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電通本社ビル売却!?歴史に学ぶ、不動産賃貸業の底堅さとは

電通が本社ビル売却を検討しているという記事(※2021年1月21日時点)が出ましたが、不動産業者視点でのお話をお聞きしたいです。

引用元:Yahoo!ニュース(ニッポン放送)
電通、本社ビル売却検討 3000億円規模……「テレワークのしやすい最大手の会社というイメージ」辛坊治郎が言及
https://news.yahoo.co.jp/articles/b8f2c29722828189ba18067df056e138fadd4c68

 まず、「売上」という部分ですが、このコロナ禍の中では、正直メディア系は結構厳しいと思います。自粛により「イベントが少ない」ということは、イベントのタイミングで広告を出す広告業界にも影響があります。
 この間、エイベックスも本社ビルを売却していましたし、ニュースにあるように電通も本社ビルを3000億円で売却検討など、ファンドが買うような金額で、日本の優良型不動産をどんどん売り出しています。
 ただ、メディア系に限らず、コロナで今はどの業界も景気が悪くなっています。そんな中で、エイベックスにしても電通にしても、良かった点は不動産を持っていたこと。もし、本社ビルを自社で持っていなければ、今回のようなピンチの時に売ることができませんでした。
 私が不動産をやっている理由も、「家賃収入が入らない」「事業が上手くいかない」「銀行もお金を貸してくれない」となった時に、不動産を売れば20億〜30億円になるからです。別に不動産がやりたかった訳ではないです(笑)。
 本業の事業が潤っている時に、別でどう不動産を持っておくかというのは結構重要です。コロナになってから、いろんな経営者が副収入として「不動産で家賃収入を得よう」としていますが、考え方は正しいけれどタイミングが悪いです。
本業が傾いている時は、銀行は融資をしてくれません。本業の業績が上がっている時に、バックボーンとして不動産を持っておくのが大事です。私も、最初はバックボーン作りとして不動産をやり始めました。

 こういう仕組みというのは、歴史の勉強をするとよく分かります。不動産賃貸業の歴史は、江戸時代の長屋から始まります。当時は呉服屋さんなどが地主の場合が多く、長屋を人に貸したりと、賃貸業を行なっていました。今でも伊勢丹という大きなビルがありますが、伊勢丹も元は呉服屋さんで、賃貸業もやっていたので、呉服が売れなくても今の時代までずっと生き延びれました。
伊勢丹のデパートに行っても、着物をたくさん売っているわけではありませんよね?

確かに、あまり見かけませんね。

 なぜ着物が売れないのに、「伊勢丹」という大きな建物があるかというと、つまりは「デパートを建てられる大きな土地を持っていた」ということに繋がります。他の長く続いている会社も、大体が裏で賃貸業やっています。
 この間、野田に物件を見に入った時に知ったのですが、野田はキッコーマンの工場がたくさんあります。その近くに、水上アスレチックなどがある「清水公園」というすごい大きい公園があるんですよ。その公園の土地は、実は全部キッコーマンが提供していました。そういう何千坪という土地を提供できるということは、賃貸業をやっているに決まっています。

 そのような「担保にできる不動産」を持っている事業者というのは、景気の浮き沈みはコントロールできませんが、「今」を乗り切るぐらいであれば不動産を売ることで、逆に手元の資金をプラスにすることができます。考え方としては、電通にしてもエイベックスにしても同じで、手元の資金を増やして不景気を2〜3年で乗り越えられれば良いのです。
 まあ実際は「有事の際にみんな不動産を売り出す」というのは、最終形態なので景気としてはかなり悪い状態なんですが、不動産を持っていなければ、即潰れるか、銀行にお願いするという他力本願になってしまいます。不動産を持っていない人が銀行にお願いして断られたらそこで終了ですが、不動産を持っている人は物件を売ればいいだけです。

 個人でも、そういう考え方で不動産を持っておくのはいいと思います。「いきなりリストラになった」「こどもの大学資金でお金が必要になる」など、なんでもいいのですが、そういう時に家賃収入で賄えるなら不動産を持っておけばいいし、大きいお金が欲しいなって思ったら売ることができます。

今回のニュースを見た時に、「電通は倒産するのかな」って思ってしまう人はいると思いますが…

 不動産を持っていなければ倒産しますが、売れる不動産があるのですぐに倒産はしません。ただ、コロナの影響だけでなく、今までテレビ局で牛耳っていたマスメディアがYouTubeや個人に移りつつあるので、電通などのメディア系は厳しい状況になっていくとは思います。テレビ局の収入が落ちる=広告収入も落ちるということなので。
 まあ、電通ぐらい大きければ、本社ビルを売却してまとまったお金を得られるので、すぐには倒産はしませんし、新しい事業もできると思います。

本社ビルを3000億で売却した場合、誰が買うんでしょうか?

ファンドですね。3000億円で買って、3500億円とか4000億円で売るんです。私たちのやってる不動産とはまた違います。ただ、肝入りのビルを売るというのは究極で、本当に経営が厳しいのだと思います。コロナの影響がそういう「ギリギリなところまで来ている」ということですよね。

 話は少し逸れますが、「銀座シックス」も中国からの観光客向けでオープンしましたが、14店舗撤退してしまいました。インバウンド目的で、新しいビルで良い場所、銀座の一頭地で商売をした訳ですが、今はもう人がきません。リスクヘッジというのは、大体どこも半年くらいしか持ちません。「銀座シックス」はその「半年」を使ってしまったから崩れ出しました。
 去年半年で崩れなかった理由は、単純にコロナ融資で延命できただけです。「コロナ融資の半年」と「リスクヘッジの半年」で1年延命できましたが、1年以上コロナが続いてしまったので、もうゲームオーバーです。
 銀座シックスに限らず、飲食業などのテナントは他でも撤退しているところはあるでしょうね。ランドマークも一時退去するところが出ていて、今は止まりましたが、またここから退去するところは出てくると思います。
 街の様子や、ニュースを見たりして、今の実際の状況というのを考えておいた方がいいです。株価だけで判断してしまう人もいますが、この「実際の立ち位置」を見れているかどうかで全然違います。自分の目で見て「あ、なんか閉店増えてきたな」など、そういうところから「今どうなっているんだろう?」と調べていくと、いよいよ危なくなってきたというのが分かります。

最近「街が暗いな」と思っていたんですが、そういうことも関係あるんですね。

 まぁ、町が暗いのは夜8時で店を閉めてるからだと思いますが(笑)。今回のコロナで、「不足の事態が起きたら潰れていく」というのがみんな分かったと思いますので、コロナが明けたら、融資が下りやすくなったタイミングで不動産を買って、家賃収入などの副収入を得る道を確保した方がいいと思います。「何かが起きる前に、十分な備えをする」というのが、大事なポイントです。

動画はこちら!
「穴澤勇人のMIQTV」
電通本社ビル売却!?歴史に学ぶ、不動産賃貸業の底堅さとは
https://www.youtube.com/watch?v=n9OIGrZp3js&feature=youtu.be

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