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みずほ銀行に勤めている◯年前の私へ(新入社員研修編)

「大丈夫?!そのスキル、銀行を辞めた後で1回だけ役立ちます」

この時期、新たに社会人になった人は会社で新入社員研修を受けているかもしれませんね。

私の時も二週間ほど、合宿形式で研修がありました。

研修で学んだ内容はすっかり忘れてしまいましたが、覚えているのは二つ。

一つは毎朝、小椋佳さんの歌で起こされること。「シクラメンのかほり」や「愛燦燦」等の作詞作曲で知られる小椋佳さんは当時は現役の銀行員。

そのご縁なのかと思いますが、「ハート  トゥ ハート、ルルル ハート トゥ ハート♪」という歌声が合宿所のスピーカーから流れていました。

そして、もう一つ覚えているのは札勘の練習。

札勘とはお札を数えること。お金を扱う銀行員の基本スキルとして、札勘の練習が毎日ありました。

とはいっても、実際のお札を使うわけではなく、模擬紙幣と呼ばれる練習用のお札を渡され、縦読みと横読みを1回ずつやって、100枚を束にするという練習があったのです。

なんてったって、私は手先が不器用。制限時間があるのに、指が早く動かないし、扇のようにばっとお金を開いて、バサッ、バサッとお金を数えていく横読みでは、そもそもお金が扇状に開きません(汗)。

特に模擬紙幣は本物のお金と比べると、手が滑りやすいので、たいへん苦労しました。

この札勘は10月ぐらいに試験があったので、支店に配属された後も、私を苦しめることになるのですが、とにかく私はこの札勘が嫌で嫌でしょうがなかったです。

このような訓練を経てなんとか身につけた札勘の技術ですが、どうも全世界共通という訳ではありません。

ある先輩が、アジア開発銀行という国際的な金融機関に出向している時、同僚の前でこの札勘を使ってお金を数えたところ、周りの人は怪訝そうな表情。扇のようにサッとお金を広げて、どや顔の先輩に対し、「だからなんなん?」という反応だったそうです。

つまり、そこで働く他国の銀行員にとってはお金を必要とするところに、お金を出すか出さないかをきちんと判断することが本分であって、お金を早く、正確に数えられるかどうかは、本筋ではなかったのです。

また、海外の銀行に出向している時に私が同僚に聞いてみても、「札勘なんかやったことがない」という回答。さすがに支店の窓口業務につく社員の人はお金を数える練習があるそうですが、融資業務やディーリングなどを行う社員はそもそも研修プログラムにすら入っていないとのことでした。

日本の場合、野球で言えば「玉拾い」からスタートすることが多く、本質的でないことも修行の一つとしてやるべしという風潮が強いです。

もちろん、どんな仕事からでも学ぶべき点があるのは事実。しかしながら、特に非製造部門の仕事の生産性が世界的に見ても低い日本では悠長なことを言っている状況ではありません。

また、銀行という業界に関して言えば、世界的なレベルから見ると、日本の銀行は出遅れている部分が多々あります。今でも札勘の練習が銀行の新入社員研修に入っているのかどうかは知りませんが、もし入っているとしたら、本当にやるべき項目かどうかを一度見直す時期に来ています。

ちなみに、私が「苦労しながらも札勘を練習してよかったなぁ」と思ったのは一回だけあります。

クライアントさんがある商談で決済代金を現金で受け取ることになり、元銀行員の私を見込んで、「一緒に行ってお金を数えるのを手伝ってほしい」というご依頼がありました。

日頃たいへんお世話になっている方なので、お引き受けし、その場で札勘を披露して決済代金の金額が間違いないことを確認。そのクライアントさんからは、たいへん感謝されました。

まぁ、時間対効果で考えると、微々たる効果ですが。

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