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映画メモ『KCIA 南山の部長たち』~破滅の予感におののきつつ釘づけに

1970年代後半、17年にわたって君臨した韓国大統領周辺がモデル。
最後まで見てから、主役を演じているのがイ・ビョンホンだと気づいて仰天。キムタクと「HERO」で共演するような華やかなスター俳優のイメージだった。こんなふうに、オーラはゼロだけどダイソン並みの吸引力、みたいな魅せ方ができる人なんだ。

それぞれの人物の作り込みもだが、『権力と人間』の描き方がえげつなく、また普遍的。

服従、追従、抑圧、懐疑、監視、懐柔、忖度、疎外‥‥
権力は、権力もつ者も、権力を行使される者も、ともに追いつめていく。

当時の韓国では大統領の尊称を「閣下」といったらしい。ハングルでは각하、発音は「カカ」。(二番目のカは激音で、息を強く吐きだす)
劇中、話が進んでいくにつれ、主人公が「カカ」と大統領に呼びかけるたびに胃痛がするような心持ちになりつつ、それでも権力に阿諛追従せず抵抗の道を探る姿に力をもらう。

コメディ的な要素は少なく、主人公は堅物でプライベートな姿も一切見せないのに、観客への訴求力がすごい。スリリングさと時々の弛緩のバランスが絶妙で、破滅の予感におののきつつ画面にくぎ付けになってしまう。

この映画から少し先に起きる光州民主化運動を描いた「タクシー運転手」を見たときも思ったのだけれど、軍事政権時代の韓国にとって、日本はもっとも近い“自由の国”だったんだなあと。

軍隊をバックにした韓国の圧政下では、植民地時代の遺恨とは別に、「日本ならあるがままを報道してくれる」と期待できる、頼みの綱のような存在。
だから、抑圧からの解放を願う韓国人は危険を冒してでも日本に情報を届ける。日本はその期待を裏切ることなく、迅速に報じる。
「報道の自由ランキング」で順位を下げ続け、今や70位に甘んじている現代ニッポンとは隔世の感が‥‥。

3か月くらい前にネトフリで見て、3日くらい引きずってましたです。

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