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宇宙ベンチャーの挑戦を資金面から支える財務の仕事。

北原 明子(きたはら あきこ)

【プロフィール】
株式会社ワープスペース 取締役副社長 CFO(最高財務責任者)
2021年5月に株式会社ワープスペースに入社。株式会社ワープスペースに入社以前の約29年間は米系および仏系資本の金融機関東京支店の証券部門に所属。前職はクレディアグリコルグループ(フランス系金融機関)のエグゼクティブディレクター。在職中に営業部の設立を3度経験。また、金融法人営業にてESG投資の営業企画のほか、女性活用推進のグローバルなネットワークを設立。社内外のSDGs活動の普及に貢献。 趣味は、旅行、アート、音楽、身体を動かすこと。





【仕事内容】光通信衛星サービス実現のための資金調達が仕事

ー今のお仕事内容を聞かせてください。

株式会社ワープスペース(“ワープスペース”)という宇宙ベンチャーの財務の責任者をしています。役職で言うとCFO(Chief Financial Officer)です。

ワープスペースはつくば発の宇宙ベンチャーで、人工衛星向けの通信インフラ事業の構築を目指しています。

通常、人工衛星は地球上にある地上局と直接通信をしているのですが、
今のやり方では、通信できる時間帯が限られており(※)、必要なデータを全て受けとるのに時間がかかるという課題があります。
(※地上局の上を衛星が通る間のみ通信が可能なため)

この課題を解決するためのサービスが、ワープスペースの光通信技術を用いた、宇宙空間での光即応通信サービス「WarpHub InterSat」です。宇宙業界はどの会社もそうかもしれませんが、最初に膨大な設備費用がかかります。
その中で大事になってくるのが、財務の仕事です。

財務とは、会社全体でどれぐらいお金が必要なのか、全体を見ながら計画を立てて実行(資金調達)していくことです。資金調達の仕事を簡単に言うと、会社を売り込んで投資してもらうこと。何人もの投資家と会い、事業を支援してもらうのが主な仕事です。


ー1日のスケジュールは?

過ごし方は時期によっても、日によっても違いますが、打ち合せがメインです。

調達プロジェクトがスタートする前は、ワープスペースの事業をご理解いただけるように、資料の作成。調達プロジェクトがスタートしてからは、投資家の方への状況報告や関係構築のやりとりが中心となります。

月に3~4回はつくば本社に出社しますが、会社に行ってもほとんど会議です。それ以外は、在宅もしくは都内で打ち合わせをしています。

投資家の方はほとんどが日本にいらっしゃいますが、一部海外にもいらっしゃるので、打ち合せするときは時差の関係で深夜になることもあります。外出や打合せが多く、社内のメンバーと交流する時間が限られているので、出社時は、一緒にランチに行くなど交流を図るようにしています。


ー仕事のやりがいは?

まだ世の中にはない新しい価値を作りあげていくことに、やりがいを感じています。

今取り組んでいる光通信サービスが実現すると、私たちは24時間365日いつでも衛星データを地球上で活用できるようになります。地球観測衛星からの情報が早く得られることで、減災や安全保障にも役立ちます。
また、月ゲートウエイ(月を周回する宇宙ステーション)や月・火星探査が進んだ時に、探査機のリモート操縦や宇宙飛行士とのやりとりにも貢献できるかもしれません。

必要な資金を調達し、実際に事業を実現化していく。
そのプロセスに醍醐味があります。

チームのメンバーにもとても恵まれています。
経歴も背景も専門分野も異なるメンバーで、活発なコミュニケーションを通じて同じ方向をむいて仕事を進めていけることにやりがいを感じます。


ー大変だと感じることは何ですか?

前例のない事業なので、投資家の方へ説明をする際に事業内容が伝わりにくいなと感じることはあります。

まず、「宇宙分野が今後どうなっていくのか?可能性は何か?」を1つ1つ説明し、その中でワープスペースの光通信衛星サービスがどんな役割を果たしていくのかを伝えていきます。必ずしも、相手の方が宇宙に詳しい方とは限らないので、わかりやすく伝えていく工夫が必要です。価値が伝わったときは、とても嬉しいですね。

また、私のキャリアで、宇宙分野の仕事はワープスペースでの業務が初めてです。1つ1つ宇宙分野の勉強しながらの仕事で、やっと慣れてきたかなという感じですね。
大変だなと感じることもありますが、楽しみながら仕事をしています。

▲ オフィスで仕事中の北原さん


【きっかけ】宇宙ビジネスへの興味と働き方の両面で、自分に合っていた。

ー金融・財務関係の仕事に関わることになったきっかけを教えてください。

国際経済学を専攻していましたが、就職活動当時は金融系に絞っていたわけではないんです。ただ、就職活動の中で、当時の総合職は24時間会社に捧げるような働き方をしていることに疑問を持ちました。

そんな中で、外資系の企業は性別関係なく対等で、メリハリのある働き方をしている、という話を大学の先輩方から聞き、面接を受けに行ったのがきっかけです。


ー今の仕事についたきっかけを教えてください。

一言でいうとご縁でした。
当時のCEOがCFO候補を探しているという話を友人が同窓会できいて繋げてくれました。宇宙は興味がありましたので、とりあえず話をきいてみるという軽い気持ちで面談をしました。
ただ実は、当時親の介護をかかえていたので、介護と両立できる働き方は大きかったです。

もう1つの理由として、宇宙産業のビジネス面に興味があったこともあります。
政府主導でやっている宇宙産業が、民間の事業としてどのように成り立つのか関心がありました。それなら、宇宙企業に入社して中から現状をみて、自分が一緒にチャレンジしてみよう、って思ったわけです。
自分の興味・関心と働き方の両面から入社を決めました。


▲ リモートでの全社ミーティングの様子


【プライベートについて】食も趣味もなんでも試したいタイプです

ーリフレッシュ方法やオフの過ごし方を教えてください。

親の介護に集中していた頃は、あまり趣味に時間を割けていなかったんです。最近になってゴルフを再開しました。

休みの日は、友達と食べ歩きをして楽しんでいます。
ジャンルは問わず、自分へのご褒美的な高級な料理からB級グルメまで、何でも好きです。お酒も好きで、特にワインと日本酒が好きです。料理に合わせてお酒を選んで飲んでいます。人に会って話をしながら、美味しいものを食べるのが何よりも活力ですね。

サンバをやっていて、浅草のサンバカーニバルにも出場していました。音楽が好きで、ラテンだけでなく、クラシックも好きですね。ジャズバーにもよく行きます。

▲ 社内メンバーとランチの様子


ー子供の頃〜学生時代はどんな子でしたか?

スターウォーズや銀河鉄道999など宇宙を舞台にした映画等をよく観ていました。

あとは星を見るのが好きだったので、なんとなく宇宙に興味はありましたね。どうやったら宇宙に行けるかということも考えていました。
でも当時は、宇宙に行くには宇宙飛行士になるしかないと思っていたので、宇宙旅行は夢の世界でした。

大学は、得意の英語や国語を活かし、国際政治経済学部に進学しました。
自分で言うのも何ですが、大学では優等生キャラクターで、所属していたテニスサークルでも真面目に黙々と練習していました。学生時代の友人とは今も親しく交流をしています。


【これから宇宙を目指す方へ】

ー今後の目標をきかせてください。

現在、準備中の光通信衛星の初号機「LEIHO」の打上げを最短で2025年に予定しています。まずはその打上げを成功させることですね。

また、ご支援してくださっている投資家の方々に、光通信サービスの実現を見せたいです。ただ、衛星を打ち上げて満足するのではなく、事業としてきちんと顧客ニーズにお応えすること。そして、宇宙業界をリードするサービスとして育てていくことが大事だと考えています。

それから、わたし自身としては、縁の下の力持ちとしてしっかり会社を支え続けることです。ワープスペースの事業には大きなビジョンがありますが、その挑戦には資金が必要です。
エンジニアや事業開発を担当する方が仕事に集中できるように、わたしは財務のプロとして資金面を支え、事業を成功に導いていきたいと思っています。


ー宇宙業界を目指している方へのメッセージ

宇宙に興味がある方は、ぜひどんどん手を上げていただけたらと思っています。

宇宙業界の良いところでもあり課題だなと思っているところは、元々が政府主導の業界であるため、内輪でまとまる傾向にあるなということ。
仲がよいという意味では長所だと思いますが、広くいろんな業界の方が参入しやすい環境ではないですよね。もっと色々な分野の方に参加してほしいですし、それが宇宙業界の発展に繋がっていくと思っています。

宇宙業界と一言で言っても、ワープスペースのような通信業もあれば、製造業や輸送業といった様々な産業、職種があります。現在のお仕事を宇宙というフィールドに視点を変えて、ドアをたたいてみて欲しいと思っています。

ーありがとうございました。


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〇宇宙のお仕事図鑑とは?

このプロジェクトのきっかけは、「宇宙関係の仕事につきたかったけど、宇宙飛行士や天文学者しか知らなかった。」という声がコスモ女子のメンバーからたくさんあがったことでした。
宇宙のお仕事図鑑では、宇宙関連のお仕事をされている方々に取材をした記事を発信していきます。
文系の職種も理系の職種も(文理で区分する必要もないかもしれません)、大きな組織の中でのお仕事から、宇宙ベンチャーや個人でのお仕事まで、「宇宙のお仕事」をこのnoteで発信していきます。


〇コスモ女子とは?

「コスモ女子」は、宇宙業界で活躍したい女性中心のコミュニティです。

宇宙に関する知識を身につける「宇宙の基礎講座」や、宇宙に詳しくなくても楽しめる交流会などのイベントを毎月開催!

コスモ女子から発足した、コスモ女子アマチュア無線クラブが人工衛星を2024年に打ち上げる予定です。

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