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健康な体の源②

前回、日本の実家で行われていた味噌づくりのお話しを書きました。
私の実家では毎年春の恒例行事として家族みんなで1年分の味噌を仕込んでいました。
実家の味噌づくりの工程は
① 大豆をゆでる→②つぶす→③素手で丸める→④風通しの良い空間で寝かせる→⑤再びつぶして塩と米麹を混ぜて発酵させる。

私の個人的な見解ですが、この工程の中で味噌の味を決定づける大きな要素は③素手でまとめる④風通しの良い空間で寝かせる。の2つだと思うのです。
麹味噌の場合、麹菌という菌が味噌の発酵には欠かせませんが、この③と④の過程でも目に見えない菌が加えられ、その家独自の味を作り出しています。
それは、作る人の手のひらにある何兆個にも及ぶ“常在菌”と、家の空間に漂う多くの“細菌、微生物”の存在です。
それらが私のお腹に善玉菌として定着し、今もなお私の健康をサポートしてくれている。それが私の健康の源のように思うのです。

子供の頃から慣れ親しんだ食材、料理はその人の基本を作り上げるものとなり得ます。私自身は、今現在オーストラリアに住んでいますが、実は長野の山奥で生まれ育ちました。今思い起こすと、日本の先住民社会のような環境で生活を送り、祖母と母が作ってくれたその土地の風土料理を食べて育ちました。長野特産の野沢菜漬けや、カリカリの梅漬けなど数々の漬物類、保存食など、その地域では各家で作って自分達の味を守ってきました。その料理一つひとつに、作った人の、その家の持つ常在菌が含まれているということになります。
その点から考えてみても、祖母や母の手料理に含まれる常在菌のお陰で私の腸内環境が築かれ、今の私が形成されていると言っても過言ではありません。
では、それぞれ違う時代を生きてきた祖母や母、私のお腹には全く同じ腸内細菌が住んでいるのでしょうか。
アリ ウィッテン著 原題「Eat for energy」 日本語訳 「回復人」という書籍には「すべての人がそれぞれの遺伝子や生活スタイルや環境に応じて独自の細菌パターンを持っている。」とあります。
その言葉から、同じ家に住む家族でも、生まれ育った環境や生活スタイルが違えば腸内の細菌パターンにも違いが出ることになります。
特に長野の山奥で育った私の腸内細菌と、オーストラリアで生まれ育つ子ども達のそれとは全く違うはずです。子ども達の健康をどのように育み維持するのかを考えると、日本人の遺伝子を持つ子ども達にはやはり日本の食事の在り方を伝えていく必要があるように思います。

ちょうど今回、長男が日本から帰国して、自分で一から米麹を作り、それを使って味噌と塩こうじ、甘酒を仕込んでくれました。オーストラリアの環境下、そして作り手が違う事を考えると、実家の味噌とまるっきり同じと言うわけにはいきません。でも、長男の手のひらとオーストラリアの我が家に存在する善玉菌をたっぷり含んだ発酵食品を味わいながら、家族への食育、健康の為に活用させてもらおうと思います。

麹味噌。1年寝かせるらしいです。
甘酒。おばあちゃんの味そのものでした。

毎週月曜日更新。次回は6月25日です。★


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