視覚障碍者の日常ー金銭管理・部屋の整理編

なかなか、行動を共にした周りの人や、レジ対応をしてくれる店員などからまでも、「おもしろい」「すごい」「これは便利だ」などと声掛けをいただくので、そうか、プライバシーに関わる部分でもあるし、確かに街中で滅多に見かけるものではないなと思ったので、今回、少し紹介してみようかと思ったものがある。

視覚によって情報判断が困難な人の、金銭管理について。
特に、普段の買い物などにおいて。

もちろん、やり方や使っているものも人によってバラバラであろうが、私が近年、使い慣れているものを。
これが、周りの人たちや店員にもなかなか反応されるものなのだが、私は少し特殊な構造をもった財布のお世話になっている。

長財布の形なのだが、中を開くといくつもの仕切りがある。
写真で見えるかどうかはわからないが、まず札入れだけでも、中で更にひとつ仕切られ、更にその壁側が2段階ほどのポケットになっている。
私はこれはしていないのだが(長さで判別できる上、そもそも長距離移動をほとんどせず必要性がないことから何枚も入れて持ち歩かないため)、紙幣も2か所か3か所に収納場所を分けることができ、場所で覚えておくことができるわけだ。

そして、真ん中の小銭入れも、大きく2つにわかれている。
その中でも小銭専用に作られているのが、銀色の金具のついているポケット(これが面白がられるので後ほど紹介する)。
仕切られたもう一方も、私はカードや名刺、現地で探すことが難しいため一時的に場所をわけておきたいもの(例えば今から行く店で使うカードなど)を入れておくことで活用している。

写真で言うと一番下だろうか、壁側にカード類を入れることのできるポケットが6か所、更にその後ろ側にカードより面積の広いものを挟むことができるようなポケットになっている。
更にカード類を挟むポケットの前側にも紙幣入れと同じだけのスペースがある。

視覚情報で見分けることが難しい、時間がかかるなどの場合は、とかく、同じ場所にカードや紙幣を何枚も収納していたりすると、区別がつかず、探り間違いも多い。
(ちなみに私は、普段良く使うクレジットカードにのみ角に点字シールをつけている。自分で判別するためにいろいろなカードにつけたいところではあるが、そうするとそれはそれでいちいち読み分けている時間はないし、判別しづらくなってしまう)
そのため、これは視覚認識に頼らない系統の人たちに案外共通するところだと思うが、とにかく場所で覚える。
部屋の収納などにおいても、とにかく定位置を決める。これが命綱で、視覚障碍者の部屋は恐らく整理整頓が(得意かどうかは別として)しっかりしている場合が多いのではないかと思われる。
私はシェアハウスの隣人に、人間力が高い・几帳面だ・何かをくれと言ったらすぐに出てくる(私だったらちょっと一日待ってなどと言うが、と)・そもそも人を自室に入れることができる時点で驚きだなどと言われるが、そもそも全てを定位置通りに戻しておかねば、自分で置き場所がわからなくなってしまい、目の前に探し物が放り出されていたとしても長年見つけることができなくなる(その上に見つけた時にそれが何かすら判別できなくなる)可能性があるわけだ。
私の場合はそれでも、かなりの時間帯的制限やゆっくり認識をしていく必要があったとしても事務作業をするくらいの視覚認識は使うことができているので、これでも一時的に別の置き場に物を置いたりすることもあり、整理は悪い方かもしれない。

ちなみに共用部の調味料などは、点字テープがついていること自体が私の「私物」である目印、できる限り容れ物の形状などで記憶はしているが、点字テープではしっかりその物の名前を打ち込んで貼っている。
シェアメイトはなるべく物の定位置は動かさないようにはしてくれるのだが、良くあらゆるものがあらゆるところに置きっぱなしになっていたり、シンクやシンク横に洗い物の食器や牛乳パックなどが置いてあることがある。
これは私は触れるや否や自動的に近い勢いで片づけてしまう。細々あれこれと紛らわしいものが置いてある中で作業することは、私には難しい。その理由までは気付かれていないようだが、そういうものを置きっぱなしにしておくと私に勝手に片付けられていることを、シェアメイトたちは良く知っている。


さて、脱線してしまった話を戻すが、面白がられるのは小銭入れだ。

金具が留めつけてあり、レールが4つある。このレールに、小銭を種類別に入れることができる(1レール5枚ほどは入る)。
一番左から、10円玉、50円玉、100円玉、500円玉。
くだらない付け加えをしておくと、これは大きさ順ではなく、値(金額)順である。50円玉より10円玉の方が横幅は広い。
実はたまに指で探って少し面積が広いからと無自覚に判断し左から2番目のレールに入れようとして入らない…とやることがある。
全てのレール、その小銭しか入らないよう、ぎりぎりレールを通るように作られている。
ただし、唯一の難点は、5円玉と1円玉のレールがないこと、そして、5円玉と1円玉が出てしまった時にレールの近くに放り込んでおくと、なかなか隙間や金具横についている小さな皮の部分に挟まってしまうことが多く、探せなくなったりする。
そのために隣のポケットに入れておけば良いだろうが、という話かもしれない。現段階では、私は小銭の扱いを極力少なくするためカード使用に逃げてしまう傾向があることと、隣のポケットに入れたら5円玉と1円玉の存在自体を忘れる、隣のポケットは既に別の用途に使っているなどの理由において、結局金具の脇に注意深く放り込んでいる(挟まるほどであるため、まとめておいておけば逆に中で暴れなくて済むという見方もできる)。

これは日本点字図書館の商品だが、ここでは、この金具の部分のみ(また、少し形を変えるなどして)、つまり小銭入れだけの商品もある。


しかし、バリアフリーの工夫というのは、往々にして多くの人々に役立つ場合が多いものである。
レジで財布を開けても財布の中が薄暗くて見えにくい、時間がかかるという人や、目や指や判断能力の低下(瞬時に判断できないなど)などによって小銭入れから適当な小銭を選び出せず、レジにざーっとあけたり定員さんに選び取ってもらったりするお年寄りなどもいる。
また、私などもその例だが、この財布を使い出してから、小銭を極力少量になるよう自然と工夫をするようになった。これは、大量の小銭をつい持ち歩いてしまう人や店側にとっても、有益だろう。

更には、これらが点字図書館にしかなく視覚障碍者関係しか認知がないような商品ではなくなり、一般向けにも流通していけば、商品自体もだんだんとリーズナブルなものとなり、”こういうものでなければ困る”という事情の強い(そして社会経済的にハンディのある)人々も、手が届きやすくなるのではないだろうか。商品ができても、本当に必要な人たちに手が届かなければ本末転倒であるのだから。
同時に認知度が高まれば、ハンディキャップと言われる系統の人たちや年配者の得手不得手、必要なことなどが自然に認知されるようになり、バリアフリーや助け合い・補い合いの輪が底上げされていくだろう。


今回は、最近周りから面白がってもらい話題になる「財布」の角度から膨らませてみた。
他にも紙幣の見分け方・ATM・携帯電話画面操作の決済・近年急速に増えている電子画面セルフレジなど、もちろん金銭管理でなくとも、話題があればぜひお話かけいただければ、私個人の角度から一例として、また多く聞く傾向など、記事にしてまいりたいと思います。

皆様も漏れずそうだと思いますが、日常的にネタは大量に転がっていることはわかっているのですが、あまりに当たり前に転がり過ぎており、なかなか自力でピックアップして記事にするということが難しいものです。
ご興味のことは何でもお声かけいただけたら幸いです。

また、マイノリティに関する話題においては、ご興味がありましたらこちらにもまとめておりますのでぜひ。


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