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コンビビとは?

コンビビのはじまり
フチガミ:コンビビはもともとオースミの発案だけど、そもそもどうしてはじめようと思ったの?

オースミ:わたしは大学で映像の実習の授業をやっているんだけど、普段やっている仕事は映像の制作の仕事で、その両方に接点というか、共通点があるなと思っていて。子供たちと一緒に映像制作できないかな。何か一緒に面白いことができないかな、てことではじめたプロジェクトですね。

映像探究学習コンビビのワークショップより

フチガミ:われわれは子どもが同じ保育園に通っているっていう共通点があって、その保育園は都会にあるんだけど、でも都会にも実は自然はいろいろあってその中で子供を育てようぜ、っていうちょっと面白い保育園なんだよね。
合宿とか遠足がすごいたくさんあって、とにかくたくさん歩くし、親たちもみんなでよってたかって子どもたちといっしょに成長しようっていう雰囲気もある。大人になってこんなに友だちが増えるなんて!というくらい謎のコミュニティになってる(笑)。
その園で、子どもたちの遊んでいる感じ、とにかく好きにやっていて、子どもたちが好きにやれるように保育士さんたちが見守ってる感じがすごいよかった。
なんだけど、彼らが小学校に入ったら、園の時にはみなぎってた野生の力みたいなものがちょっと弱くなってきた感じはある。

オースミ:そうだね。

フチガミ:うちの子が小学校一年生になって、入ったばかりの一学期の最初、学校から帰ってきたら玄関でバタッと倒れて寝てたことがあった。今まで保育園では、座って正面を向いて30分とか40分間、先生の話を聞くっていう生活はしてなかったから、急に「学校モードに入れ」っていわれてもなかなか急にはなじめなくて、それで頭がめちゃめちゃ疲れてたんだと思う。
だんだん慣れてきて、二学期ぐらいにはふつうに通ってた。でも慣れたことによって、やっぱり好きな時に好きに遊ぶとかってことは当然無くなっていく。社会に慣れていくことは必要なことでもあるんだけど、先生の言うことを待っているとか、言われたことをやるとか、怒られないようにふるまうとか、そういう傾向が段々強くなってきたっていう感じもしたよね。

オースミ:なんかやっぱりみんな学校に通っていると基本的に受身になって、決められたことをまずどんどんこなしてくっていうことが増えてきているんです。どんどん増えてきちゃって受身にどんどんなっていって、もっと本当はできる力を持ってるから、開放する場みたいな提供できないかなとか、一緒に楽しめないかなとか、そういうのはコンビビをはじめようと思ったちょっと大きな発端。
そもそももってたはずの自由なエネルギーっていうものがどんどんどんどん萎縮してエネルギーを解放する場所がなくなってっているという感じもちょっと危機感を感じる。
わたしも大学で授業をしているんだけど、山口真由さんて人が書いた記事を思い出す。大学の授業で彼女が学生に意見を求めるのね。「こっちだと思う人?」パラパラと手が上がって、「こっちだと思わない人?」でまたパラパラ。「説明できる人?」て聞くと、誰も手が上がらないでシーンとする教室。沈黙を破る人はいない。わたしも授業をしててよくある風景。目に浮かぶでしょ? その後の山口さんの文章を引用すると:

“そりゃそうだよね。中学生の私は、どんなことがあっても絶対に手を挙げない子だった。いいことなんて何もなかったから。間違えて恥をかく。先生に媚びてるとイジメられる。黙ったまま無為な時間が流れるのはみんなの責任。だけど、そこで沈黙を破れば、わずかなミスが発言者だけが責任として重くのしかかる。だから、賢い少年少女たちは、状況を変えるというリスクは決して取ってはならないと学び、すくすくと大人になっていく。感受性が最も強い思春期の強度な同調圧力は、何かを変えようとする者たちの心を萎えさせていくのだろう。
こういう社会を私たちの世代が変えることは難しいかもしれない。それより上の世代はなおさら。だけどもしかしたら、これからを担う世代ならば。
私はもう一度教室を見渡して願いを込めてこういう。「この沈黙を打ち破ることは1つの挑戦です。そして、少なくともこの場所では挑戦したことそのものを評価したいと思います」。
それでも誰も手を挙げない。5秒、10秒、そろそろ諦めよう。だが、そのとき、教室の一番後ろで1人の女の子が手を挙げた。その勇敢さに私は息をのむ。彼女はためらいがちに、しかし、まさに私が求めていた答えをしっかりと口にする。「ビンゴ!」と応じながら、私はそこに希望を見出す。”

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/83472?page=4

ほんの少しでも、年に1回でもいいから、子どもたちが手を挙げてくれたらいいなって思う。そういう機会というか、場所をなるべくたくさんつくれたらいいなって。

フチガミ:この記事はちょっとウルってくるよね。そう、最近は学校も、昔ながらのザ・教育っていう上意下達型のものではなくて、それぞれの子どもが、自分なりの感覚で、自分なりのペースで、興味や関心を掘り下げていける、それが探求って言われていることだと思うんだけど、そっちの方向にしていこうみたいな流れもある。
学校の中でも、あとは学校の外でも、そういう探究的な時間とか場所を子どもたちのためにつくれたら。そして自分たちおとなもそういうふうに学んでいきたい、大人たちの探究の場所も作りたい、っていうことでコンビビを立ち上げたっていうところはあるよね。


●映像の時代

フチガミ:とはいえさ、今の子供たちの心安らぐ場で大きいのはやっぱりゲームとYouTubeだと思う。
ディスプレイに向き合って、流れてくる映像を受け取っている時間っていうのは、今の子たちの遊びのすごい大きな部分を占めているし、ある意味で心の落ち着く時間なんだと思う。彼らにとって外を遮断して安らぐ、楽な時間なんだと思う。大人的にもタブレット渡しとけばその中にいてくれるから楽っていうのはもちろんあるじゃん(笑)。
ゲームはちょっと能動的な部分もあるし。ポジティブなところもあるんだけど、でも人間が作ったデジタル世界の中で遊んでるっていう意味ではかりそめという自由という気もする。
そうじゃなくて、自分の中から出てくるものを外に出して表現したり、それを仲間と一緒に揉んでみたり、作り合ったりする場所と時間を増やしていきたいなっていうのが、コンビビをはじめた気持ちとしてはある。

オースミ:答えがない問題に対してどう取り組んでいくか、っていうのはほんと日々感じてる。昔よりもゲームの難易度が上がってる(笑)。

フチガミ:VUCAとかとか言われるけど、本当にちょっと答えがわかんない時代に突入しちゃってる。なんだけど、やっぱり答えみたいなもの、指針も欲しい。"何とか力"がつくと大人になったときに稼げるとか、そういう話に飛びつきたい気持ちもあるんだけど、でも本当にわかんない中で、ちょっとずつ自分で考えたり、手動かしたりしながら、仲間の力を借りていきながら進む、進んでいくっていうのが、これからの進め方というか学び方っていうか、生き方なのかなと。それは子供だけじゃなくて、大人も多分そう。
そういうこともあって、何かやってこか、ていうのがコンビビだよと。

●コンビビの3つの活動
フチガミ:で、どんな活動をやってくんでしょう?

オースミ:コンビビの活動は三つあります。
一つは映像探究学習のワークショップ。基本的には映像をみんなで作っていこうっていうワークショップをしながら学びを得ていこうというもの。

フチガミ:映像の探求学習っていうアイディアを最初に聞いたとき、実はあんまりピンとこなかったんだけど、映像を作るっていう中には探求的なものがいっぱい詰まってるんだなっていうのがだんだんわかってきた。企画を立てたり、一緒にストーリーを考えたり、それをどういうふうな表現で映像に落とすかっていうところを考えたり、それを一緒に撮影するとかみんなでやる、話をしたりしながらチームでやること。できた作品を社会に問う。そういうのも含めての映像制作ですけども、学びの要素を探求的なものが入ってんだなっていうのはすごい面白そうなとこだよね。

オースミ:自分たちの中で課題を見つけて、それに対しての自分たちなりの答えというかね、どうやったらその課題に向き合えるかってことをみんなで対話しながら、何か最終的に一つのものを作り上げるっていうところまでやるっていうのは本当に探究的な学びで溢れてる。

フチガミ:さっきも言ったけど、子供たちは日常的にものすごく映像に囲まれてるから、リテラシーはすごく高い。それを創る側にまわるっていうのはけっこうハードル低くなってるし、面白いなと思って。
オードリー・タンさんが、「リテラシーからコンピテンシーへ」っていうことを言ってるだけど、要するに消費するだけじゃなくて創る側になるほうがいいよねってことで、コンビビもその姿勢は大事にしたい。

オースミ:二つ目は、これからの学びを考えるメディア。メディアビビビ。

フチガミ:学校やフリースクール、あとはインターネットとかも含めて、いろんなところで探究の試みが増えていて、そういう学びの未来を作ってる人たちが考えてることや活動を取材したり紹介していくメディアですね。

オースミ:はい。三つ目は研究会。「これからの学びを学ぶ」という大人向けのラーニングコミュニティです。、子供の教育って言ったときに、どこの塾がいいとか、どこの学校がいいとかって話もあるんだけど、やっぱり社会が大きく変わってしまっているから、これからどんな時代になるのかとか、その中でどうサバイバルしていけばいいのか、みたいなことを、子どもだけじゃなく大人も学びなおしていきたいという場です。

●映像探究学習とは?
フチガミ:一つ目の映像探究学習のワークショップは、具体的にどんなことをやってるのか、簡単に説明してもらってもいいですか。

オースミ:たとえば大学でやっているのは、今の時代の社会課題を自分たちなりに見つけてきて、解決はそんな簡単にできないんだけど、それを社会に伝えていくかとか、一歩踏み出すきっかけを与えられるかを深めていきながら、最終的に30秒のCMをつくるというプログラム。その過程の中ですごくリサーチをするし、いろんな人にインタビューをしに行くし、コンテを書いて、みんなでそれをまたもんでいきながら撮影して、編集して1個の作品に仕上げる。

フチガミ:大学生からはどんなアウトプットがあったの?

オースミ:今の大学生の関心でいうと、ジェンダーは本当に大きくて。女性の生理の問題を自分ごととして考えよう、という企画が男子学生から出てくる。それは時代が大きく変わってるなって思う。
あとは、フリースクールに毎週通っているんですが、そこでどんな活動をしているのかの取材もしつつ、子どもと映像探究学習をやってます。

フチガミ:自分たち学んでる場所の紹介映像を子供たちが自ら作るっていうプログラムだよね。

オースミ:自分たちが自分たちの学校の映像をつくる。みんなで話しながら自分たちの学校のことをすごく深く考える。フリースクールだから他の公立の学校との差を自分たちの中で整理して、何がこの学校の魅力なのかとか、あと普通の学校になくてこの学校にあるっていうものを考えて、形にしていく。
今の学校や教育が直面してる問題について、低学年の彼らがちゃんと本質をわかっているところがびっくりするし、面白い。フリースクールっていう場所が子どもたちにとってすごくいい場所になってるんだなっていうことがわかるんだよね。

フチガミ:大人にいいたいこと、みたいなものがちゃんとあるんだね。

オースミ:そう。今の時代を映す社会問題に直接繋がってるようなことが低学年の小学生の口から出てくる。

フチガミ:フリースクールっていう意味では、ちょっと既存の学校に合わなかったり、ちょっと違和感感じてる子たち、もちろん親の意図や期待もあるだろうけど、基本的にはそういう子たちが来ていると思うんだけど、そういう子たちならではの、エッジの効きかたというか、立ちかたみたいなのがあってすごいね。アウトプット楽しみだなうん、

オースミ:今まさにやっているところなんだけど、ずいぶん面白そうなの。
あとは、街場のワークショップとしてもいくつかやっていて、こないだやったのはミュージックビデオを作るというプログラム

フチガミ:「大人に言いたいこと」というお題で、みんなからあれやこれや意見を出してもらって、それを5・7・5のリズムでリリックにする。それをラップにしてみんなで唄ってミュージックビデオにするっていうのをやったんだよね。

オースミ:大人に言いたいこと満載だった。耳が痛いやつ(笑)。

大人に言いたいこと

フチガミ:大人に言いたいことをリリックにするだけのプログラムでもいいぐらい、すごくよかった。あとは子どもたちが映像の編集がすごい上手というか、慣れてたのもびっくりした。

オースミ:リリックに振りをつけて踊ったり歌ったりするのも早かった。あとは出る、出演するのが好きだし楽しそうだったね。

フチガミ:うん。普段からYouTubeとか映像たくさんみてるからか、勘所もすごいよくわかってて、うまかったよね。早いし。

フチガミ:あとこの間やったのは「クエスチョンとカセッち」ってプログラムていう。身の回りの疑問を探して、その答えになる仮説を考えて、映像に落とすというもの。

オースミ:身の回りにあるもので、普段はスルーしちゃってるけど、立ち止まってみるとすこし不思議だったり、なんでだろうって思うところが実はたくさんある。その写真を撮って、どうしてこうなっているんだろう、という仮説を考える。
たとえばでいうと、天井に小さな穴がたくさん開いてるのを子どもたちが見つけて、なんでそんな穴が開いてるのかわからない。それに対してはっきりした答えはないんだけど、自分たちのアイディアや想像で仮説を考えて、それを映像にしていった。

フチガミ:大人でもわかんないことって意外とたくさんあって、普段だとそこに立ち止まらないんだけど、ワークショップっていう限定された時間と場所を作ると、だんだんそういう不思議が見えてくる。
この床にはなんでこんな傷がついてんだろうとか、この葉っぱはどうしてクルクルしてるんだろうとか。それに対して仮説を考える。今回はその仮説の検証まではやってないけど、仮説っていうところまでは子どもたちがスムーズにできていた。答えがわからないなかで、自分たちなりの仮の説明を考えて、それを探究していく、っていうのは子どもたちもスムーズにできるんだなっていうのがわかったのは面白かった。

オースミ:クエスちゃんとカセッちっていう2人のキャラクターが会話をしながら進んでいくっていうアウトプットも、エンタメになっていて、子どもたちは自分たちでキャラを作ったり声を当てて声優したり、プロセスをすごく楽しんでたよね。これは大人がやってもいいプログラムだった。

フチガミ:そうね。基本的には子供も大人もできるものがいいワークショップなんじゃないかな、っていう仮説を持っていて、大人向け、あるいは研修でもやっていきたいなと思ってます。

オースミ:はい。大人も楽しく、学んでいきたいね。以上コンビビの紹介でした!


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