白杖使用者の日常―外出時の困りごとのひとつ&ありがたい声掛け

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大変、嬉しかった手引き集

また、外出の際に困ることのひとつ

外出の際の困りごとのひとつー移動時間の読み

私は、外出の際、電車に乗る必要がある時は、よほど慣れた道筋でない限り、大抵の場合、駅員介助のお世話になる。
電車、どこのホームのどこで乗るか、降りたらどこに着くか、そこからどう駅構内を移動するか、これらは白杖歩行者にとっては難所。
なので、最寄り駅の有人改札へ行って、「〇〇駅まで行きたいのですが、案内をお願いします」と。
すると、駅員さんたちが連絡し合って連携し合って、目的地までの移動を助けてくれる。

ただ、駅員介助は本当に大変ありがたいのだが、これは白杖歩行のどんな乗客が何時の何号車のどこに乗り、何分のどこに着くという綿密な連携が駅員さんたちの間で行き届いていないと、乗り継ぎ駅で電車を降りる時に駅員さんに見つけてもらえなくなってしまうので、しっかりと連絡手続きをとる。

そのため、もし行き先に約束の時間や目当ての時刻などがあると、移動時間の計算が非常に難しい。

まず、最初の最寄り駅でも、まずは到着駅に連絡してくれるようで、そこから手が空いている駅員さんがいれば早速案内してくれる。
が、これが例えば都心の新宿駅などであった場合、最初のホームに案内していただくためにも、窓口で駅員介助をお願いして数十分単位でその場で立ち尽くして待ったことがあった。
眼だけではなく身体全体に負担や疲労がかかる視覚障害や眼球使用困難症、平衡機能障害など身体機能障害もある場合は、大変な話である。
私も頭がくらくらしながら倒れそうになりながら待ったことがあった。

そして、ホームへ行ってから、駅員さんは、ここでもって初めて乗客をどの列車のどこに乗せることができるか確実になるため、ホームに着いてから到着駅へ連絡を入れる。そのため、最寄りのホームに着いてから、通常はホームに入ってくる電車を2,3本見送る。
そして中継駅があると、しかもこれが会社の違う線であったりすると、更にややこしい。
駅員さんは自社の駅構内しか基本的に移動できないため、例えば私の最近の話では、私鉄に乗って秋葉原駅でJR線に乗り換えるという時、秋葉原駅に着いてから、私鉄側の秋葉原駅の駅員さんが電車からJR線の改札まで連れて行ってくださり、そこでJRの駅員さんに引き継がれる。
そして、会社が違う場合は更にここで、またここで初めて乗るかのように、改めて到着駅との連携手続きがとられるらしい。
そのため、中継駅でかなり待つことがあり、その上、ホームまで行って、また目的地の駅に連絡して確実な情報を伝えるため、2,3本見送る。

中継駅が多ければ多いほど、そこで駅員さんを待ったりホームの度に2,3本は見送ることになるので、大抵15分×中継駅数は見て家を出る必要が。
しかし、そんなことをすると下手をすると1時間2時間多く見なければならない可能性があったり、行ってみたら案外スムースに中継してくださって、目的地に着いてから1時間くらい時間が余ったり…
それでいて、白杖使用者は、目的地の駅から好き勝手に歩いてみたり手ごろなカフェなどの店をその場で見つけるということができないので、時間調整もできない。
とかく、移動時間の計算というのが、難しい。

ここ2週間で、私は眼科病院の診察を受けるため、2週間に2度、御茶ノ水駅へ行った。
この時、1度目は、9時半に着くつもりが、秋葉原駅での乗り継ぎに3本ほど見送り、ここで乗れたのが何と40分発の電車となってしまった。それまでも前の駅でも予測より2本ほど見送ったので、押していた。
駅員さんに、「今から2本先の40分発の電車でご案内しますね。」と言われたとき、「…40分…そう…ですか。」と…しかも目的地の駅で人と待ち合わせをしていたので、しかしホームを細かく時々移動したりするし、操作に時間がかかって手間取ったりすれば予定の電車すら逃してしまうかもしれない、携帯電話を取り出して連絡していいですかと聞くことはできなかった。
そして駅員さん、私の様子を何か察したのか、「まあこちら都合で申し訳ないのですけど、どうしても手配の都合上時間がかかってしまう時があります。」と。
…それはわかっているから、だいぶ早めに出てはいるのですが…ね。

そして、2度目に行くときは、実は最寄駅から御茶ノ水までは通常で行けば20分ほどで到着する距離なのだが、9:15に到着するために8:25くらいに最寄りの改札で駅員介助をお願いした。
そして、最寄りで、「できれば9:10くらいには着きたいのですが」と、伝えてみた。
すると駅員さん、少々驚いた口ぶりで、「現在8時半前ですよ」
…そうか。駅員さんの感覚では、途中の中継駅でどれくらいまた手配に時間がかかるかなどわからないから、当然余裕で着くだろうと思ってしまうのか。
以前それで難しかったから、伝えてみたのに。

2度目は、しかし、中継駅で思ったよりスムースに乗り継ぐことができ(それでも2本見送ったが)、ぎりぎり9:15くらいに駅に到着することができた。
ただ、まあ通常20分程度の距離を40分見てぎりぎりだったので、まあ普通に、中継駅1つでも、倍はかかっているわけだ。

移動時間は、悩みが多い。


視覚障害者が嬉しいと感じた配慮

同じこの道中での帰り。
確かまず御茶ノ水駅で乗るとき、若く溌溂な声の女性が案内してくださったのだが、今までで一番と言って良いほど感激した。
一番最初に、「あ、こちら側でよろしいですか?」と確認しながら白杖を持っていない方の手で腕に掴まらせてくださり、歩いているときにも適宜、「ここ真っ直ぐ進んでいきますね」
そして、とても嬉しかったのが、
「エレベーターと階段とエスカレーターがあるんですけど、どれがいいですかっ?」
なんと!こういう率直な私の意思の汲み取り方をしていただいたのは初めてに近いかもしれない。
ただ、実は私は私で(病院の診察での疲れや少々衝撃を受けた傷心もあって)、「あ、どれでも大丈夫です。」などと答えてしまったのだが、すると、
「あ、ではエレベーターでご案内しますね。エレベーターの乗り場がここから一番近いので。」
…すごい。理由つきで状況を説明してくれた。
駅員介助をお願いしたとき、どれでも大丈夫だというような答え方をすると、「ではエレベーターでご案内しますね」と言って、思いっきり駅構内の端っこまで歩いて行ってエレベーターに乗せてくれるような場合は多い。
あとは、一番多いのは、まず「どれがいいか」は尋ねられず、近かろうが遠かろうが人が多かろうがエレベーターを何台か待とうが、黙ってエレベーターで案内してくださる、ということが私の体験上は一番多い。

そして、ホームに行ったとき、「あ、ではここで少し連絡をしますのでお待ちください。あ、よかったらここ、持っていてください」と、そこにあった手すりに何気なく触らせてくれ…
駅員さん同士の連絡が終わってしばらくしてからも、「あのー」と声をかけてくれ「今、電車、ちょっと遅れてまして…。今、〇時〇分なんですが、この次に来る電車で、ご案内しますね。」

更には、
「一応、一駅(御茶ノ水~秋葉原間)なんですけど、座られますか?それとも、手すりのところで立って行きますか?」

もはや、完璧としかいいようのない手引きに感動してしまった。
しかも、この率直、素直に「これとこれがあるけど、どうしたいですかっ?」という感じで聞いてくれるこの気持ちよさ。

あまりに嬉しくて、病院の診察で傷心していた分、秋葉原駅までのたった一駅、遮光グラスとマスクの裏で文字通り涙が溢れてしまった。


更に追い打ち。秋葉原駅で。
私鉄に乗り換える時、私鉄の改札からホームまで案内してくださった駅員さん、こちらは初老の男性のかただった。
物腰柔らかく丁寧に案内してくださり、優先席に座らせてくださり、私が「ありがとうございました」というと、「いえいえ、とんでもありません。それでは。」…で去っていくかと思いきや、更に一言、私の耳に真っ直ぐ向かって、「お気をつけて。」
「ありがとうございました、助かりました。」と、本当にお互い一期一会を大事にして、案内をしていただき、挨拶することができた。
また涙に溢れたのだった。


…実は御茶ノ水駅での病院を出て、距離としてはすぐそこの御茶ノ水駅に行くまでの話なのだが。
少し広いスペースで、強い風にも煽られながらふらふらと探っていると、飄々とした声のおじいさまから「どこに行かれますか」と聞かれ、「JRの御茶ノ水駅に行きたくて」
「JR御茶ノ水駅ですか。方向はどちらかわかっておられますか?」
「あ、こっち(指さす)であってますか?」
「ぴんぽんです!ではどうぞどうぞ」
という会話で腕を差し出してくださった。
これだけでも面白かったのだが、横断歩道で、
「あ、今ね、青がてんめつしてますから、ちょっと待ちますね。」
「残念だけれどちょっと立ちっぱなしで待たないとね」
というような…。

そして
「ここは良く来たことあるんですか。頭にもう地図が入ってる?」
「いえ、実はまだ2度目で…」
「ああそりゃ大変だ。僕目が開いててもわかんないもんな。」

その後も横断歩道で
「ああ、大丈夫。普段の感覚で歩いて大丈夫ですよー」
「ああ、それ(白杖の先)で細かいところもわかるんだ。あ、こういうざらざらしたのもわかるんだな。勉強になります。…あ、もしかしてこれ(ブロック)辿った方が良いかな?次来た時のために…頭の中で地図、できるもんね」
と、ブロックを伝って一緒に付き添ってくれ、

「もうすぐ改札なので右に直角に折れるんだけどね、ちょっと短くする?ね、ショートカット(笑)、とくれば、またブロックあるから、はい、それでここ、もう一番右の窓口のある改札です。」
「ああ、わかりました、ありがとうございました。」
「ああ僕、結局何もしなかったみたいだ(笑)」
「いやいや、ありがとうございました、本当に助かりました!ありがとうございました。」

なんて、病院の衝撃の直後の私をなんとも見事に引き上げるために待っていて下さったまるで道化師のような、そんな素晴らしい出会いもあったのでした。

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