魔法が解ける瞬間
魔法が解ける瞬間
「無双モードの選手が負ける瞬間」を僕はこう呼んでいて、いつかこの魔法について書きたいなと思っていました。
まさかこのタイミングで書くことになろうとは…
思いの丈を吐き出さなければ、何も手に就きません。しばしお付き合い下さい。
「魔法が解ける瞬間」
桜庭和志がヴァンダレイシウバの膝に沈んだ時も
ヒョードルがヴェウドゥムに一本取られた時も
アンデウソンシウバがワイドマンにKOされた時も
ロンダラウジーがホリーホルムに失神されられた時も
全て魔法が解けた瞬間です。
今回のRIZIN18は…
(…心の整理はまだですが認めざるを得ませんね…)
堀口恭司の魔法が解けた瞬間でした。
連勝続きの選手を観ている時、ファンというものはどこか夢見心地になるものです。
それは皆が無双モードの選手に「魔法をかけられる」からだと思っています。
その魔法はファンだけでは無く対戦相手、セコンド、関係者全員を巻き込む程強力なものです。
連勝が続けば続く程、より深く心に入り込みます。
勝てる訳が無い
そもそも弱点なんてあるのか?
負けるところなんて想像出来ないから、どう勝つのかしか気にならない。
といった具合にです。
「勝負事に絶対なんてない!」という自明の真実をどこかに置いてきてしまうのです。
そして魔法が解けた瞬間から堰を切ったように僕も含めたファンやプロも、皆が口々に分析を始めます。
大抵の場合、それがコロンブスの卵的な分析だという事は中々ありません。
実は魔法が解ける前から分かっている事だったりします。
つまり「分かっていても出来ない」から「魔法」なのです。
対戦相手は必要以上に幻想を抱いてしまうもので、何か一つの技を必要以上に警戒してくたら、それこそ相手の思う壺だったりします。対策をしているつもりでも研究すればするほど相手の掌の上という状態です。
「戦う前から勝負は始まっている」とはよくぞ言ったもので
「戦う前から魔法の掛け合い」をしているのだと思います。
今回の朝倉未来選手の作戦は、今までの堀口恭司の対戦相手であったプロ選手ならある程度考えていたものであったと思います。
当たり前ですがそれらを実行出来るかは別の話で
その点、朝倉陣営が素晴らしかったのは一足先に行われたRIZIN17での「朝倉未来VS矢地祐介」から、じっくり時間をかけて堀口恭司の魔法を解く準備をしていた事ではないでしょうか。
まず、
①この試合の展開は未来選手の予想通りになり「未来選手の戦略の正確さ」が証明されます。
②その知将未来選手が弟の海選手に授けた戦略も信頼出来るもののハズです。
③インタビューなどで揺さぶります。
「弱点を見つけた」→軽くとはいえ手を合わせた事で真実味が増す。
「ビビらない」→あの兄にしてこの弟あり。これも真実味があります。
ファンの間でも「これはもしかするぞ!?」という空気が流れます。しかし何だかんだで「堀口恭司が勝つ」という見解は変わりません。
まだ僕たちの魔法は解けていませんでしたが
少なくとも海選手の魔法は解けていたのでしょう。
逆に兄・未来選手により強い魔法をかけられていたハズです。
「俺は堀口恭司に勝てる!」と。
天性の勝負勘と度胸とが相まって起こした結果は、決してラッキーパンチなどというものでは無かったと言えます。
しかし、こんな事も、試合が終わり魔法が解けた状態だから言えるのであり、堀口恭司圧勝を予想する方が理にかなっています。試合前に理をひっくり返すような自信を練習と戦略で構築した朝倉兄弟には脱帽するしかありません。
一方の堀口選手はこれからが大変だと思います。本人は一流のアスリートですから頭の切り替えは僕らが心配する必要もありませんが、魔法が解けた堀口恭司の対戦相手は「俺も勝てる!」という強い気持ちで向かって来るからです。
逆に朝倉海選手はやり易くなるハズです。彼の対戦相手には「朝倉海には堀口恭司を倒した右がある」と強烈に刷り込まれたでしょうから。おいそれと踏む混む事が出来なくなり、右を警戒してくれれば他の技も入りやすくなります。まさに掌の上状態です。
つまり、
今回の対戦は「堀口恭司の魔法が解けた」と同時に「朝倉海の魔法がかかった瞬間」でもあると言えます。
ダイレクトリマッチになるかどうかは今の時点で分かりませんが、一度かかった魔法は簡単には解けません。
堀口選手は釣りでもして、ゆっくり心と体を休めて頂きたいと思います。ファンはいつまでも待っています。
さて…
堀口恭司の敗北、それ事態はとてもショックな出来事でした。
しかし
同時にRIZINのストーリーとしては愕然面白くなってきたと思いませんか?
かつてマットセラに魔法を解かれたジョルジュ・サン・ピエールはより強くなって、より強い魔法をひっさげて誰も到達したことの無い高みまで上り詰めました。
魔法が解けたからこそ見える堀口恭司の底力と復活劇が楽しみです。
自信を付けて別人のように成長する朝倉海と誰が彼の魔法を解くのか…
ダイレクトリマッチで堀口恭司があっさりと解いてしまうのか?
もしくは四天王の誰かなのか?
素晴らしい勝ち方をしたビクターヘンリーなのか?
朝倉海と接戦を演じたアンゴラ番長なのか?
ワクワクしますよね?
「日本格闘技界を盛り上げる」
堀口恭司の言葉に偽り無し!です。
魔法はいつか解けるもの…
その都度僕らは格闘技の残酷さを思い知り、
嘆き、
うちひしがれ、
また新たな魔法にかかり…
というような事を繰り返して行くのだと思います。
多分、ジジイになっても懲りもせず続けているでしょう。
格闘技って本当に面白い!
最後になって申し訳ありませんが朝倉海選手、本当におめでとうございます‼️
あなたは文句無しに強かった‼️
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