見出し画像

いくら丼は、やっぱり貴方と食べたい。

気がつけば、クリスマスイブですね。

そうそう、無事タイから帰ってきました。渡航前から体調不良だったのですが、渡航中は奇跡的に治まってくれていました。空気読んでくれる私の身体、ありがとう。そしてパートナーの性別適合手術は、無事成功しました。

渡航中の話はまた今度書こうと思うのですが、今日は私がいくら丼を渡航前に家で食べて泣いた話をお届けします。

前回書いた通り、パートナーは先に渡航し、手術中は私は同行しないスケジュールでした。前泊入院していた時に電話したんですが、明日が手術だという緊張感はお互いありませんでした。

でも、当日に「今から手術に行ってくるよ」という連絡が写真付きで来た時に、急に不安になってしまったんです。

・写真にうつるなんて書いてるかわからない言葉
・管がたくさんついた身体
・ストレッチャーに乗せられた本人

ああ、今からこの人は今から、海外で大きな手術をするんだと実感をした瞬間でした。

手術は日本時間のお昼12時ごろからはじまりました。6時間で終わると聞いていたのですが、18時になっても終わったとの連絡が来ず、私はどんどん「不安」に心が支配されていくのを感じました。まるで、真っ黒の墨汁を零して真っ白の半紙にじわりと染みができていくような。

「もしこのまま良い連絡がこなかったらどうしよう」と何度も考えてしまいました。

それから40分が経ち、同行してくれていた友人から「無事に戻ってきた!」と連絡が入りました。「痛みと寒さはあるものの意識はあるよ」と聞き、ひとりで私はボロボロと泣いてしまいました。

その夜、私はいくら丼を食べました。パートナーが渡航前に食べたいと言い、家で解凍していたものだったのですが、本人が体調不良のため冷蔵庫にずっと残っていたのです。

美味しいはずの宝石の粒のようなそれは、ひとりで食べても全然美味しくなかった。「錦糸卵といくらを一緒に食べると美味しいね」と笑う貴方がそばにいないと、意味を持たないのだとその夜何度も思ったのでした。

もし手術が失敗していたら、もう一緒に食べることはできなかったのだと思うとまた泣けてきてしまい、いくらの味なんてまったくわかりませんでした。

本人に事の顛末を伝えると、「一人で食べて泣いてたの?可愛いねえ。」とまるで他人事のように笑うから、私は怒る気力も無くしました。

帰国後、いくら丼を一緒に食べて、「やっぱり貴方と食べると美味しい」と言うと、なんだか得意げになって笑うから、私もたまらず笑ってしまいました。

幸せに味があるとするなら、きっとそれは記憶が大きく影響するのだと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?