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インタビュー: 親子をつなぐ架け橋になりたい ~ 長 洋平さん

「子どもの個性を伸ばす先生」長 洋平(おさ ようへい)さん(現在28歳)。
講師歴8年、500件以上のご家庭の教育相談を受けた経験を活かして、小中学生のお子様を中心に、家庭での学習指導やコーチング(学ぶきっかけづくり)を行っています。
教育にこだわる理由や、「生きづらさを抱える親子の居場所をつくりたい」という想いの根底にある経験を聞かせていただきました。

聞き手:イノウエ エミ(2020年6月取材)
写真:    mico (みーこ)

◆ 島育ち。子ども大好きです

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―――子どもに教える仕事を志したのはいつですか?

中学生くらいからでしょうか。僕は18歳まで対馬で育ちました。
小さなコミュニティの中ではどちらかというと勉強ができるほうで、友だちに教えていた経験が原点かなと思います。
誰かの「できるようになる、わかるようになる、ちょっと変わる」に関われることがとてもうれしかった。

それに、単純に子どもが大好きなので、学校の先生でも保育士でも、子どもの成長に関われる仕事がいいなとぼんやり思っていました。

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―――卒業後、最初はどのような形で教えていたのですか?

ベンチャーの学習塾と出会って、4年半ほどそこで教えていました。
もちろんたくさんの良い出会いや経験があったのですが、イヤイヤ勉強している子がいたり、この子に本当に必要なのはこういう勉強じゃなさそうだなぁと思ったり、お母さんたちの悩みを聞いたりしているうちに、もどかしさを感じて‥‥。
「いつか自分で塾を作りたい」と思ったのが独立のきっかけです。

―――その後、発達障害の方の支援を行う会社(株式会社LITALICOさん)でも勤めておられたとか。

はい。LITALICOさんでは、発達障害のお子さんの特性や、そのようなお子さんをお持ちの親御さんの悩みを知ることができました。その経験から、障害を持つお子さんや不登校の子たちがもっと生きやすくなる社会を作りたいという思いがますます強くなりましたね。


◆ 教育の根っこに必要なもの

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―――生徒さんたちにとって、長さんはどんな印象の先生でしょうか?

どうでしょうね(笑)。
塾で言われていたのは「いろんな相談に乗ってくれる先生」「頼りになる先生」ですかね。
子どもから相談されるのはもちろん、親御さんからも悩みごとを聞いたり、上司から別の部下の愚痴を聞いたり。
聞き役・相談役になることが多いです。

―――話しやすくて聞いてもらえそうな空気感があるからでしょうね。
長さんのほうは、生徒さんと初めて会うときは緊張しますか?
 

以前は緊張していましたね。今は楽しめるようになりました。
「この子はどんな子かな? おっ、席を立ったぞ。‥‥あ、これに興味があるから立ったんだ。だったら、これはこっちに置いて、こんな話をしてみようかな」
みたいな‥‥。その子自身に興味をもって見ているととてもおもしろいし、感情的になることもありません。

―――基本的に、どんな子でもかわいく思えます?

かわいいですよ(即答)。みんなかわいいです。

―――よかった~。やっぱり親にとって大事なポイントなんですよね。自分は我が子にイライラするんだけど、他人が我が子を嫌ったり感情的に怒ったりするのはイヤだという(笑)。

そこに教育の本質があるんですよね。子どもを思う気持ちが根っこになければ、ただのビジネスになってしまう。一般的に「仕事に感情を持ち込んじゃダメだ」といいますが、僕は教育に関しては情が必要なんじゃないかと思っています。


◆ お子さんとたくさんおしゃべりします

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個性 × 才能 = 好きなことで自立する 】 
が長さんのコンセプト。単に学力向上を目指す教育とはちょっと違うようで‥‥?

―――家庭教師をお願いしたら、最初の授業はどういう感じですか? 教材などは何を?

最初に親御さんとお話して状況をお聞きしますので、わかる範囲でこちらで準備してうかがいます。必要だなと思ったら教材を用意しますし、必要ないと判断すれば教科書等で対応することもあります。基本的に教材費を別途いただくことはありません。

それと‥‥最初はほとんど授業はしないかもしれませんね。体験授業というより、体験雑談(笑)。

―――え? 

大げさに言うと、「僕は勉強を教える先生ではないです」という言い方をすることもあります。

―――ええー?

もちろん学習面のサポートはするんですが、そこに行きつくまでの道のりが大事なので。
信頼関係がなければ、どんなに指導しても効果はない。
「学びたい」という興味づけも必要です。教えることで一時的に成績が上がったとしても、その子自身の意識の変化や成長がなければ、あんまり意味がないですよね。

―――確かに。では、具体的にはどんなふうに‥‥? 

お子さんの様子を見て、お話して、興味がわくようなアプローチをしていきます。絵が好きな子には絵の話、ゲームが好きな子にはゲームの話から。
たとえばフォートナイト(というゲーム)が好きな子なら、「フォートナイトってどういう意味か知ってる?」と聞いて一緒に調べるところから入ったり。

「この先生が来ると楽しい、たくさん話してくれる、聞いてくれる」
そう思ってもらえる関係ができてからですね、本番は。
ですから、親御さんには「授業中の雑談は、学ぶことに興味をもたせるきっかけづくりです」と伝えています。

―――聞いてあげると喜びますもんね、子どもは。でも子どもの話って自分中心だったりとりとめがなくてわかりにくかったり‥‥そういうのを聞くのも苦になりませんか?

全然! 何なら、ずっと聞いていたいくらいです(笑)。子どもが心から楽しそうにしている姿を見るのが本当に好きなので。

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カードゲームも、お子さんとの大事なコミュニケーションツール!


◆ 一人ひとりの「こんな人になりたい!」をサポート

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学習塾時代は、卒業生が毎回遊びに来てくれることがとても嬉しかったそうです。


―――学校とはちょっと違ったアプローチの授業もあるとか?

はい。やっぱり、好きなこと、興味のあることのほうががんばれますよね。
たとえば「先生になりたい」という子には、「どんな先生になりたい?」と聞いてみる。

「話がおもしろい先生かな~」
「そうか。今の〇〇くんはどう?」
「話すの、ちょっと苦手。できるようになりたい」
「じゃ、話す練習したら、なりたい先生にちょっと近づけそうだね」
という感じで、読んだ本のことをまとめて話してもらったり。

―――なるほど~!

「子どもの学び」というと数学や英語など科目名で考えがちですが、本当はもっといろいろあるんですよね。記憶力、計画力、継続力、コミュニケーション力‥‥。そういった観点から、お子さんにとって必要な力、「こうなりたい」という姿に近づくためのサポートをしています。

―――「こうなりたい」という夢や、個性や才能がまだ見えにくい場合もあると思いますが‥‥。

もちろんそうですよね、子どもは「今、この瞬間」を生きていますから、無理に将来の夢を考えさせる必要はないと思うんです。
今、どういうときが楽しいか? どんなことをできるようになりたいか? 聞いてみると、出てくるものですよ。

―――確かに、将来の夢に限らず「こうしたい」はありますよね。うちの子の最近の希望は「夏休みはのんびりしたい! 勉強したくない!」ということでした。

いいですね(笑)。そんなときは、「じゃ、宿題を早く終わらせてあとはのんびりできるように計画を立てようか」と言って、計画と実行をサポートします。勉強は、自分の夢や理想に近づくための道具であり、その訓練ですからね。

ちなみに、妻は小学生のころ「新幹線になりたい」と言っていたそうです(笑)。

―――わー、かわいい!

僕が彼女の先生だったら「何で新幹線になりたいの?」と聞くでしょうね。「だって、めっちゃ速くてかっこいいし」「そっか、かっこよくなりたいんだね、じゃ、どうしたらかっこよくなれるかな?」みたいな。

そうやって小さな経験を積んでいって、「チャレンジしてみよう」「失敗してもだいじょうぶ」とか、逆に成功体験になって自信がついて「勉強もがんばってみよう」と思えるとか、そういう自己肯定感を育てることが一番大切だと思っています。


◆ 親子をつなぐ架け橋になりたい

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―――「障害のある子を支援したり、生きづらさを抱える親子の居場所をつくりたい」とのこと。その思いはどこからきているのでしょうか?

僕自身が生きづらさを抱えた子どもだったからでしょうね。小さいころから引っ込み思案で人見知り。人と話すのも苦手でした。いつも周りの目を気にして、自分の意志を伝えることができない。人間関係を作るのもなかなか難しくて‥‥。

だから、困っている子やハンデがある子、がんばっているけどなかなか成果が出ない子たちを見ると、自分に何かできることはないかと思うんです。

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真ん中、泣いているのが保育園のころの おさ先生。

―――子どもたちの生きづらさに共鳴するところがあるんですね。親御さんからも相談を受けたりしますか?

はい。もともと子どもは大好きですが、今は同じくらい、親御さんの力になりたい思いも強いです。学習塾に勤めていたころから、何百人ものお母さんたちとお話させていただいてきました。本当に悩んでおられたり、「先生しか頼る人がいません」と面談中に涙を流されたり‥‥。
何とか力になりたいですし、できれば少しでも早い段階からサポートできたらなと思います。

親御さんの気持ちに寄り添うのはもちろんですが、親御さんとお子さんをつなぐ架け橋になりたい。親御さんの気持ちをお子さんに伝える、と同時に、お子さんの気持ちも親御さんに伝えられる存在といいますか。
僕は親になったことがないから、子どもと同じ目線でいられる部分もあると思いますし、自分自身が常に小さな子どもに負けないくらいの好奇心を持って、未知の世界を開拓していこうとも思っています。

―――未知の世界。たとえば?

ツアーコンダクターとして、新しい体験ができる旅をつくりたい!
旅行や野外学習では、座学の勉強だけでは身につかない「未知の体験」ができます。めまぐるしい時代の変化に対応できるお子さんに育つよう、安心して失敗できる環境をつくって、いろんな経験をしてもらいたいですね。
親御さんも一緒に楽しめる旅行にしたいなあ。親子間のコミュニケーションが生まれる場をもっと増やすのも目標なので。

あ! 地元の対馬の歴史や自然を巡る「対馬満喫ツアー」とかやれたらいいですね(笑)


◆ 路上弾き語りから広がった「人の輪」

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―――長さんご自身も不器用なところのあるお子さんだったというお話でしたが、今はお話しぶりもしっかりした印象ですし、人とのかかわりを楽しんでいますよね。何がきっかけで変わったのでしょうか?

やっぱり、友だちとの出会いですね。中学生のころ友だちに「一緒にやらないか?」と誘われてギターを独学で始め、人前に出ることを少しずつ楽しめるようになりました。おかげで、学生時代は音楽にのめり込みましたね~。

そのころ、スピッツの替え歌グループ「スパッツ」を結成したり(笑)、何百人ものお客さんの前でライブをしたことは、今でも人生の糧になっています。

―――びっくりしたのが、路上で弾き語りをしている写真。

26歳のころ父が癌で亡くなったのをきっかけに、自分の将来を真剣に考えるようになり、転職と同時に様々なやりたいことにチャレンジしてみました。その中の一つが、路上弾き語りでした。

―――すごい勇気。誰か、友だちにサクラになってもらったり?

いえいえ、全然。中洲の橋の上で一人きり。最初はギターをかき鳴らしても、なかなか歌いだせず‥‥。

なんとか声をかけてもらおうと、スケッチブックに『あなたの好きな歌、弾き語ります』と書いたり、いろいろ工夫しました。少しずつリクエストをもらえるようになり、3回目で初めて千円札をいただいて。今、そのとき声をかけてくださった男性のお子さんに勉強を教えています。

―――えええ~! そんなことあるの~?!

お話を聞くと、糟屋郡の方で、中学生のお子さんがいらっしゃるとのことで。
「(仕事)何しようと?」と聞かれて、僕もアドレナリンが出てるから「ずっと塾講師をしていました。お子さんに勉強教えますよ!」なんてはりきって言うと、「じゃ、ちょっと見てやってくれんね」と。

それから2年が経って、ありがたいことにご紹介をたくさんいただきました。今は糟屋付近で15人ほど、福岡市内も合わせると20人以上のお子さんの学習支援を行っています。日々、いろいろなお子さんの成長にかかわることができ、感謝しています。

―――「長さんにお願いしてよかった」というような反応はありますか?

言葉で言っていただけることもあるし、「表情が明るくなられたな」と思うこともあります。それから、まわりのお子さんを紹介していただいたときは安心しますね。

―――信頼して満足されているから、「紹介したい」と思われるのですよね!


◆ 自分の人生の主人公は自分

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左が涼子先生(おさ先生の妻)で、右が生徒の新里一恵くん(中2)です。3人とも仲良し。

―――日々の生活で心がけていることはありますか?

仕事柄、どうしても夜型の生活になるので、心と体の安定は意識するようにしています。ヨガに通ったり、湯船に浸かったり。音楽を聴くこと、夫婦+愛犬で散歩に行くのも好きです。

心と体の安定は、勉強の効率や学力を上げるうえでとても大切なことなので、お子さんの計画の中に「睡眠時間」と「リフレッシュの時間」は必ず確保するように声かけしています。

―――すてきで頼れる長先生に弱点はありますか?(笑)

実はもともと、時間厳守が苦手で‥‥。島(対馬)では時計を見ることがあんまりなかったんですよね。

―――え?

「昼ぐらいにあそこで集合ね」って感じでざっくり待ち合わせをして、昼ごはんのあとちょっとうたた寝したりしたあとのんびり行って、そこにいた子たちで遊んで6時のチャイムが鳴ったら帰る。それで何の問題もなくて。

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―――本当は、それが人間らしい生活なのかもしれないですね。

とはいえ、福岡に来てすぐはだいぶ悩みましたね。環境というものは恐ろしいです。子どもたちには、今まで遅刻で周りに迷惑をかけた経験を話して、反面教師にするよう指導しています(笑)。

―――好きな言葉はありますか?

「自分の人生の主人公は自分」ですね。

―――おお! とても共感します。

妻がいつも言ってくれる言葉なんです(笑)。「あなたの人生の主人公はあなたなんだから、好きなようにやったらいいよ」と。

―――すばらしいですね。

夫婦でも親子でも、それぞれ一人ひとり違う人生なんですよね。自分で決める自由があるし、逆に言うと、最終的には親でも先生でもなく自分で決めないといけない。
それぞれの子の「こうなりたい」思いを引き出し、その姿に近づけるように。いずれは、家庭教師から卒業して自分で学んでいけるようサポートするのが僕の仕事だと思っています。

(おわり)

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☑ 子どもが勉強にやる気がなくて不安
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☑ 旅行や野外学習に興味がある   など‥‥
⭐️女性の先生をご希望される場合、涼子先生(おさ先生の妻)も指導可能です!

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子どもの『個性』を伸ばす先生 長 洋平(おさ ようへい)
📲:080−5603−7912
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教員免許を持つ妻・涼子さんは公私ともに支え合うパートナー。「いつも助けてくれて、本当に感謝しています」

 編集後記

私も小学生の親です。我が子を見てくれる先生は、子どもを尊重し、かわいく思ってくれる人であってほしい。
だから、長さんが親御さんからもお子さんからも信頼が厚いのはとても納得です。「どんな子でもかわいいと思えますか?」と聞いたとき、本当にいい顔で「かわいいですよ~」と即答してくれた長さん。落ち着いたお話しぶりのはしばしに、子どもへの愛情や静かな情熱がにじんでいました。 (イノウエエミ)

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