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チームの力で衛星データビジネスの可能性に挑む。宇宙で日常を豊かに。

株式会社 sorano me(ソラノメ)
代表 城戸 彩乃さん(きど あやの)
 
【プロフィール】
東京都立大学システムデザイン研究科航空宇宙システム工学域にて修士課程修了。在学中に宇宙広報団体TELSTAR、宇宙ビジネスメディア「宙畑-sorabatake-」を設立。さくらインターネット株式会社在籍中に、副業で株式会社sorano me(ソラノメ)を立ち上げる。2022年4月からはsorano meを本業として、人工衛星データを活用した新しい宇宙ビジネスの開発に取り組んでいる。
日本航空宇宙学会会員(宇宙ビジネス共創委員会 委員)


【仕事内容】人工衛星データを使った宇宙ビジネスで日常を豊かにすること

ー今のお仕事内容をお聞かせください

2019年に立ち上げた株式会社sorano me(ソラノメ)という会社の代表をしています。
 
「わたしたちの日常を、宇宙ビジネスで豊かにする。」をビジョンに、
宇宙業界に限らずさまざまな経験を持ったメンバーが集まって創業しました。わたし以外は、全員副業という形態でプロジェクトに関わっています。
 
前職で人工衛星のプラットフォームのTellus(テルース)の立ち上げから関わっていたこともあり、人工衛星データの活用を強みとしている会社です。
自社のメンバーのみで動かしている事業もありますし、
他の企業様が人工衛星データの活用を検討されている際にコンサルティングという形で関わることもあり、形はさまざまです。


ー人工衛星データを活用したビジネスはどんなものがありますか?

まず、人工衛星から得られるデータにはいくつか種類があり、
位置情報(GPS)や地球観測(天気予報、紫外線情報、防災・被害情報、魚群探査など)などがあります。
そのデータを活用して、日常をよくするためにどんなサービスができるのかを日々模索しています。

具体的にいくつか例をあげると、
 
●「温度や気候や位置情報等」のデータを活用して農作物の管理をするサービス
●「住みやすさ」をいくつかの指標に定義して、人工衛星データから住みやすい場所を探していくという新しい不動産サービス
 ●森林資源が吸収するCO2を人工衛星で観測し可視化していくプロジェクト など。
 
まだまだ、いろんな業界でサービスが展開できるんじゃないかと思っています。

▲衛星データでの森林の炭素固定量の算出

ー1日のスケジュールは?

月曜日から金曜日は7時〜8時に起床。
午前中は考えごとや自分の好きなことをしています。
午後から仕事を始め夕方に食事をとり、大体21時〜23時までオンラインでミーティングをしています。
わたし以外は副業として関わっているメンバーなので、本業の仕事が終わってからの夜の時間と、土曜は朝から夜までミーティングになりますね。日曜日はお休みです。


ーリモートワークが中心とのことですが、詳しく聞かせてください。

出張があるとき以外は、主にパソコンひとつでリモートワークをしています。オンラインの方が、お互いに移動時間を考える必要がなく、効果的に時間が使えると思っているので、仕事はほぼリモートです。
副業で関わっているメンバーにとっても、この形が合っています。
 
ちなみに少し前までは、日本全国で約2ヶ月おきに場所を変えるという、移住生活をしていました。
人工衛星のデータを使ってその時期に自分にとって住みやすい場所を探して、長野県駒ヶ根→北海道小樽市→香川県高松市→大分県別府市→沖縄県恩納村という感じで。
リモートワークだからできる働き方ですね。


ー城戸さんにとって仕事のやりがいとは何ですか?

「全部自分の責任でできること」です。
 
2022年3月までは、会社勤めをしていました。
だから、挑戦をしたときの成功も失敗も上司や会社が責任をとってくれる環境でした。
 
しかし、今は会社を辞めて独立したので、思いっきり挑戦して、思いっきり失敗したら、全部自分の責任なんです。
 全部自分の責任というと、確かにリスクも高いですが、
その分、自由度も高いところがわたしにとってはおもしろくて、ハマっています。
 
ここ数ヵ月、全部の時間を使ってフルコミットで仕事を進めたことで、いろんな企業様とコラボが決まったり、投資家の方が興味を持ってくださったりと、仕事が一気に進んでいきました!


【宇宙に携わるきっかけ】宇宙デブリのニュースと出会ったこと

ー宇宙に興味を持ったきっかけは?

高校生の時は、外交官になりたいと思っていました。
世界を舞台にバリバリ仕事をする女性に憧れていました。
 語学だけでなく、もうひとつおもしろい何か専門性を持ちたいなと探しているときに、ISSに宇宙デブリが衝突するかもしれないというニュースを見たんです。ちょうど、若田宇宙飛行士が搭乗しているときの話です。
 
宇宙デブリとは、使われなくなった人工衛星やロケットの残骸のことです。
当時、わたしが調べた限りでは、日本ではデブリについての研究があまり進んでいなかったのですが、将来的に国際的に協力しながら解決していくことが必要になると思い、スペースデブリを専門にすると決めました。

大学では宇宙工学を専攻し、いろいろな宇宙のイベントなどに参加しました。その際、はやぶさの川口淳一郎先生とお話させていただいたときに、
「宇宙には、もっとおもしろいものがいっぱいある!」と言っていただき、
宇宙のデブリ分野以外にも興味を持つようになりました。


ー幼少期はどんな子どもでしたか?

小学校のころは、内気な性格で1人で絵を書いているような子でした。
中学生のころは、思春期にありがちなことなのかもしれませんが、女友達同士での人間関係がなかなかうまく行かなくて苦労しました。
そのころに、陰でものを言うのが嫌で、言いたいことはハッキリ言うようになりました。
 
高校時代は、個性豊かで自分の考えをはっきり主張できる友人が多い環境でした。その頃の影響で、やりたいことも我慢せずにやる、欲しいものは欲しいという今の性格につながっているように思います。

ー大学生活〜独立前はどんなことをされていましたか?

大学在学中に宇宙広報団体TELSTAR、宇宙ビジネスメディア「宙畑-sorabatake-」を設立しました。
理系の学科に進んだものの数学と物理が大の苦手で、エンジニアとして宇宙に貢献することは、難しいなと感じました。
 
宇宙業界に対して何か貢献できないかと考えたときに、メディアの立ち上げや人に伝えていくことなど、どちらかというと文系の分野のほうが自分の良さを活かせると思いました。
大学卒業後は、「宙畑」をどうビジネス化したらいいかを考えたくて、リクルートに入社し企画職として1年半働きました。その間も、宙畑の運営は継続してやっていました。
 
転職は、さくらインターネット(SAKURA internet Inc.)さんが、新しい衛星データのプラットホームを作るということで、スカウト頂いたことがきっかけでした。そこで、Tellus(テルース)を立ち上げから関わりました。
 
どちらの会社もとても働きやすかったですし、その時の経験が今に活かされています。

▲TELSTARでみんなの夢AWARDフリーペーパー部門にて優勝したときの写真

【チームづくり】さまざまな業界から集まったメンバーが副業という形でチームに関わる

ー仲間を集めるときに大事にしていることを教えてください

自ら主体的に課題を見つけ、取り組んだ経験がある方が仲間になる場合が多いです。というのは、新しい分野に取り組んでいる会社で、創業してから日が浅いのもあり、
決まった仕事というのはないんです。
 
例えば、契約書ひとつでも自分で調べて考える必要があります。
指示待ちで、言われたことだけをするという仕事の仕方は通用しません。


ー副業で取り組まれている方が多いという話ですが、どのような方がいらっしゃいますか?

今は30人ほどのメンバーがいます。
男女比は半々ですが、優しい男性と気が強い女性が集まっています。笑
比較的わたしと同じ年代が多いですが、少しずつ年齢の幅も広がっていて最近は10代のメンバーが入ってきました。職種や専門領域は、バラバラになるように意識をしています。
IOT系の会社の社長をしながら、手伝ってくださっている方もいます。
 
宇宙というと、エンジニアというイメージが強いと思いますが、これから求められているのは、企画ができる人だと思っています。
 また、逆に技術者を採用するときは、オープンマインドでいろんな職種・業種の方とコミュニケーションが取れるかどうかを大事にして採用しています。
 
新しいビジネスを生んでいくには、どんな形の組織がいいのかを日々考えながら仲間を集めるようにしています。


ー副業というのは、新しい働き方ですね。

宇宙ビジネスは、「チャレンジする機会があればやってみたい」という方が実は多いなと思っています。
中学や高校で、宇宙に関わることを諦めた人って多いんですよね。
 宇宙ビジネスがいきなり本業だとハードルが高いですが、副業だと自分が身に付けてきた専門性をどれだけ活かせるのか一度試すことができるんです。
 そういう意味でも、副業という形は他業界の方が宇宙に関わりやすい働き方だと思っています。

▲sorano meのメンバー

ー人や会社などいい出会いをされている印象がありますが、何か大事にしていることはありますか?

いろんな場所に足を運ぶことを意識しています。
 学生時代もいろいろな場所で友達をつくるようにしていたことが、のちにメディア立ち上げのメンバーにつながりました。
今は、宇宙以外の別の領域のコミュニティに積極的に足を運んでいます。
 
あとは、基本的に人が好きですね。 
人のいいところを見つけ、自分のやりたいこととつなげるのが得意なので、
仲間が増えているんじゃないかなと思います。


ーどれくらい新しい出会いがありますか?

1ヵ月で平均30人くらいは新しい方と出会っています。
多い時では1ヵ月に100人の方に出会っています。
すぐに仕事に繋がることばかりではありませんが、
関係を作っておくと、後から何か一緒に仕事ができることもあると思うんです。短期的に考えず、長い目で出会いを大事にしています。


【プライベートについて】自然が豊かなところでパワーを充電。

ーリフレッシュ方法やオフの過ごし方を教えてください。

オフの時は、キャンプやダイビングなどのアウトドアや旅行に行くことが多いです。とにかく、自然が豊かなところが好きなんです。
仕事で東京にいることが多い時は、休日にはできるだけ自然の多いところに行ってリフレッシュするようにしています。
先週もテントサウナをして、水風呂の代わりにそのまま川に入っていました。パートナーもアウトドアが大好きで、一緒に行くことも多いです。

イラッとしたときやもやもやしたときは、広いカフェに行って本を読みます。天井が高く空間も広く空を感じるようなところを選んでいます。
 考え事をするときは、本を読むんです。
一生懸命考えようとするよりも、本を読みながら考える方が捗るんです。
 カラオケに、1人でいくこともあります。笑

▲休日のキャンプ。自然が大好きなんです。

ーパートナーとの関係で大事にされていることは?

会話をすることを大事にしています。
思い込みで話をしたり、一方的にシャットアウトするのではなく、
相手の言うことを聞いて、自分の思っていることもちゃんと伝えるようにしています。
だから、感情的に喧嘩をしたことはないんです。


【これから宇宙を目指す方へ】自分の得意な領域を活かしてどんどん宇宙業界へ!

ー今後の目標をきかせてください。

今、この組織を100人 規模にしたいと思っています。
100人の経験と、宇宙で得られたデータや技術が重なることで、おもしろいサービスが生まれると思うんです。
 
社名でもある、「sorano me(ソラノメ)」は、「宇宙の目」と「宇宙の芽」の2つの意味をかけています。宇宙業界を新しい”目”で、事業の”芽”を育てていくという意味です。
 前職から関わっている「宙畑」も、いろんな事業の種が植えられている場所という意味で”畑”という言葉を入れました。
 
今は、事業の”種”の段階が多いですが、それぞれの事業が成長し”花”や”実”のステージにしていきたいですね。


ー最後となりますが、宇宙業界を目指している方へのメッセージをお願いします。

宇宙は、エンジニアだけの業界ではありません。
活躍できる領域はとても幅が広く、多様性に富んでいると思います。
 自分の得意な領域を生かして、どんどん宇宙業界に入ってきて欲しいなと思います。


UchuBizで「コスモ女子 宇宙のお仕事図鑑」の連載が2023年12月から始まりました!

城戸彩乃さんの最新の記事はこちらからご覧ください。

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〇宇宙のお仕事図鑑とは?

このプロジェクトのきっかけは、「宇宙関係の仕事につきたかったけど、宇宙飛行士や天文学者しか知らなかった。」という声がコスモ女子のメンバーからたくさんあがったことでした。
宇宙のお仕事図鑑では、宇宙関連のお仕事をされている方々に取材をした記事を発信していきます。
文系の職種も理系の職種も(文理で区分する必要もないかもしれません)、大きな組織の中でのお仕事から、宇宙ベンチャーや個人でのお仕事まで、「宇宙のお仕事」をこのnoteで発信していきます。

〇コスモ女子とは?

「コスモ女子」は、宇宙業界で活躍したい女性中心のコミュニティです。

宇宙に関する知識を身につける「宇宙の基礎講座」や、宇宙に詳しくなくても楽しめる交流会などのイベントを毎月開催!

コスモ女子から発足した、コスモ女子アマチュア無線クラブが人工衛星を2024年に打ち上げる予定です。

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