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「(もと)コズフィッシュとコスモテック」

2020年2月21日。
都内某所のタイ料理屋にて。

祖父江慎さん率いるコズフィッシュから独立した4名のデザイナー、吉岡秀典さん( セプテンバーカウボーイ )・佐藤亜沙美さん( サトウサンカイ )・鯉沼恵一さん( ピュープ )・福島よし恵さん、そしてコスモテックの青木と前田瑠璃の計6名でお食事会を行いました。

目的は、鯉沼さん・福島さんのコズフィッシュからの独立祝い!
おめでとうございます。

・セプテンバーカウボーイ | https://twitter.com/SEP_COW
・サトウサンカイ | http://satosankai.jp
・ピュープ | https://pyup.net
・福島さん | https://instagram.com/fukushimayoshie


熱烈なファンが多い4名のデザイナーが一堂に会して、マニアックでディープで、とても贅沢な夜でした。

僕を含め、集まった6名全員のクセが強く、更にはタイ料理屋のあやしげな雰囲気も相まって、ちょっとしたカオス。食べて、呑んで、話して、気づけば、あっという間に4時間近くも経過しておりました。

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さて、今回はコズフィッシュとコスモテックとの繋がりについて少し触れます。コズフィッシュとのお付き合いが始まったのは、今は亡き、箔押しの匠 佐藤の時代に遡ります。

■ 望む加工を選び取る意志

僕( 青木 )はずっと以前からコズフィッシュが手掛ける書籍が大好きで、在籍されているデザイナー( 吉岡さん・佐藤さんら )が作る本はよくチェックしてました。いつかそれらをコスモテックで加工してみたいと願い続けていました。

出版の流れにおいて、通常、ブックデザイナーが加工所( コスモテック )を指名するのは一般的ではありません。

出版物を作る際、多くの場合は出版社が決めた印刷会社が印刷・加工の流れを決めて、取引のある印刷会社や加工所を手配します。デザイナー側が使ってみたい印刷会社や加工所があっても、そこを指名したり自由に使うことはゆるされない場合が多いのです。

つまり、印刷会社・加工所を指名し、それを実現するためにはブックデザイナー自身の実力・実績・熱意のみならず、出版社任せにしないための交渉力・印刷物のハンドリング能力も必要であり、通常の手順に比べて時間や手間が非常にかかるということです。

『 コスモテックを指名して加工する 』 という落とし込みが非常に上手
なのが、吉岡さんと佐藤さんです。それはコズフィッシュ在籍時からはじまり、現在も続いています。お二人は前述の条件がそろっているだけでなく、忙しい仕事をこなしながら僕の知らないところで試行錯誤し、コスモテックで箔押しが出来るように流れを仕向けて・仕掛けてくれるのです。

これは、お二人のコスモテックへの信頼の証でもあり、それを知っている僕たちはそれに全身全霊をもって加工で応えるのです。

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吉岡さん( セプテンバーカウボーイ )が、
『 胞子文学名作選 』での加工立ち会い時の写真

■ 想像力と会話

お二人からのご依頼でコスモテックにまわってくるものは全て難易度が高いものばかり!ありがたい反面、どうやって加工したらうまくいくのか見当がつかず、匠( 佐藤 )が頭を悩ませていたこともありました。

「 この加工プラン本当に上手く表現出来るのか? 」
「 どんな仕上がりになるのか想像つかない。 」

お二人からのご依頼はいつもドキドキの連続!
ゾクゾクするようなデザイン・初めて経験する素材や加工方法であることも多く、コスモテックの加工技術の向上に大きく貢献し、表現の幅を広げてくれたことは間違いありません。


『 LIXIL BOOKLET 海藻 海の森のふしぎ 』( 佐藤亜沙美さん )

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グロスPP加工された表紙に海藻の図案の版で加熱型押しをして、PPを溶かす。そして、表紙で使用した海藻の図案を糸ノコギリで切り分け、バラバラの海藻パーツを作り、再度位置を組み直して、本文用紙内で透明箔押し。


『 胞子文学名作選 』( 吉岡秀典さん )

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表紙にコスモテックの十八番 『 つばめ返し 』 加工を使用。
箔押し加工をし、和紙を挟んで型押しをすることで、和紙のテクスチャーを箔押した箇所につけ、シュワシュワの菌糸のような表現を押しの技術で表現。また、箔色を替えることで、通常版・限定版の2種を生み出す。


『 きのこ漫画名作選 』( 吉岡秀典さん )

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表紙に金ベタ面積が大きい図案で箔押し。その後、版を変え超圧型押し加工をし、押された部分は凹み、押されない部分が盛り上がるような表現を狙う。仕上がりの佇まいはまるで金の鎧を着ているような雰囲気に。


いつしか「 コズフィッシュ周辺( 独立前・独立後 )からの仕事はマニアックで難易度の高いものばかり… 」

そんなイメージが匠( 佐藤 )と僕の中に出来上がっておりました。

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無理難題とも思われるご依頼を頂くたびに、匠( 佐藤 )と僕は、デザイン・紙・箔と向かい合い、彼らから期待されていることが何なのか、どうしたら実現できるのか徹底的に話し合い、加工実験を繰り返しました。

実験しながら「 ちょっとしたひと工夫をしたり 」、お互いの手を止め仕上がりイメージを共有するために「 会話する時間を多く持つ 」など、期待される表現を具現化するための歩み寄りの作業を繰り返し行ってきました。

繰り返すうちにデザイナーと匠( 佐藤 )を結ぶ共通言語のようなものが見つかっていき、それがガチッとハマったとき、とんでもなくパワーをもった作品が仕上がることに気づくと、大きな快感をおぼえました。

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2013年。佐藤亜沙美さんがコスモテックに
加工の立ち会いをしに来て下さった時の写真

■ 『 ちょっとの差が大きな差でもある 』 ということ

このような経験から、ちょっとしたアイデア一つが、会話の一つが、仕上がりを劇的に左右するものだということを学ばせて頂きました。今のコスモテックの加工技術・表現力への自信は、このような経験を通して得たものなのだったのです。


そして、2020年現在。
こうしてタイ料理屋で、コズフィッシュを独立した4名のデザイナーとコスモテックの現場リーダーの前田と僕がひとつのテーブルを囲んでいることが不思議な感覚です。

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タイ料理屋に前田が持参した吉岡さんとの加工実験を見て、
吉岡さん「 この加工法の名前って『 絶対押し 』で良いんじゃないですかね? 」 と皆でワイワイ盛り上がっている様子


もしかしたら、匠( 佐藤 )が繋いでくれた「 ちょっと頑張ってみようかな 」 が、今こうして僕らをここで繋いでくれているのではないか、そんな感覚もあるのです。

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僕は今後、コスモテックの前田が、この度コズフィッシュを独立された鯉沼さん( ピュープ )・福島さん達と共に、何か新しい表現を生み出してくれることを期待しています。

デザインする側と加工する側。
そこにあるお互いへの信頼と歩み寄りが、あたらしい世界を切り開いていく予感がするのです。

小さなタイ料理屋のテーブルを囲んでのマニアックな仲間達との時間は、僕にとって、過去と現在を繋ぎ、そしていっそうおもしろい未来をほのかに予感させる貴重な時間でした。

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鯉沼さん( ピュープ )・福島さん、独立おめでとうございます。
益々のご活躍、楽しみにしております。

コズフィッシュのメンバーがコスモテックにもたらしてくれたものは非常に大きく、「 ちょっと( 箔を )押してみたいな 」 と思わせてくれる、メンバーの人柄とデザインが、昔も今も魅力的です。コスモテックも、これからも 「 頼りたい 」 とわざわざご指名いただける存在で有り続けられるよう精進していきたいです。

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