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ウクライナ戦争と核の危機 ~ ネオコンの恐るべき戦略を暴く(1)

 今、私たちは核戦争の危機にさらされています。6月1日、バイデン大統領とNATO事務総長が、アメリカとNATOが供与した兵器でウクライナがロシア国内を攻撃することを容認する報道がありました。このような攻撃が行なわれれば、ロシアは核攻撃を行なうことを1月に発表しているので、棄権極まりない挑発です。日本はNATO加盟国ではないけれど、敵対国家に指定されているので、攻撃対象になってしまいます。このことを懸念してツィートしている大統領選立候補者は、ロバート・ケネディ・ジュニア氏だけ….😱😱😱

ネオコンはプーチンなめすぎ🥶 映画「終わらない週末」より

 キューバ危機に匹敵するような緊迫した情勢下であり、ウクライナ戦争を正しく理解するため、急いで今回の記事をまとめました。
 ジェフリー・サックス博士はコロンビア大学の経済学者で、長年にわたりロシアなど各国政府の経済政策のアドバイザーを務めるなど、外交官的な役割も果たしてきました。彼は米政府の内情にも精通しており、その発言は信頼性が高く、この対談で語られていることには、多くの驚くべき内容が含まれています。
 ソ連は日ソ不可侵条約を一方的に破り、軍事侵攻した信用できない国という嫌露感情はひとまず横において、私はこの対談を繰り返し傾聴しました。冷戦後から今日までのネオコンの外交戦略を知ることで、ロシアとウクライナ戦争の争点をとらえなおすのに、とても有用な情報です。本当は文字おこしをしたいところですが、2時間半の長尺なので概要をご紹介したいと思います。

ネオコンとは何か

アメリカ新世紀プロジェクト(PNAC ピーナック)

 本題に入る前に、用語について説明をしておきます。ネオコンとは、アメリカ新保守主義という政治理論で、強力な国際的指導力を持つアメリカを支持し、外交政策や国際的な安全保障において積極的な姿勢を取る立場を表しています。
 このネオコンのシンクタンクが、「アメリカ新世紀プロジェクト(PNAC)」で、メンバーは政治家、専門家、ロビイスト、メディア関係者と緊密なつながりを持っており、民間団体ながら米政府に大きな影響力をもつ政策提言を行いました。この本部は、ワシントンDCのアメリカ・エンタープライズ研究所と同じビルにありました。
 ネオコンの中心的な文書「アメリカ防衛力の再構築 Rebuilding of America's Defenses(RAD)」(公開日:2000年9月1日)には、アメリカ一極支配を維持するための政策が記述されており、第三次世界大戦を誘発しかねない内容は、ヒトラーの「わが闘争」に匹敵するとも言われています。2006年以降、PNACは「外交政策イニシアチブ the Foreign Policy Initiative (FPI)」というシンクタンクに引き継がれましたが、2017年に活動停止が発表されました。

 以下、サックス博士の対談では、ネオコンがアメリカの外交政策とウクライナ戦争にどのように影響を与えてきたかを明確に示しています。彼らのイデオロギーと戦略は、世界の安定と平和を損なう結果を招いていることを読み取っていただければと思います。

ウクライナ戦争はどのように始まったか

ロシアの封じ込め

(4分~)サックス博士は、地政学的戦略家のズビグニュー・ブレジンスキーが著書『世界はこう動く The Grand Chessboard』(1997年)で、黒海地域でロシアを包囲するためのNATO拡大案を提示したことに言及しています。この戦略は、ユーラシアを支配するためにウクライナとジョージアをNATOに加盟させることを目指していました。黒海を封じ込めれば、ロシアは何もできなくなり、アメリカが一極支配を実現できるという考えです。

ブレジンスキーは、NATO拡大のタイムラインを以下のように示しました。
1990年代後半:中央ヨーロッパのハンガリー、ポーランド、チェコ
2000年代初頭:バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)
2005年~2010年:ウクライナ

 ネオコンは、この長期プロジェクトを実行してきました。アメリカが超大国として、自分たちの意図通りに行動することを基本としているのです。

だまされたロシア

 ゴルバチョフやエリツィンは冷戦を終結させ、ワルシャワ条約機構を解散し、平和と協力を望んでいました。しかし、ネオコンはNATO拡大戦略を続け、コソボ紛争後に南東ヨーロッパ最大のNATO基地が建設されました。さらに、2002年にはアメリカが弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM)から一方的に脱退し、核の安定剤として機能していたこの条約を無効にして、ポーランドとルーマニアにミサイルを配備しました。2004年には旧ソ連側の7カ国がNATOに加盟しました。

 2000年代初頭、プーチンは親米・親ヨーロッパ的な立場を取っていましたが、2007年のミュンヘン安全保障会議でアメリカとNATOの不誠実さを非難し、ウクライナへの拡大をやめるよう求めました。(※下の動画はミュンヘン演説。日本語字幕あり)

 2008年、ヨーロッパ各国の指導者たちは、ウクライナをNATOに加盟させることはロシアにとってレッドラインであり、ロシアの国境を脅かすことは望んでいないと表明しました。しかし、ブッシュ・ジュニア大統領はウクライナのNATO加盟を推進し続けました。これはネオコンの外交政策の基本方針であり、アメリカが唯一の超大国として一極支配を実現しているという信念に基づいています。アメリカは自国の意図を強行突破しようとする姿勢を貫きました。

ウクライナ戦争のはじまり

キエフで政治活動家にお菓子を配るヌーランド国務次官補(ネオコン)

(20分~)2013年末、ウクライナの世論はNATO加盟よりも中立的立場を望んでいました。このため、ヴィクトル・ヤヌコビッチが大統領に選ばれました。しかし、ヤヌコビッチはネオコンの標的となり、アメリカはウクライナの危機を扇動してクーデターを引き起こしました。ヤヌコビッチはロシアに亡命し、アメリカは瞬く間にウクライナ新政府を承認しました。これがCIAの政権転覆の典型的な手法であり、ウクライナ戦争の始まりでした。

ミンスク議定書による停戦

 この戦闘はミンスク議定書の調印によって一時的に停戦しました。しかし、ドイツのアンゲラ・メルケル首相が後に語ったように、停戦期間はウクライナが軍備増強するための時間稼ぎにすぎませんでした。主にアメリカがウクライナに兵器を供給し続けました。

2021年12月、バイデン大統領とプーチン大統領のオンライン会議の後、ロシアは米露安全保障協定の草案を提出しました。その核心となる部分は、NATO東方拡大の停止でした。

【草案 第4条】
アメリカ合衆国は、北大西洋条約機構(NATO)の東方方向への更なる拡大を排除し、以前はソビエト社会主義共和国連邦の加盟国であった同盟諸国への加盟を認めることを拒否することを約束する。アメリカ合衆国は、旧ソビエト社会主義共和国連邦の加盟国であり、NATO加盟国ではない国の領土に軍事基地を設置したり、いかなる軍事活動を行ったり、二国間軍事力を発展させるためにそのインフラを使用しない。

米露安全保障協定の草案 2021年12月15日

 この時、サックス博士はサリバン大統領補佐官に電話をし、NATO拡大が米国の安全保障のために必要ではないこと、そしてロシア国境に触れることは第三次世界大戦を招く可能性があると忠告しました。
 しかし、アメリカはロシアに対し、「NATO加盟国とNATO加盟を希望する国との間の交渉であり、第三者はいかなる利害関係も持たない」と回答しました。この立場は、ロシアの安全保障上の懸念を無視するものでした。

ウクライナ軍事侵攻の再開

 2022年2月20日、ミュンヘン安全保障会議で、カマラ・ハリス副大統領がゼレンスキー大統領に直接会い、NATO加盟を促すような発言は、ロシアにとってレッドラインを超えたものでした。4日後、ミンスク合意が履行されていないことを理由に、プーチンはミンスク合意を破棄し、ウクライナへの軍事侵攻を再開しました。これにより、ウクライナ紛争は新たな段階に入り、国際社会に深刻な影響を及ぼしています。


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ジェフリー・サックス博士 経歴

ジェフリー・D・サックスはコロンビア大学の教授であり、持続可能な開発センターの所長です。2002年から2016年まで同大学の地球研究所所長を務めました。国連持続可能な開発ソリューションネットワークの会長、エネルギー転換技術者協議会の共同議長、国連ブロードバンド開発委員会の委員、バチカンのローマ教皇庁社会科学アカデミーの会員、サンウェイ大学のタン・スリ・ジェフリー・チア名誉特別教授を務めています。3人の国連事務総長の特別顧問を務め、現在はアントニオ・グテーレス事務総長の下でSDGアドボケートを務めています。ハーバード大学で20年以上教授を務め、同大学で学士号、修士号、博士号を取得しました。サックス氏はこれまでに41の名誉博士号を授与されており、最近では2022年 持続可能な開発賞、フランス共和国大統領令によるレジオンドヌール勲章、エストニア大統領による十字勲章を受賞しています。最近の著書には『グローバリゼーションの時代:地理、技術、制度』(2020年)と『持続可能な開発のための行動倫理』(2022年)があります。

#アメリカ新世紀プロジェクト

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