔押ししてみた時に 「うーん、別のアプローチの方が良いかもしれない。 」 と壁にぶつかることも多々あります。

その時は臨機応変に当初のプランを変更し、即興で別の箔色を組み合わせて、校正を完成させます。

箔 × 箔 × 箔 の 箔色と図案の組み合わせの考察

「 こうかな? うーん、こっちのほうがいいかもしれない。 」

と、どんどん校正加工時に変化を加えていき、全部で8パターンの校正をつくりました。 テーマの『 きのこ』 、作品名である 『 菌糸の森 』 から緑、茶系の箔色、黒箔、金箔などを中心に組み合わせていきました。

ぱきっと硬質な印象、そしてどこか影を帯びて妖しく、そして神々しく…。

茶色系の箔色で表現した 「 ベニテングタケ 」
黒箔で表現した 「 ササクレヒトヨタケ 」
金箔で表現した 「 ツチグリ 」

この神々しい世界観、線画の美しさをどうすれば表現できるのか…
箔色選びだけではなく、加工方法も重要なポイントになります。

箔押しサイズはB5サイズ全面と大きく、箔を均等にきれいに乗せるために強い圧をかけてガッツリ押しています。そして、強い圧をかけながらも繊細で美しい線画を潰すことなく再現することを特に重視して、機械や手作業での調整を繰り返し、箔の接着剤を慎重に選びながら加工にあたりました。

また、線画の再現性も重要ですが、箔色3色の見当合わせ( 位置合わせ )は技術的に難しいポイントの一つです! 青井秋先生の 『 菌糸の森 』 の世界観を意識しながら、1色1色丁寧に位置を合わせて加工しました。

圧をかけることで、作品に奥行き感が現れる

1色押すごとにかたちづくられていく 『 菌糸の森 』 の世界に 「 色の組み合わせによっても、こんな風にイメージが変わってくるのか〜! 」 と驚きと感動を覚えました。

さて、いよいよ 漫画家 青井秋先生 箔押し便箋 『 菌糸の森 』 は、来年2023年にコスモテックのオンラインストア、コスモテックサンプル直売所にて販売開始します。

本製作用として青井秋先生がセレクトされた箔は校正8パターンの内、一体どんな組み合わせでしょうか。

コスモテックサンプル直売所にて近日公開、ならびにコスモテックの Twitter でもご紹介しますので、皆さま、ご期待ください!


【 連絡先 】
ようこそ!行列のできる『箔押し印刷工房』へ
http://blog.livedoor.jp/cosmotech_no1/

有限会社コスモテック 青木政憲
〒174-0041 東京都板橋区舟渡2-3-9
TEL:03-5916-8360 / FAX:03-5916-8362

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