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資生堂クリエイティブで学ぶこと❷

『あいだにあるもの〜資生堂のクリエイティブワーク series.1』

先日、銀座資生堂ギャラリーで開催されている『あいだにあるもの〜資生堂のクリエイティブワーク series.1』を観に行って来た。

https://gallery.shiseido.com/jp/exhibition/6201/

資生堂の1970年代の男性物広告、香水広告を中心にクリエイティブワークの一端を紹介する企画展である。
懐かしさは勿論だが、広告と言うものがグラフィックデザインの中心であった時代にポスター、雑誌広告、CMにこれ程、パーパス完成度の高い企業も稀有であった。

展示作品を見ているうちに資生堂クリエイティブ時代にデザイナーとして制作で携わっていて、思い出されたのは、ポスターのB0、B1サイズでは縦横サイズで比率も違う。雑誌では各雑誌によってもサイズが違って来る。
その為、同画面で絵柄、モデル、商品の線数(解像度)を変えてレイアウトしたり、色は合わせて基本4C➕特色10Cを使いテスト刷りプロトタイプで視覚的距離感を確認する。
印刷所での夜中までに及ぶ刷りだし確認は毎回の恒例だ。
その時に印刷職人さんたちの技術力にお目に毎回学ぶことがあるのだ。
出稿雑誌だけでも50〜100雑誌は有るのでパターンを変えてレイアウトする。
時に雑誌社の印刷所まで出向き、刷りだし確認を行なった。


これを全国の人に見られるとなるとほんの少しも手を抜けない、文字による一文字の詰め具合も微妙に変える。
未だMacが無い時代は全てが手作業であった。
しかし道具はMacに変わり、操作、作業形態は違ってもその集中力は変わらない。
むしろ研ぎ澄まされて来たかもしれない。

資生堂クリエイターのdestiny


成果物は単なる制作物ではなく、「作品」としての意識が自然に身に付いているのだ。
そして、各々自分の成果物の全てが「企業資料館」や「アートハウス」に保管される。これは後世にまで残るのだと思うと中途半端な仕事は許されない。
これはまさに資生堂クリエイターのみのdestinyで有る。

今回の企画展を鑑賞して、「広告」としての役割を終えても鑑賞し続けられるだけの普遍的な表現になるかを改めて考えさせられたのだ。
これは「文化性」でも有るが、その先には広告を世に送り出す企業のカンパニープライドも有る。

太田和彦氏、十文字美信氏のトークショー

「異端の資生堂広告」


その日の夕方には、大先輩の太田和彦氏、カメラマン十文字美信氏によるトークショーも行われた。
太田さんは今や「居酒屋評論家⁈」としても有名になられているが、宣伝部時代のクリエイターとしてはとても厳しいデザイナー。
「反資生堂スタイル」と言われたダイナミックな表現は「異端の資生堂広告」とも呼ばれたが、資生堂デザインの強さを持ち続けた革新でもあった。

会場には資生堂クリエイティブ時代の懐かしい人達が多く来られていて嬉しかった。
今は皆其々が異なる道を歩んでいても、あのひと時、資生堂のクリエイティブの一端を担っていた仲間たちなんだと思い出された。

現在、未来と形は変わって表現も異なって来るだろうが、この『美意識』の礎は微塵も崩れてはならないのだと改めて思う。
其れこそ、資生堂のクリエイティブプライドなのだ。


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