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【組織論】グループダイナミクスの効果

数十人から100人以上の方々が参加したボランティア活動プロジェクトの運営をしていた際、私はこの「グループダイナミクス」という理論に出会い、その効果を強く実感しました。今回、グループダイナミクスについて少しお話ししたいと思います。

グループダイナミクスとは

グループダイナミクスとは「集団力学」とも訳されるのですが、

「集団における個人の価値観・思考・行動・態度等が、所属する集団の個人または複数の個人、あるいは集団そのものから影響を受け、逆に個人が他の個人や集団に対しても影響を与えるといった、集団を構成する個人同士の相互依存関係から発生する集団の力学的特性」

のことを言います。

例えば、ある集団の中にいるAさんが「ONE PIECEが好き」「ジャズが好き」「経済学を学んでいる」といった趣味や興味を持っているとします。その集団の中にONE PIECEやジャズ、経済学に興味を持った個人が複数いた場合、個人間や複数の個人(小集団)の間で「共感」が生まれます。互いにさらなる情報共有や、イベントがあったら一緒に行くことになるかもしれません。

また、その集団は「途上国支援ボランティア活動」という一つのテーマで集まった人たちとします。一人ひとりは、ONE PIECEが好きだったり経済学が専門など趣味趣向、専門性が違った個人がたくさん集まっているのですが、全員の共通点としては「ボランティアに興味がある」「途上国支援をしたい」という興味や意思を持っています。

さらに、その活動には、10人のリーダーがいて、支援する途上国をそれぞれ担当するチームを率いています。リーダーという役割が与えられると、そのリーダーは一個人ではありますが、担当するチーム(小集団)に影響を与え、思考や発言、行動を促します。ひいては、チームに所属する個人の価値観や考え方の変化にも影響を与えるかもしれません。

そして、途上国支援ボランティア活動のプロジェクト全体を統括するマネージャーは、活動に参加するメンバー全員に影響を与える存在となります。活動の目的、支援対象途上国に関する知識、活動方法、チームの運営方法などをメンバーやチームリーダーに共有します。マネージャーは、メンバーやチームリーダーがそれぞれの役割に従って活動を行ってもらうべく、指導や支援をして行動を促します。

このように、一つのプロジェクトという集団の中に
 個人-個人
 個人-小集団
 小集団-小集団
 個人-集団

という関係性ができあがるのですが、それぞれの関係において相互作用が起こります。すると、徐々に集団としての「団結力」が形成され、最初に集団が発足した当初と比較すると、同じ価値観やミッション、目標に向かって突き進む「仲間意識」が醸成された集団へと進化していきます。

もちろん、逆のパターンもあります。ある個人が負の影響をとして「活動をしたくない」「価値観に共感できない」「メンバーと意見が合わなくて喧嘩してしまう」といったことが起こってしまうと、団結できずに集団は崩壊へと向かってしまいます。

プロジェクトでのグループダイナミクス経験

私は、冒頭のプロジェクトに加え、担当したいずれのプロジェクトにおいても「団結」と「崩壊しかけた」経験をすることができました。

特に大きな経験となったのが冒頭のボランティア活動ですが、同プロジェクトではプロジェクト・マネージャーとして統括する立場にありました。まず行ったことは「ボランティアを集める」ことです。しかし、ボランティアの場合「参加するもしないも自由」が前提となるため、その前提で私はボランティア活動を数年にわたって運営する方法を考える必要がありました。

そのような状況下で私がプロジェクト運営において最も注力したことは

「自由参加が前提のボランティアのみなさんをどうやって活動に参加してもらい、かつ参加し続けてもらうか」

の仕組み・仕掛けを作ることでした。

■活動の目的・意義・目指すゴールの設定
■ボランティアプロジェクトのありたい姿の明確化
 (世の中からどう見られる存在でありたいか?)
■ボランティア一人ひとりのありたい姿や役割の定義
■ボランティアの募集方法の設計
■ボランティア活動方法の設計
■チーム運営方法の設計
■チームリーダーのありたい姿・役割の定義
■複数年間計画・年間スケジュールの作成
■「楽しめる遊び」要素の盛り込み方の検討
■参加するボランティアが「成長できる」要素・仕組みの設計

活動をするにあたって最初に上記のことを考えたのですが、この中で一番力を入れて考え続けたのが、最後の2つです。ボランティアとして参加し続けてもらうためには「楽しめる」「成長できる」の2つがないといけないな、と考えました。この2つをグループダイナミクスを活かすためのプロジェクト方針と位置づけたのです。

私は、参加してくれたボランティアの皆さんに対して、最初の説明会や個々の活動のスタート時、活動実施時、実施後の振り返り時、全体で集まる機会など、あらゆる場面で

「この活動はめちゃくちゃ楽しくて仕方がない!」
「この活動を通じて、ボランティアのみなさんはこんな成長ができる!」

ということを伝え続けました。心の底からそう思っていたのでそれが多くの方々に通じたようで、延べ200人の応募者の中から1回でも活動に参加してくれたのが各年100人ほど、その中で1年間活動に参加し続けてくれたのが各年50人ほど、合計5年間の活動でしたが5年間参加し続けてくれたのが30人もいました。

年齢、性別、学歴、職歴、趣味、専門性、住む地域など全員がバラバラで、非常に個性豊かなメンバーたちが集まったのですが、プロジェクト組成時に私は「どんなプロジェクトグループになっていくんだろう?」とワクワクが止まりませんでした。結果的に、単なる途上国支援活動にとどまらず、個人と個人の間で関係性が生まれ、プライベートでの交流が始まったり、新たな活動を始める人たちもいれば、交際や結婚に至った人たちもいました。ここには書ききれないほどの「化学反応」が起こり、それがプロジェクト全体にポジティブな影響を与え、成功を収めることができました。

この体験は、自身にとってのこれまでの人生の中で最も大きな成功体験になっていますが、同時に最も大きな失敗体験にもなっています。

チームを引っ張ってくれると期待してリーダーに任命したメンバーが辞めてしまったり、意図ややり方が十分に理解してもらえなくて違ったアクションをしてしまいクライアントに迷惑をかけてしまったり、ボランティアが集まらない時期があり運営が厳しい状態となったことなど、様々な失敗がありました。

ただ、そうした失敗を教訓としつつ「グループダイナミクス」の理論に則ってチーム運営、プロジェクト運営を続けることで最終的な大きな成果を出すことができました。もしグループダイナミクスという理論を知らなかったら、プロジェクトは崩壊で終わっていたでしょう。

改めてグループダイナミクスを活かそう

今度、新しい事業を展開しようと考えています。その事業には多くの方々に参加いただいたり、協力いただく場面がたくさん出てくるでしょう。そして、以前に担当したプロジェクトのように、様々な個性を持った方々に集まっていただけるのではないか?と今からとてもワクワクしています。

直近の仕事ではグループダイナミクスを扱う機会はほとんどなかったのですが、改めて学んだことを活かして事業を行っていきたいと考えています。

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