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【アゼルバイジャン暮らしの日記】毛糸の靴下の暖かさと、その先へ。

2024年1月13日

週末から大寒波が来るとの予報。雨は朝方に雪になった。

北海道生まれなので、寒いのは好きじゃないけれど慣れている。反面、暑いのは好きだけれど、不慣れだ、すぐに熱中症みたいになる。寒冷地仕様のこの身体。バクーの家は、ラディエーターの集中暖房なので、一日中ふんわりと暖かく快適。北海道の家と似ている。とはいえ気候は東京の冬とさほど変わらないくらいなので、外もそんなに寒くはならない。雪も年に数度降る程度。

毛糸の靴下が好き

アゼルバイジャンは、牧羊の歴史が深いたので、絨毯や毛織物、編み物などの羊毛利用の文化がある。私は、特に編み物に興味があるので、地方の博物館などに出かけては、せっせとその土地独特の文様や配色を眺めるのを楽しみにしている。そしてその中で、その伝統文化を継承しつつも現代的に活用しようと、社会起業をしている団体がバクーにあって、私は彼女たちをいつも応援している。

Azerbaijani Socksの編み手さんたちは、地方の村々に暮らしていて、自分の家で靴下などの伝統の編み物をして団体に売り、その現金収入は生計の足しになったり、子どもたちを街の学校に通わせる学資になったりする。この団体を立ち上げたテレーザはアメリカの出身で、村のお母さんたちの編んだ靴下は、主にアメリカで販売されている。そのためには、彼女は地方の村々をまわって丁寧にデザインや配色のアドバイスをして、品質管理を徹底して、「売れる」付加価値の付いた商品づくりに努めているところが素晴らしい。そして、新人の編み手さんたちの作品や、輸出品質に満たない作品は、バクーの店舗で少し安い国内価格で販売されていて無駄がない。私も時々お店に出かけて、お茶を飲みながらプロジェクトのお話を聞いたり、プレゼント用にたくさん靴下を買ったりしている。

お気に入りの一足。ブーツからちょこっとのぞかせてもかわいい。

アゼルバイジャンの靴下編みの文化は、地方ごとに伝統のパターンがあって、これは北部のレズキーの模様、これは南部のタリッシュの模様、と私も見分けられるようになってきた。Azeribaijani Socksの製品は、それに欧米人の好む配色を取り入れたり、各地の模様をミックスしたりして、素敵な靴下が生まれている。その上に、それぞれの編み手のお母さんたちの個人的な趣向でアレンジが加えられていて、それがなかなか興味深くて、ついいくつも買ってしまう。

ウェブサイトからメーリングリストに登録すると、そんな編み手の女性たちのそれぞれのライフストーリーや、村を訪ねた時のお話などが綴られたニュースレターが届く(英語)のも、私の楽しみ。靴下の一つ一つに、編み手のお名前が記されているので、そんな物語を思い出しながら暖かな靴下を履けるのは素敵なことで。

日本からは、Etsyでも注文できます。(こちらはアメリカ向けの輸出クオリティのものと同じ。)

伝統的なレズギー族の華やかな配色の靴下に、さらにカラフルな糸でダーニング。

毛糸の靴下なので、長く履いていると穴が開いたりしてしまうのだけれど、せっかくの手編みの靴下を簡単に捨てたりはできないので、私はダーニングをして補修して、また履いている。なんだかそれも愛おしくて好き。

靴下のその先へ

伝統の手工芸がこういうかたちで残るのはうれしいし、私も編みものが好きなのでとても楽しんで応援している。その一方で、女性の貧困対策や自立支援というと、こういう手工芸や料理、洋裁などに注力しがちだけれど、これからの若い世代の女の子たちには、もっとウェブデザインやプログラミングといった職業訓練も進めて欲しいと思っている。インターネット網が普及しているこの国なら、こういったIT関連業務も、初期費用の援助の後押しさえあれば、家から家事や育児の合間にもできるし、収入は編みものよりももっと多くなるはず。女性=手工芸というイメージも変えてゆきたいし、固定化したジェンダーロールの再生産に歯止めをかけたい。ただ、その一歩として、村のお母さんたちが今できる自助努力として、家庭で編みものをして子どもたちに高等教育を受けさせている、その努力には深く敬意を表するし、応援したい。その上で、私たちが取り組むべきことを考えている。

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