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インテリアデザイナー兼宅建士が思うコロナ後の住宅・オフィス・店舗それぞれのあり方。

大都市圏を除く地域では緊急事態宣言が解除され、経済活動も少しずつ動き出してきたというニュースも耳にすることが多くなりました。
政府からも「新しい生活様式」が打ち出されていますが、感染拡大が落ち着いてきても、前のような状態に戻ることはなく、これからは新しい意識・常識の中で生きていくのだろうなと感じています。
前は当たり前だったのに、電車の隣の座席に座られると、今では「・・・近い」「やだなぁ」って思ってしまう。。人間って意外と早く慣れるものですね(笑)

私の住む東京では、まだ緊急事態宣言下にありますが、先週末、仕事で新宿に出たところ、ゴールデンウイークの頃よりも人が多くなった印象がありました。
それでも、デパートは軒並み休業中だし、コロナ前の人の多さに比べたら、3~4割程度でしょうか。

新宿に行ったのは、マンションの販売センターへ向かうためだったのですが、販売センター自体は緊急事態宣言が出てからクローズしていて、お客様の来場はゼロ。
契約済みのお客様の設計変更期限が迫っているので、通常は対面で各種の資料やサンプルを見せながらおこなう打ち合わせを、ご自宅にいるお客様に対して電話で説明し、メールで図面や見積を送る→電話で確認して修正→メールで送る・・・を繰り返すという方法でやむなく打ち合わせした次第。。

資料を見せれば「これです」って一言で伝えられるものも、電話だと言葉を重ねて説明しないと伝わらない。なんだかなぁ・・・って気分にさせられる打ち合わせでした(大手の販売会社さんですが、営業活動自体はストップしているので、オンライン接客などの仕組みがまだ導入されていないのです)。

住宅について

今まではお客様に来場いただき、モデルルームを案内するという対面接客が当たり前だった、住宅の販売方法も今後変わってくるでしょう。
一部では、オンライン接客やテレビ電話でのモデルルーム案内を始めた会社もあると聞いています。
洋服や家電だけでなく、家もオンラインで買う時代になるのかもしれませんね。

近年、マンションの販売方法も少しずつ変わってきています。
今までは、物件ごとに建設地の近くにプレハブの販売センターを建てて、その中にモデルルームを作るというやり方でしたが、複数物件を扱う常設販売センターの中に共通コンセプトルームを作る方法とか、モデルルームは作らずVRやCGのみでご案内するという方法も出てきています。

お客様にとっては、その物件の中で一番広いタイプの住戸をオプションだらけで豪華に作られたモデルルームを見るよりも、自分が実際に買いたいタイプの住戸をVRで見られる方がイメージがしやすいようです。モデルルームを作る費用が浮く分、物件価格も少しは下がるわけだし、お客様にとっても良い傾向なのかもしれません。

販売側にとって、モデルルームはお客様の買いたい意欲を高めるツール、夢を与えるものでしたが、消費者の意識が変わってきて、豪華なモデルルームを作る販売方法は時代のニーズに合わなくなってきたのかもしれません。

この数年は特に、狭くても高くても都心・駅近物件の人気が高まっていましたが、コロナ後というかウィズ・コロナのこれから、テレワーク化の流れは戻ることはないでしょうから、住む場所に求められる条件も変わってくるはずです。

通勤しないなら、会社の近くでなくても、駅近でなくてもいい。
在宅で仕事をするなら、家の中に仕事スペースが欲しい。

つまり、これまでよりも、広さ・間数が求められる傾向に変わっていくのではないかと思います。
住む場所も、都心人気一辺倒から郊外や地方へ、より分散傾向が強くなるでしょう。
テレワークによって勤務地にとらわれず、住む場所も自由に選べて、生活スペースと別に仕事スペースがある、広々と暮らせる家のニーズが高まると考えられます。

オフィスについて

この数年、空室率が低く賃料も高騰していた都心のオフィスですが、テレワークによって社員全員を収容できるスペースはもはや必要なくなるわけですから、縮小していく流れになるのではないでしょうか。

実際、渋谷にオフィスを構えるIT系企業でオフィスの解約が出たり、縮小の相談が多くきているというニュースも目にしました。
東京のオフィス賃料、高いですからね・・・先行き不透明な今、固定費として経費の多くを占める家賃は削りたいものNo.1だと個人的にも思います。

コロナ前のオフィスデザインでは、社内にカフェスペースを設けたり、自由にくつろげるラウンジスペースを設けたりと、おしゃれなオフィスが増えていましたが(私もそのようなオフィスの家具コーディネートのお仕事をしたことがありますが)、社員が会社に来ないなら必要のないスペースなわけで、そういったお仕事は少なくなっていくのかなぁと思っています。

店舗について

コロナで一番影響を受けたのが、対面販売の店舗ではないでしょうか。
飲食業はもちろん、アパレルを初めとした物販も、接触が避けられない美容業やマッサージのお店なども、これからの店舗に求められる要件は全く違うものになっていくと思っています。

「新しい生活様式」などと言われていますが、飲食はテイクアウト中心へ、物販はオンライン化への流れは確実に強まっていくでしょう。
ニュースのコメンテーターの方が言っていましたが、「実店舗で買い物をすることがとても贅沢な経験になる時代になる」そうです。
おしゃれな実店舗ではなく、おしゃれなホームページ(オンラインショップ)と出荷用倉庫(または厨房)があれば良い時代になるかもしれませんね。
不動産屋的目線で見ると、飲食は都心から住宅地へ、物販は都心店舗から郊外・地方の倉庫へという流れが起きるかもと予想しています。

これまでの店舗デザインは、限られた空間の中に、いかに効率的に無駄なく一つでも多くの座席やブースを配置するかを求められることが多かったですが、これからはソーシャルディスタンスを保てるかがデザインの絶対条件になっていくでしょう。

飲食店において、エアコンの風の流れの方向で感染した人としなかった人に分かれたという論文がアメリカのCDCから発表されたそうで(エアコンの風上のテーブルに感染者がいて、風下のテーブルに座っていた人だけが二次感染したそうです)、これからの店舗デザインはエアコンの風の方向まで考慮して、テーブル等の配置を考えなくてはいけなくなるのか・・・と少し怖くなりました。

私の前職でもある美容業界は、テレワーク化することができない仕事で、お客様との距離も近く、接触が避けられないお仕事です。
美容業界の中でも美容室は、髪を切らないわけにはいかないので、来店頻度は低くなるかもしれませんが、店舗としてなくなることはないと思います。

一番影響を受けるのが、私の専門だったネイルではないかと。
長時間、対面で手を取る仕事ですから、美容業の中でもお客様との距離が最も近い仕事ですし(まつ毛エクステやフェイシャルエステもかなり近いですが)、そもそもお出かけしたり、会社に行かないならネイルをする必要性も減りますしね。

美容業界出身なこともあり、美容系サロンのデザインのお話はよくいただくのですが、美容室ならセット面の間隔を広く取ったり、お客様同士でも、お客様対スタッフでも、これからはソーシャルディスタンスが保てるような空間づくりをしていかないといけないのだろうと思います。

今現在、私のような個人でやっている事務所は、お客様も個人経営や小規模な企業様が多いので新規案件のお話が出る余裕もなく、大変厳しい状況にあります。
これまで、住宅のデザインも、店舗やサロン、オフィス、ホテルなどのデザインも、様々な分野のお仕事をしてきましたが、「人が集まる」ことが少なくなるこれからは、店舗系よりも住宅系のお仕事の方が多くなるのかなぁなどとも考えています。

今日は、私の頭の中のたわごとをつらつらと書いてしまいました。長文お読みいただきありがとうございました。

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