人を「褒める」ということ
【褒め方一つで成長する子としない子に別れる】
スタンフォード大学心理学教授キャロル・ドゥエックが思春期初期の子ども数百人を対象に実験を行なったものがあります。
実験内容は、非言語式知能検査のかなり難しい問題を10問してもらい、終わった後で褒め言葉をかけるという実験です。
まず、褒める前に生徒を2つのグループに分けます。
①その子の「能力」を褒めたグループ
「8問正解よ、よくできたわ。頭がいいのね。」
②その子の「努力」を褒めたグループ
「8問正解よ、よくできたわ。頑張ったのね。」
自分には何か優れた才能があると思わせないように、問題を解く努力をしたことだけを褒めるようにしています。
グループを分けた時点では両グループの成績は全く変わりませんでした。
しかし、褒めるという行為を行った直後から、両グループの間に差が出始めたんです。
能力を褒められた子どもは次に取り組む問題を選ばせると新しい問題を避けるようになりました。
ボロを出して自分の能力が疑われるかもしれないと考え、怖くなってチャレンジしなくなってしまいました。
一方で、努力を褒められた生徒の9割が難しい問題にチャレンジするほうを選び、学べるチャンスを逃さなかったことがわかっています。
しかし、褒め方一つでそんなに変わるものなのか?
ドゥエックは両グループにさらに難しい問題を出し反応を調査しています。
すると、能力を褒められたグループ<能力群>の生徒たちは、問題が解けなくなることで、自分はちっとも頭が良くないと思うようになりました。
頭がいいから問題が解けたという理論は「解けないのは頭が悪いからだ」ということにもなります。
そして、努力を褒められたグループ<努力群>の生徒は、なかなか解けない問題に対しても「もっと頑張らなくちゃ」と考えたそうです。
解けないことを失敗とは思わず、自分の頭が悪いからとも考えませんでした。
あなたは何か難しい問題に直面した時、どんな感情が湧き上がってくるでしょうか。
「ドキドキ」「ワクワク」「ムズムズ」「イライラ」いろんな感情があると思います。
実際、難問を出されたあと〈能力群〉の生徒たちは「面白くない」と答えるようになりました。
問題が解けなかったことで「自分の評価が下がってしまう」と考えれば楽しく取り組むことができません。
逆に努力群の生徒たちは難題を出されても嫌になったりせず、むしろ難しい問題のほうが面白いと答えたそうです。
そして最終的には能力群の生徒たちは落ち込み、やさしい問題を出されても成績が回復することはありませんでした。
結局、自分の能力に自信がなくなり、スタート時よりも成績が落ち込んだそうです。
一方で、努力群の生徒の出来はどんどん良くなっていきました。
難問に挑戦したことでスキルが磨かれ、やさしい問題が出たときはスラスラと解けるようになっていたんです。
ドゥエックは「この調査は知能検査の問題を用いて行っているので、能力を褒めると生徒の知能が下がり、努力を褒めると生徒の知能が上がったことになる。」と言っています。
また、調査員たちが「別の学校でも同じようなテストをするので、その学校の生徒にどんな問題が出たか教えてあげてください。」と言って紙を配ります。
その紙には自分の得点を書き込む欄も作っておいたそうです。
何が起こったかを言えば、能力群の生徒の4割近くが、得点を高めに偽って書いたそうです。
能力がアイデンティティと深くつながっている子にとって、間違えることは恥ずかしいことなんです。
「頭が良い」といわれることで、その子は自分を賢く見せようとそんな行動に出てしまったというわけです。
新しいことに「チャレンジしない」、「失敗を恐れる」といった傾向がある場合は、私たちがどのように自分を認めているのか、どのように人を褒めているかを見つめ直す必要があるのかもしれません。
今回はここまで
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