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そうか。の話

ドラマ嗜好が私とほぼ同じのららみぃたんさんが初めての企画を開催したので、彼女を応援したくて記事を書くことにした。

ららみぃたんさんが記事で紹介している「一元観」という言葉は、ネットで検索してもひとつのサイトしかヒットしないので、恐らくリンク先のサイト主の個人的な造語なのだと思われる。「一元観」の意味は仏教用語で言うところの「非有非空ひうひくう」のような意味だろうか。

ひう‐ひくう【非有非空】 の解説
仏語。 いっさいのものは、有るのでもなく無いのでもない、いずれにも偏らないものであること。 中道。

goo国語辞書
※ 私は文学として般若心経を理解しようとしている

簡単に言えば「あるっちゃーあるし、ないっちゃーない」みたいな意味である。例えば
①ただの岩を指して「これ呪いの岩だよ」と聞かされて動揺する
②それを聞かされていない人(あるいは気にしない人)から見ればただの岩
みたいな。①の人にはその岩は禍々しいものに映るだろうし、②の人にはただの岩に見える、でもそこにあるのはどうであれただの岩、という話である。
突き詰めればこの思想は仏教で言うところの[空]=[悟り]に繋がる。

この話はややこしく、日本酒一升では足りないくらいなのでこの辺で止めておく。

今日は「一元観のエピソード」、つまり「見方を変えたら意識にパラダイムシフトが起こったお」という私の体験談を書こうと思う。

その時私は、当時婚約していた彼が運転する車の助手席に座っていた。車は首都高を北に向かって走っていた。助手席から空を見ると、夕空に紫色の雲が横に長くたなびいていた。

私は長いこと母と確執があった。けっこう深刻な確執であった。

私は母から愛されていないと思って生きてきたし、いらない子だったという推測はとうに確信に変わっていた。私の心はずっと棘が刺さったままだった。

私はその心の痛さを覚えながら、ぼんやりと紫色の雲を眺めていた。高速道路の外灯がまだ明るさを残す夕暮れに溶け込んでいた。

私は母のことを考えるのはもう止めようと決めた。こんな心の痛さはいつまでも抱えているべきではない。この痛さは、不満から来るものだ。不満?私はいったい、何に不満を感じているんだろう。ああ、母から愛されていないことか。いらない子と思われていることに対して不満なんだ。

愛されたい。私の存在を認めて欲しい。
これが満たされていないから不満に思うんだ。もう、与えられないものを求めるのは止めよう。求めることが、満たされない状態を生むのだもの。

もう、愛されたいなんて思うのは止めよう。
認めて欲しいなんて求めるのは止めよう。

手放すと楽になる。これは本当だ。愛されたいという気持ちを手放したら、いつまでも抜けなかった棘があっという間にするりと取れて、心が全然痛くなくなったもの。同時に、私の心の中に余裕が生まれた。

そうだ。手に入らないのなら、いっそのこと私が与えればいい。愛されないなら、私が愛せばいい。そうだ。私がただ母を愛せばいい。それでいいじゃないか。

そう思った瞬間だった。

あ、私、母から愛されてたんだ。

理由もなく、直感的にそれを理解した。
今まで私は何を見てきたんだろう。何を知ったつもりになっていたんだろう。私はいつも愛されていた。ただ、私の理想の表現ではなかったけれど。母は母のやり方で私を愛してくれていた。ああ、そうだ。そうだったんだ。

私の中に、ものすごい勢いでパラダイムシフトが起こった。

長いこと、本当に長いことずっと冷たい石を抱えていると思っていたのに、そうではなかったと気がつくのは一瞬だった。空にたなびく雲は、紫色のまま形も変わっていなかった。

欲しいものは欲しいと思っているだけでは手に入らない。欲しいなら、与えることだ。与えれば手に入る。誰かに優しくされたいなら、誰かに優しくすればいい。愛されたいなら、愛すればいい。ああ、わかってると思っていたのに。知っていることだと思っていたのに。

こういうことだったのか。
こういうことだったんだ。

この経験は人生の中でトップクラスに入る感動体験だった。
その後私は、心に決めたとおり母を愛した。すると、長いこと冷たく感じてきた母の態度が変わったように見えた。相変わらず愛情表現は不器用だったけれど。それからしばらくして母の病気が見つかり、親不孝をしてきた私は母が旅立つまで、遅れを取り戻すかのように全力で母に尽くした。冥土の土産に持っていけるのは、きっと「この人生で良かった」という感覚だけだろう。ならば、目を閉じるその瞬間まで、そう思えるように全力で思い出作りをしよう。

母が生きを引き取る直前に私はずっと言えなかった一言を告げた。

「私、お母さんの娘で良かったよ!」

母が驚いた顔で私を見た。
そして、息を引き取った。

あれはどういう意味の驚きだったんだろう。
「え、私、そんなこと言われるほど死にそうなの?」ってことだったのか「え、おま、それ、いまゆう?」みたいな驚きだったのか。

真相はわからないけれど、伝えられてよかったと思う。
これから生きていく私自身のために。

#一元観エピソード #ららみぃたん好き #ららみぃたんやさしい #サムネは美瑛


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