「『〈美しい本〉の文化誌 装幀百十年の系譜』のカバー箔押し 」
こんにちは、現場の前田です。
今回は、藤原印刷さまからのご依頼による、出版 Book&Design( 宮後優子さま )、著者 臼田捷治さまによる『〈美しい本〉の文化誌 装幀百十年の系譜』のカバーの箔押し加工をお手伝いさせていただきました。
こちらは、夏目漱石『 吾輩は猫である 』以降、約110年間に日本で刊行されてきた、美しい本350 冊を振り返り、ブックデザインの変遷をまとめた本です。
リスクを想定し、備えること
この本の箔押しのデザインデータをご入稿いただいた際、「 これは難易度が非常に高いな 」と感じた点は二つあります。
一つ目は、
美しい本350冊のタイトルが書き連ねられた繊細で細やかな文字の表現。
二つ目は、
タイトル部分の印刷と箔押しの位置合わせです。
上記のような、箔押しする際に気になる点を加工の前段階で想像し、どうすればより良く表現できるかを考えます。
箔押しは加工前の「 下ごしらえ 」が重要
まず、一つ目の繊細な文字の表現。
今回のカバーに使用されている用紙は「 アングルカラー(きぬ白) 」という、薄っすらとストライプ模様のテクスチャーが入った用紙で、箔はシルバー箔で加工しています。
「 繊細で美しい文字を表現するためには? 」
「 文字をシャープに・エッジを美しく出すためには? 」
ということに想像力を働かせます。
更には、テクスチャーの入った用紙への箔押しのため、テクスチャーの凹凸に箔がしっかりと乗るのかどうかということも考慮しなくてはなりません。箔押しの押し圧はもちろんですが、文字をキリッとシャープに出すため、箔の接着材選びにもこだわりました。
箔押しの図案や素材である紙から、加工に適した版や箔・箔の接着剤などを予測すること、起こり得るトラブルを予測し回避すること…
美しく精度の高い箔押しをするには加工する前の準備段階が非常に重要なのです。それは料理の下ごしらえにも近いと考えます。ここを疎かにすると、なんとなくあか抜けない印象になってしまいがちです。
また、二つ目の印刷と箔押しとの位置合わせは、箔押し加工の際に手作業によって印刷との位置を合わせ、加工中も慎重に箔押し位置を微調整しながら、なるべくズレが生じることのないよう加工しています。
特に書籍のタイトル部分・著者名を囲む繊細で美しい罫線と下地となる印刷の位置。ここは少しのズレも許されない、ストイックな位置合わせを要しました。
一見シンプルに感じるデザインほど、下ごしらえの丁寧さで完成度に差が出ると感じます。
出来上がった『 〈美しい本〉の文化誌 装幀百十年の系譜 』の表紙は、淡い色合いにシルバー箔で表現された繊細な文字や線の光沢が華を添え、品のある美しい表紙になりました。
藤原印刷さま、Book&Design 宮後優子さま、この度はお声がけいただきありがとうございました! こちらの書籍は Book&Designさま の直販サイトからもお求めいただけます!
【 箔押し加工 】
有限会社コスモテック 現場リーダー 前田瑠璃
〒174-0041 東京都板橋区舟渡2-3-9
TEL:03-5916-8360 / FAX:03-5916-8362
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