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マーケティングから考えるクックパッドマートの「育て方」

こんにちは。はじめまして。
クックパッドマートでグロースマーケティングを担当しています、松本です。

クックパッドマートにjoinして7ヶ月目の新人ですが、事業部内ではどうやら最年長のようです。
これまでは、ブログサービス「はてなブログ」やSNS「mixi」など十数年にわたってWEBサービス、とりわけコミュニティやCGMの領域で活動してきました。
そんな私にとって、クックパッドマートはまた新しい領域へのチャレンジであり、様々な発見や気づきにエキサイトする日々を送っています。

クックパッドマートは2018年9月にサービスを開始して以来、様々な検証や改善を繰り返してまいりました。
その中で私は「サービスのグロース」をミッションとし、クックパッドマートの「グロースモデル」や「マーケティング手法」の試行錯誤を繰り返し行っています。
今回はこれまで半年あまりに渡って行ってきた試みの一部を紹介しながら、その背景や意図をお話できればと思います。

 「生鮮ECプラットフォーム」のマーケティング

クックパッドマートにおけるグロースやマーケティングの話の前に一般的なマーケティングの役割について触れておきたいと思います。

マーケティング(英: marketing)とは、企業などの組織が行うあらゆる活動のうち、「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその価値を効果的に得られるようにする」ための概念である。また顧客のニーズを解明し、顧客価値を生み出すための経営哲学、戦略、仕組み、プロセスを指す。

出典:マーケティング - Wikipedia


商品が大量かつ効率的に売れるように、市場調査・製造・輸送・保管・販売・宣伝などの全過程にわたって行う企業活動の総称。市場活動。販売戦略。

出典:Google検索-マーケティング

やや抽象的でシーンによって捉え方も異なってくるマーケティングという概念ですが、マーケット=顧客に、商品やサービスを届け、その価値を最大化するための活動全般ということができるかと思います。

一般的なECサービスの場合、

・商品・サービス=商品、ECアプリ・WEBサイト
・顧客=消費者

となるわけですが「生鮮ECプラットフォーム」としてのクックパッドマートは、

・商品・サービス=販売する食材(その生産者)、ECアプリ、受け取りステーション、マートによる買物体験
・顧客=消費者、販売者(生産者)

このような構造になるかと思います。
クックパッドマートにおいては、プラットフォームに係る体験全体(商品を注文してから受け取るまでの体験)がサービスであり、さらには食材を調理し、食べた後の行動までも意識してデザインしていく必要があると考えています。
また、販売者(生産者)はプラットフォームを構成する重要なパートナーであり、販売者(生産者)のファンを醸成していくという意味では販売者(生産者)自身もまた商品の重要な一部となります。
このようにクックパッドマートにおいては「生鮮ECプラットフォーム」を構成する様々なレイヤーに渡るマーケティングが必要で、それらが相互に連動し、影響しあう複雑さがあります。その複雑がまたプラットフォームのマーケティングの醍醐味でもあると思っています。

「置き配」モデルのエリアマーケティング

クックパッドマートの特徴である「置き配」モデルもまた、マーケティングにおいては重要な要素となります。

無題のプレゼンテーション_-_Google_スライド

クックパッドマートでは購入した商品を自宅ではなく各地に設置した受け取り場所「マートステーション」に配送し、お客様に商品を受け取りに来ていただく「置き配」モデルを採用しています。
サービスを利用するためには近隣にマートステーションがある必要があり、必然的にマーケティングにおいてもマートステーションのある地域に絞ったエリアマーケティングが前提となってきます。
またマートステーションの立地も、ドラッグストアやカラオケ店の店内、商業施設内のオープンスペースもあれば、マンションや保育園といった特定利用者向けのクローズドなスペースもあり、じつに様々なシチュエーションに分かれます。(2020年はさらに様々な場所への設置も計画しています。)

地域毎に最適なアプローチ × シチュエーションに最適なマーケティング手法

クックパッドマートのマーケティングにおいては、地域ユーザーへの最適なリーチ方法、シチュエーション、ターゲットに合わせた最適な手法を常に掛け合わせて個別に戦略を組み立てる必要があります。

まとめると、この2点がクックパッドマートにおけるマーケティングの特徴といえるかと思います。

・様々な人や団体が参加する多層構造のプラットフォームであること
・様々なロケーション、シチュエーションに応じた手法、戦略が求められる

グロースモデルの確立

2018年9月にサービスを開始したクックパッドマートですが、グロースの取り組みを本格的にはじめたのは私がクックパッドマートにjoinした2019年7月頃からになります。

前述のようにクックパッドマートのマーケティングはマートステーションの立地に依存する部分が大きいため、ある程度の数までマートステーションが拡大するのを待つ必要がありましたし、ユーザー向けアプリの機能や体験の充実、商品ラインナップ、販売者の拡大、物流の仕組みの安定化、効率化などクックパッドマート全体の総合力が一定の水準に達する必要もありました。

2019年7月時点のマートステーションは22箇所。設置場所はドラッグストアやカラオケ店のチェーンが多くを占める状況でした。

この時点でまず取り組んだのは、

・ポスティングや街頭チラシ配布による集客
・店頭での販促イベント
・店舗と連動したキャンペーン展開
・ユーザーアプリ上での初回利用者向けキャンペーン

といった施策で、認知〜購入までのファネルを意識して施策を連結し、購入に至るまでのストーリーをいかに実現するか検証していきました。

無題のプレゼンテーション_-_Google_スライド

特に強く意識したのが最後の「購入」に至るプロセスで、上記のイメージでは単純に「購入」としていますが、クックパッドマートにおいては「購入〜商品受け取り」という独特のプロセスがあります。
これまでユーザーが経験したことのない「マートステーションでの商品受け取り」をいかに体験してもらうかが大きな課題でした。

クックパッドマート、オリジナル保冷バックを先着5,000名に無料配布〜新鮮な食材を、安心にお持ち帰りいただくためにエコバッグを推進〜

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「置き配」モデルのクックパッドマートでは購入した食材をマートステーションからご自宅まで持ち帰っていただく必要があります。その際にご利用いただけるように保冷機能の付いた折り畳みのオリジナルトートバッグを制作しました。
このオリジナル保冷バッグを初回利用者限定で無料で購入できるようにしたり、クックパッドマートで購入できる商品の一部を期間限定で無料購入できるようにしたりと、思い切った企画で「マートステーションでの商品受け取り」を体験してもらうキャンペーンを実施しました。

こうしたキャンペーンと連動してポスティングなどの集客施策を実施し、どの程度のコンバージョンが得られ、その何割が継続利用し、購入単価はどの程度か…… 様々な観点で検証し、想定LTVとのバランスで妥当なROIを得られる手法に落とし込んでいく。
そうした検証の積み重ねでクックパッドマートにおける「グロースモデル」を確立していくことがグロースマーケティングの大きな役割と考えています。

サービス成長に合わせたマーケティング運用

前述したようにマートステーションには様々なロケーション、シチュエーションの差異があり、それに応じた施策の展開が必要となってきます。その中で状況を類型化して、複数の典型的「グロースモデル」を作り上げていき、いかにそれをスケーラブルな運用に落とし込んでいくか。
この半年あまりで幾つかの「モデル」ないし「モデルの原型」を作り上げることは出来てきました。
例えば、キャンペーン内容とコンバージョン率や継続率の相関、ステーション毎の購入単価の傾向、自宅から受け取りステーションまでの距離と継続率の相関など、様々なファクトから打ち手を組み立てていけるようになってきています。

2020年はマートステーションの拡大もさらにスピードアップしてまいります。
既存の「グロースモデル」については、その運用をさらに改善していく必要がありますし、多様化していくマートステーションのロケーションに応じた「新しいグロースモデル」を確立していく必要もあります。
サービスの拡大をマーケティングが推進していくわけですが、一方でマーケティング自体もまたスケーラブルに発展していく必要があるのです。

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サービスの持続的な成長に向けて

「マーケティングの理想は販売を不要にすることである」ドラッカーは著書の中でこう述べています。
これは販売=Sellingに対してMarketingのあるべき価値を表した言葉ですが、「生鮮ECプラットフォーム」としてのクックパッドマートのグロースマーケティングの在り方にも通じると感じています。
この場合の”販売”は「デザインされたマーケティング」と置き換えるイメージになるでしょうか。

・商品・サービス=販売する食材(その生産者)、ECアプリ、マートステーション、マートによる買物体験
・顧客=消費者、販売者(生産者)

さきほど、クックパッドマートにおける「商品・サービス」「顧客」をこのように定義しました。

消費者と販売者(生産者)が同じプラットフォーム上にプレイヤーとして存在し、その営み自体が「商品・サービス」となる世界。これはCtoCプラットフォームやコミュニティにより近い価値観のものと感じています。
前述の「グロースモデル」はマートステーション毎の開設初期のグロースを「デザインされたマーケティング」で推進するためのスキームとして整備していますが、その後の持続的な成長を作り出すのは、まさにプラットフォームに参加する、消費者と販売者(生産者)の「営み」であると考えます。

クックパッドでこれからも取り組むのは、料理にまつわる「つくり手」である個人をエンパワーメントする、仕組みやインフラをつくることです。
「つくり手」とは、料理をつくる方やレシピを投稿する方だけではなく、毎日の食材を美味しく育てる生産者の方やそれらを届ける方、料理にまつわる新しい価値を生み出すクリエイターすべてです。

クックパッドの執行役に選任されました|クックパッドマート|note

「自在に自分のお店の販売をコントロールできる」という感覚をもってもらえるようなプロダクトづくりを今後続けていけばよいのだと強く思い直しています。

街のお店や生産者が使ってくれる仕組みのつくりかた|クックパッドマート|note

「ECプラットフォーム」というと楽天市場やAmazon(マーケットプレイス)のような大規模モールをイメージしがちですが、クックパッドマートが志向するのはもっと小さな「町の商店街」のようなものではないかと考えています。
販売者(生産者)がクックパッドマートという場を使って自在に活動し、食材の販売を通じて、消費者とつながっていく。消費者はそうしたつながりの中であたかも馴染みの商店街で買物をするような体験を得られる。

ゆるやかにコミュニティを醸成していくことで、クックパッドマートでの買物がなくてはならないものになっていくような、そうした環境作りやコミュニティマネジメントもまたクックパッドマートにおけるグロースマーケティングの役割と考えています。

日常使いされるプラットフォームを目指して

封入メッセージ

これは前述のオリジナル保冷バッグに同梱しているメッセージカードです。
クックパッドマートは生産者のこだわりが詰まった食材を多く扱っていますが、特別な”ハレ”の食材を買うような場ではなく、日常の買物に使っていただくことを意図しています。

参考:サービスリリース半年で、ビジョンとミッションを決めた理由|クックパッドマート|note

いかに日常の買物習慣、料理習慣の中にクックパッドマートを取り入れてもらうか。
ECプラットフォームとして「日常使いされる」ことは実は大きなチャレンジだと感じています。
「モノを買う」だけでなく、日常の買物や買物に連なるストーリーにマッチした新しい仕組みを作り出す。
それによって買物体験と日常の食卓を豊かにする。

まだまだ模索の只中にいますが、少しでも多く方々の日常にクックパッドマートが浸透し、そして販売者(生産者)の方々が活躍できる場を少しでも広げていけるように、取り組みを進めてまいります。
半年後、1年後、クックパッドマートという場でどんな価値が創造されているか、当事者である私が一番楽しみに感じています。


クックパッドマートのビジョンやミッションに共感を覚えた方、クックパッドマートの目指す新しい仕組みづくりに興味を持たれた方、このエントリでは語りきれなかった話題がまだ沢山あります。クックパッドマートのことをもっと詳しく知りたい方は是非お話しましょう!

プロダクト/グロースマネージャー (クックパッドマート)