『白い絵』 ver.1 1,349字
男は画家だった。
だが、実際には「自称」である。
絵を描くことに半生を捧げてきたが、
男の描いた絵は一枚として売れなかったからだ。
何にでも先立つものが要る。
画材は結構な値段がするし、飯も食わねばならない。
日雇い仕事で糊口を凌ぐのがやっとの日々。
一緒に暮らしていた女はとうの昔に愛想を尽かして去り、頼るべき友も親類も無い。
そんな暮らしの中で、気付けば髪には何時しか白いものが混じっていた。
季節は巡り、秋も終わる頃。
男の人生もまた、冬を迎えようとしていた。