「 印象深い 2つの名刺 の箔押し 」
こんにちは、現場の前田です。
今回は、それぞれの思いやこだわりの詰まった2つのお名刺をご紹介いたします。
『 第三電気 久野勇人さま お名刺 』
写真( 名刺うら面 ) 広光(HIROMITSU)
第三電気 久野勇人さまのお名刺は、グラフィックデザイナー 加納大輔さまのデザインによるものです。
真っ白な紙に、メタリックとは異なる光沢感の箔がキラリと光る名刺。
使用している紙は白色度が高くスベスベとした なめらかな肌触りが特徴で、箔の定着も良い紙を使用しています。
白地に透明箔 可読具合の確認
今回は久野さま、加納さまが加工立ち会いのためにお時間をつくってくださり、紙と箔色の組み合わせや、箔押しの圧加減を確認していただきました。
動画撮影( 立ち会い時 ) 久野勇人さま
「 さまざまな箔色を試すも、当初の箔色で進めることに 」
箔色は さりげなさなどを重視し、どのような箔色が合うのか、通常の透明箔・パール箔を中心とし、銀消し箔なども含め、いろいろな種類を試しましたが、最終的に 当初ご希望されていたドイツの箔メーカーKURZ社の透明箔に決定しました。
実はただの透明箔ではない!
この透明箔は、実は完全な透明というわけではなく、パール箔のようにほんのり色味があり独特の光沢感があります。
加工立ち会い時、久野さまが箔色をお選びになる際は、いろいろな箔で加工されたものが並ぶ中、ドイツの透明箔を瞬時に選ばれていた様子が印象的でした。 きっと立ち会い以前からいろいろシュミレーションをしていた中でのブレない箔の選定だったのだろうと感じました。
写真( 名刺おもて面 ) 広光(HIROMITSU)
圧の加減も、お2人に確認していただきながら、名刺裏面に圧の影響が出ない程度に調整し、細かく繊細な文字は なるべくシャープに見えるようにと心掛けて加工しています。
コミュニケーションが生まれる
白い紙にさりげなく光る透明箔で加工されたお名刺は、箔色と紙が馴染み、心地よい余白を感じるデザインです。
真っ白い紙に透明箔の組み合わせは、一見すると 「 ん!? 文字どこ? 」 と思われるかもしれません。 しかし、この 『 ひっかかる感覚 』 が、お名刺を渡す際のコミュニケーションへのきっかけにもなるつくりなのです。
久野勇人
1992年生まれ、東京在住。
2020年9月 Facebook 主催の ARハッカソン優勝。
BIRDMAN Inc. での制作実務経験を経て、2008年まで存在した祖父の電気設計事務所 「 第三電気 」 を自身の経験とキャリアを武器に、デジタルクリエイティブプロダクションとして同社名で再始動。
加納大輔
1992年愛知県生まれ。2019年よりフリーランス。
オフセット印刷とリソグラフ印刷を融合させた、オルタナティブな雑誌 『 NEUTRAL COLORS 』 や、映画・音楽・文学・美術・写真・サブカルチャーの領野を横断する批評誌 『 エクリヲ 』 などのアートディレクションのほか、作品集や写真集などのブックデザインを中心に活動を行う。
『 Fashion Improver 関隼平さま お名刺 』
写真提供 関隼平さま
英字と日本語、そしてオレンジ色とクリーム色の2色展開となっている、関隼平さまのお名刺は、白い立体の吉田昌平さまがデザインされております。
このお名刺の特徴は、しっとりとしていながらもサラサラしてもいるような独特な質感とくっきりとした発色の紙。この紙は名刺では なかなか無い薄さ。
名刺サイズの中にぎっしり詰まった文字表現
通常のお名刺の場合は、だいたい 0.3mm ほどの厚みのものを使用することが多いのですが、関さまのお名刺の厚みは 約0.1mm弱 ほど。通常のものと比べると 1/3 ほどの厚みになるため、見た目ではわかりにくいのですが、触るとあまりの薄さに驚きます。
箔は、艶有りとマット調の中間ほどの質感が特徴のドイツの箔メーカーKURZ社のハーフブラックを使用し、書籍のように名刺サイズの中にびっしりと並ぶ細かな文字を箔押し加工しています。
繊細な文字の集合体なので、加工に使用する金属版の選定にも気を使っております。
名刺だけど、書籍のようなデザイン
写真提供 吉田昌平さま
弱圧・中圧・強圧のアプローチ
校正では、弱圧・中圧・強圧の3段階の圧加減で箔押し加工しました。
圧を強めるごとに文字も少しずつ太く変化するのですが、紙が薄いと裏面への圧の影響が出やすいため、それぞれの圧加減で裏面の表現が異なることが面白いポイントでした。
そして、校正を経て本番加工へ。
3種類の圧加減から選ばれたのは、弱圧加工。
弱圧は1番文字が細くシャープに出るため、本番もびっしりと組まれた文字の形1つ1つがしっかりくっきりと見えるよう注意しながら加工にあたりました。
また、文字の天地左右の余白もバランス良く均等な幅になるよう、箔押し加工後に型抜き加工をすることにより、余白の幅の精度を上げています。
鮮やかな紙色に並ぶ少し艶感のある黒箔の文字がシンプルな表現でありながらも、紙の薄さが名刺としては少し異質で、触ると 『 まるで本をめくっているような不思議な感じもする 』 お名刺に仕上がりました。
関隼平
1979年東京生まれ。
2008年に1LDKの立ち上げに参加し、全店舗のバイイング、マネージメントを行う。2015年からはパリ店勤務となり2016年に独立。
Fashion Improver として様々なショップ、ブランドの価値を高める仕事をパリにてスタートさせる。2019年にはパリ16区にセレクトショップ PARKS Paris をオープン。
吉田昌平
1985年生まれ。広島県出身。
桑沢デザイン研究所卒業後、デザイン事務所 株式会社ナカムラグラフを経て、2016年 白い立体として独立。雑誌・書籍のデザインや展覧会ビジュアルのアートディレクションなどを中心に活動。
その他に、アーティストとして紙や本を主な素材としたコラージュ作品を数多く制作発表する。作品集に 『 KASABUTA 』(WALL 2013年)、『 Shinjuku(Collage) 』(numabooks 2017年)『 Trans-Siberian Railway 』(白い立体 2021年)
久野さま・加納さま、そして関さま・吉田さま、この度は貴重なお名刺の加工をお手伝いさせていただきまして、ありがとうございました!
『 進んでいくこと 』
文 : コスモテック 青木より
「 名刺なのだから、読めなければならない 」
「 名刺なのだから、しっかり厚みがなければならない 」
今回の2つのお名刺は、私たちが考えている 『 あたりまえ 』 の一歩先へと進んでいるような感覚を感じ、 『 あたりまえ 』 について改めて考えさせられるお仕事でした。
「 自分はこういう者です。 」「 自分らしく行こう。 」
2件とも名刺の佇まいが潔く、肩の力が抜けているような…
明確な 「 自分 」 を持っている、どっしりと構えた感じが素敵でした。
【 箔押し加工 】
有限会社コスモテック 現場リーダー 前田瑠璃
〒174-0041 東京都板橋区舟渡2-3-9
TEL:03-5916-8360 / FAX:03-5916-8362
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