「レコード風 箔押し表現」
こんにちは、現場の前田です。
今回お手伝いさせていただいたのは、現在( 2021年4月 )、竹尾 青山見本帖で開催されている、 「 AOYAMA CREATORS STOCK 19 小島利之展 SOUNDLESS RECORDS 」展に展示されている紙のレコード盤箔押しです。
レコードをこよなく愛する、アートディレクターの小島利之さまが、レコードを題材に何かできないかと考え、制作された作品のひとつが 「 紙でできたレコード盤 」。こだわりぬかれた紙のレコード盤は、まるで本物のようです。
約2年半前から小島さまとレコード風箔押し表現の立ち会い、加工実験を何度もおこない、ついにお披露目となった紙のレコード盤。コスモテックではこのレコード盤の溝の部分を箔押し加工でお手伝いさせていただきました。
小島さまが箔押し加工で特にこだわられていたのが 「 溝 」 の表現です。
上の写真を見ていただくとお分かりになるかと思いますが、非常に細い線で表現されています。
これほどの細さを表現するには、箔押しに使用する 「 版 」 が重要になります。この版を製作されたのが、ツジカワ株式会社さまです。
腐食によって作られる版はあまりにも細かすぎる柄になると、版の一部がかけてしまったり、腐食の具合いによっては版の深度が浅いと箔押しした際に絵柄がシャープに出てこないことがあります。
今回の紙のレコード盤の溝は 「 徹底して本物に近づけるため 」、小島さまが限界ギリギリの細さを攻めたデザイン…! そのため究極の版の製作のために何度もテスト押しを行い、版の改良を行いました。
右上は一番最初に作った版
下側は改良された版
ここから更に改良を加え、最終的な版が完成
ツジカワ株式会社さまによると、特に、溝が密集しているエリアと、その前後( 円の内側と外側 )の単独線部分、つまり線の密度が全く違う箇所がぴったりと隣り合っているため、これをひとつの版として作るのに苦心されたそうです。
最終的にレコードの溝の線がしっかりとシャープに、且つ、リアルに出る素晴らしい版を製作していただきました。
ツジカワ株式会社さまの職人の技によってつくられた素晴らしい版をコスモテックの箔押し加工でしっかり表現できるよう慎重に調整し、加工にあたりました。非常に細い線のため加工では強めに圧をかけています。
溝の幅や浮き出た線の雰囲気までも、リアルなレコードらしさを徹底的に追求しているのが分かり、小島さまのレコード愛が満ち満ちております。
また、加工はレコード盤の形である正円に型抜きされた状態のものに加工を施しています。 通常、箔押し加工は変形のもの、その中でも特に今回のように直線・直角部分のない変形の物への位置合わせは非常に難しいのです。
今回のような正円の物への加工には、型抜きされて残った 穴の開いた抜け殻の用紙( 正円を抜いた後に残った余白部分 )に、抜いた正円をもう一度はめ込んで加工します。つまり、型抜き加工の際に出た紙の抜け殻を、正円の物を固定する治具として利用するということです。
型抜きされたレコード盤を 「 抜け殻の穴にはめ込み → 押す → 剥がす 」 を1枚1枚繰り返しながら加工するというのは、なかなか根気のいる作業でした。
そして驚くべきことに、レコード盤に使用されている用紙の種類は多岐に渡っております。
その数なんと42種類!
( 展示会場では38種類が展示されております )
光沢があるもの、エンボス模様の入っているものなど、用紙の風合いや色も様々です。箔色も用紙の色に合わせたものをそれぞれ押し分けており、完成形がどのようになるのか、ワクワクしながら加工をさせていただきました。
大きさや厚み、重さ、ラベルなど細部にまで徹底的にこだわりいっぱいのレコード盤は、紙だからこそできる表現が詰まった作品になっております。
用紙や印刷・加工にも注目の小島さまの展覧会は、2021年6月18日(金)まで開催されています。
小島さま、この度はお手伝いさせていただきまして誠にありがとうございました!
小島さまから 「 会場では、いったいこれはどうやったらこうなるの?聞かれまくりました。それほどリアルという事! 」 … というコメントが届いております。
【 箔押し加工 】
有限会社コスモテック 現場リーダー 前田瑠璃
〒174-0041 東京都板橋区舟渡2-3-9
TEL:03-5916-8360 / FAX:03-5916-8362
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