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インタビュー: メメント・モリ 死を想えば、命は輝く ~ 長田友恵さん

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一日一日を全力で楽しむ、おもしろがる! 長田さんがそのことにかける真剣さには、驚くべきものがあります。絵に陶芸、歌にバレエ、バンジージャンプにダイビング‥‥心が動けば即チャレンジ。いったいどうして、いつもそんなに元気で美しくいられるのでしょう?
聞き手: イノウエ エミ
撮影 : 橘 ちひろ
(2020年2月下旬取材)


◆ 美しさは「美しく在りたい」という姿勢から生まれる

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―――久しぶりにお会いしたら、ますます美しくなられていて。

ありがとうございます。

―――美しさの源は何でしょう? 痩せられました?

それもあるかもしれないけれど、きっと、本質は体重ではないでしょうね。

―――というと‥‥?

長いこと、体型はコンプレックスでした。ダイエットして痩せて、また太って、長い年月をかけて「私にとって、美しさって何だろう?」「美しく在りたい」と探求し続けてきました。そうやって挑戦する在り方に美しさが出るんじゃないかしら。

―――確かに、内側からあふれだすような美しさです。

モデルさんは洋服を美しく見せるためのお仕事だからスレンダーですが、それだけが美しさじゃないと思うの。昔から、西洋の美人画や女神像はふくよか。膨らみや柔らかさも、女性の美しさの象徴の一つでしょう。

―――とても豊かで包容力を感じますよね。

そう。おなかがふくよかでも(笑)、だからこそ醸しだせる美しさがある。自分にとっての美意識を追求していくうちに、痩せていても太っていても、芯から自己受容できるようになりました。

だから私は「痩せたら自分を好きになれる」ではなく、「太っている自分も素敵だけど、もっと違う自分とも出会ってみたい。まだ自分さえ気づいていない美しさに気づけるチャンスかも!」と思っているんです、そうやって、日々生きていることを心から歓んで、挑戦して、感動しているんです。

―――その在り方が、長田さんの美しさなんですね。

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◆ 「博多座のステージに立ちたい!」夢がかなった日

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―――この1,2年も、どんどん夢をかなえていますよね。去年は何と博多座の舞台に出演。

もう13年前になりますが、娘の幼稚園で講演会があって、講師の方が「夢を言葉にすれば必ず実現しますよ。隣の人とペアになって「こうなりたい」ことを言ってみましょう」と言われたんです。
それで、ミュージカルが大好きな私は「いつの日か博多座の舞台に立ちたい」と‥‥。言葉にすることが大切で、具現化の始まりなんです。

それからは、キャナルシティでミュージカル、ママさんコーラスで札幌の全国大会、博多駅前の2千人ゴスペルフェスティバルなど、いろんな経験をさせていただいてきました。

―――そしてついに博多座!

十年越しですね。「市民檜舞台の月」で上演する「WE ARE THE CHAMPIONS!」のオーディションに合格したんです! 5か月間練習して、博多座の楽屋に自分の名前が貼られている感激! お客様が入った舞台で綺麗なライトを浴びて踊るのは、すばらしい体験でしたよ。

―――長田さんのチャレンジを見ていると励まされます。

わあ、そう思ってもらえるのはとてもうれしい! 何歳でも、どんなチャレンジもしていいんですよね。それをお伝えしたくてFacebookをアップしていますので。

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◆ 父はアル中。理不尽でした

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―――お生まれは伊万里だそうですね。

田舎育ちです。段々畑を飛び回り、近くの海で筏に乗り、漁師小屋の網をよじ登って、フナムシを追いかけて。
田んぼのぬかるみに入る感触や、海の磯くさい感じ‥‥今もよく覚えています。

―――自然の中で五感をひらいていた生活が根っこにあるのですね。

一方で、漁師の家庭で育った父にとって、楽しみはお酒。アル中でした。飲んで暴れたり、階段から落ちたり‥‥家の中では緊張した場面もたくさん経験しました。私の核になっている部分でもありますね。

―――お父さんが怒鳴ったり暴れたりするのは、子どもにとってはすごく怖いですよね。

姉と二人で、仏壇を拝んでいました。それを見た祖母が「ほらやめんね、友恵と博美が拝みようやっか」となだめてね。
素面のときは寡黙な人だったし、母や祖父母からも愛情はいっぱい受けていたのですが。猫も一緒に住んでいましたよ。

―――学生時代はどんな少女でしたか?

苦労している母に喜んでほしくて、勉強をがんばっていました。当時の田舎では安定した仕事というと公務員。学校の先生を目指して、一浪して大学に入って教育免許、日本語教員免許もとって‥‥。
でも私、大学受験は要領が悪くて、なかなか結果が出なかったんです。まわりと同じ努力では落ちてしまうという恐怖心があって、しんどかった。

―――そのころの長田さんから今の長田さんになるまでに、どんなステップがあったのでしょう?

転機はね、大学時代に出会った自己啓発。約10年間、時間も労力もお金もかけてトレーニングに取り組みました。
「あなたは人生を創造することができます。どう生きたいのか、自分自身に問いかけ、言葉に出して、真っ白いキャンバスに自由に絵を描いていいんですよ」と言われて。本当にびっくり。そんなこと言ってくれる人いなかった。

―――それまでは「がんばらなきゃ」と思ってたのですものね。

「お父さん、お酒飲まないで」と頼んでも、「ケンカをやめさせてください」と仏様を拝んでも、合格めざして精いっぱい努力しても、なかなか報われなかった。どうして?と理不尽でした。

「自分の好きに描いていい」と言われて、「私も楽しんでいいのね? ここだ、私の場所は!」と、本来の天真爛漫さが花ひらき始めたのね(笑)。

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◆ この父と母を選んで生まれてきた

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アルコール中毒の父。苦労して、娘に愚痴を言う母。
でも、ずっと自分と向き合い続けてわかりました。私の魂の学びにとって、ベストなカップルを選んで生まれてきたんだって。

―――そうなんでしょうか? 理不尽な子ども時代‥‥。

「好き好んでこんな親のもとに生まれない」って、反抗期なんかは特にそう思うものだけどね(笑)。

父は「こういう男性を選ばない」という反面教師。母の愚痴を聞くのは疑似体験になったと思います。だから私は母と同じ経験をしなくて済んだの。
両親から学び、自分はどう生きたいのかと向き合うことで、負の因果のスパイラルから抜け出せました。

二人とも亡くなったけれど、魂のエネルギーは永遠。今も愛されていると感じています。今日は母の誕生日なんですよ。

―――すごい確率ですよね。

私は父を25歳で、母を38歳で看取ったの。今の私の年齢でも、ご両親が健在という方は多いのだけれど‥‥。

―――看取りの経験を、とても早くになさったのですね。

はい。だから私には、若いお母さんたちへのメッセンジャーという役割があると思うんです。母が亡くなるときの話をさせてくださいね。

―――ぜひ、聞かせてください。


◆ 切ない父、幸せな母。対照的な看取りを経験して

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思いのこもった歌のプレゼントをいただきました

病気で弱って枝のように細くなった母が、だんだん笑わなくなるのね。そのとき「お母さん、笑って!」と心から思ったの。叫ぶように。
どうにかして笑わせたくて、ネタを仕込んで病室に行っていたくらい。

38歳、いい大人なのにね。母の無償の笑顔にどれだけ救われていたか、安心していたか‥‥初めて気づいたんです。

そして、「私は3人の子どもたちの前で笑っているだろうか?」と振り返りました。つまらないことで怒ってイライラしないで、私の笑顔を子どもたちに焼きつけたい。心からそう思いました。

もちろん、ごはんを作ったり、お世話したり、やることはいっぱいありますよね。
でも、とにかくお母さんが機嫌よく笑っていて、
「あなたを生んでよかった」「あなたと出会えてよかった」「あなたの母親になれてよかったよ」
とメッセージを送っていたら、それだけで安心するし、自尊感情がみたされるんじゃないかしら。

それが足りなかったら、とても不安よね。「お母さん、どうしたら笑ってくれるの?」と探している子がたくさんいると思う。

父の看取りのときは、命の尊厳について考えました。父は手術をして、たくさんのチューブをぶら下げて亡くなったの。私は25才で、病院の先生に何も言えなかったけど、「お父さんはこんな死に方を望んだのだろうか?」とずっと思っていました。

母の最期はホスピスで、20人くらいのスタッフさんが讃美歌を歌ってくれて、母はどんなに癒されただろうと思いました。

夜9時頃に亡くなり、翌朝10時頃まで母と一緒に過ごさせてもらう時間の中で、体を拭きに来た看護師さんに「一緒にされますか?」と聞かれたので、喜んで「はい」と答えました。熱いタオルで体を拭いて、シャンプーもエンジェルメイクもさせてもらって。油分がいっぱいのファンデーションで肌はつやつや、アイラインとチークも引いて本当にきれいな母になったの。

私ね、母のトイレの介助をするのも怖かった。でも亡くなった母の髪を洗っていると、まるで生まれたての赤ちゃんを洗っているように、心から愛おしさがこみあげてきて‥‥
そのとき、魂が生まれてくる世界と戻っていく世界はつながっていて、同じエネルギーが流れている、その間の世界で私たちは生きているんだと、電撃が走るように悟ったんです。

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父の切ない看取りと、母の幸せな看取り。対照的な看取りを通じて、両親が「あなたはどう死にたいの?」と私に問いかけてくれた。

メメント・モリ。死を想うと、生がいきいきと輝いてくるの。
すぐ隣に死があると受け入れることで、今ある命を燃やすことを想うようになりました。

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取材の日は、お母さまのお誕生日でした。
長田さん「今も母の存在を強く感じています」


◆ 命を燃やして生きる

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―――すごいお話でした。

ありがとうございます。お母さんの笑顔が子どもにとってのビタミン。「あなたのために我慢してるのよ」っていうのが一番良くないのよね。

―――そうですね。ただ、仕事柄たくさんの女性たちと会っていて思うのは、女性‥‥特に母親にとって、自分の心を解放するのは本当に難しいことだとも感じます。

どうして?

―――どうしても「私なんかが」という気持ちが出てくるんじゃないでしょうか。それに「恥ずかしい」とか‥‥。

どうして「恥ずかしい」と思うんでしょう。自分の中に「母親ってこういうものだ」という理想、概念があるのでしょうね。
でも、その概念より、自分の願望が大切じゃない? いずれ死ぬのよ。残された命をどう燃やしたいか。

―――すべてはそこですね。

「恥ずかしい」と言われても、「あなたはそう考えるのね」というだけのこと。命がずっとあると思うから人の目を気にしてしまう。余命1年と言われたら、人にどう思われようと自分がやりたいことをするんじゃないかしら。

―――だから長田さんは数々のチャレンジをしているんですね。

そう。天神でフリーハグをやったこともありますよ。最初は8年くらい前。

―――ずいぶん前ですね。まだフリーハグが知られていないころですが、どんなきっかけで?

ある映画にフリーハグのシーンがあったんです。たったワンカットだけどすごく印象的でした。
初めて出会った人同士がハグした瞬間に笑顔になるの。人間の本質は、未知なる人と出会ってつながること、エネルギーを通わすこと。ハグってすごい可能性をもってるんじゃないかと思って。

―――実際にハグしたのですか?

もちろん! 20人、25人くらいかな。

―――ドキドキしませんか?

ドキドキマックスですよ! 「フリーハグ」の看板を持った瞬間に、メッセージを出しているわけだから。でも、それがまさに生きている実感なのよ。家でごろごろしている1時間とは全然違う。

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◆ 子どもは愛して野に放つ

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長田さんはすばらしいヒーラーでもあります。
その手のエナジーを感じてみてくださいね。

―――今の長田さんに、弱点はありますか?

いろいろありますよ。セリフ覚えが悪い(笑)。それに、数字に弱くてアナログ人間です。

―――3人のお子さんがいらっしゃいますが、子育てで大変なことはありませんか?

次男がなかなか手ごわくて、お料理の焼き加減なんかにも厳しいの(笑)。「もっと焦げ目をつけて」とか。お弁当も「足りない」と言うからおにぎりを多めに持たせたら、「バスケで忙しくて食べれんかった」と持って帰ってきたり‥‥私、朝5時半に起きて作ってるのよ?(笑)

―――それ、ほんとつらいです~!

でも、「私こんなにがんばってるんだから認めて」というのも私のエゴなのよね。割り切ったほうが楽。

―――お子さんについての心配などはありませんか?

それは全然ありません。いろんな挫折を味わったほうが強くなると、身をもって知っていますから。
子どもは、野に放つのが一番いいんじゃないかしら(笑)。自転車だって、何度も転んで乗れるようになるでしょ? 失敗を恐れたら挑戦できない。

―――失敗を恐れているのは親自身かもしれませんね。

そのとおりですね。子育てに失敗したくないから、みんな正解を求めて本を読んだり誰かの話を聞きに行ったり。でも、一人として同じ人はいないのだから、我が子と、そして自分と向き合わなきゃね。

私は、子どもたちを絶対的に信頼しているんです。心から愛して、スキンシップを大事に育ててきたから、あの子たちはどこに行っても生きていけると思ってる。それに、私よりはるかにすばらしい子たちだと尊敬もしています。


◆ 「母ちゃん、かっこいいね」と言われた日

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先日、次男の高校の修学旅行先で集団感染が出てしまってね。嘔吐下痢で200人も! 幸い、息子はとっても元気に帰ってきたんですが。あの子はインフルエンザでも何でも「俺、かかる気せんもん」というセルフイメージなのね(笑)。

―――すごい! 大事なことですね。

その後、学校の説明会があったのだけど、紛糾しちゃって。保護者の方たちが学校やホテルや旅行代理店を糾弾して、質疑応答が4時間近く‥‥。

―――ひゃー! それは大変。

みなさん、お子さんがかわいそうだし、振り上げた拳の下ろし場所がないのよね。それで私、最後に手を挙げて胸の内を話させてもらいました。

「みなさんが苛立つ気持ちもわかります。でも、これ以上糾弾してもどうしようもないことです。
 私は、こんな大惨事に、先生方も寝ないで一生懸命動いてくださったこと、説明会を2度も開いて話を聞いてくださったことに感謝しています。息子も「先生たちはよくやってくれた。責められてかわいそうだ」と言ってます。
 こういうことが起きるとどうなるのか、子どもたちは緊急事態の社会の仕組みを経験できました。とても貴重な経験をさせていただいたと思います」ってね。

―――すばらしい。説明会も含めて、子どもは大人がどう振舞うか見ていますよね。

そうしたら次の日、担任や学年主任の先生などが、次男に「お母さんにありがとうと言ってくれ。お母さんの言葉に救われた」と言ってくれたそうなんです。
それで息子がね、「母ちゃんかっこいいね。さすがやね」って。

―――えー! うれしい!

あの口うるさい息子に認められたことが本当にうれしくて。
「母ちゃんはあんたが言ったことを代弁しただけよ」と言ったら、「お、謙遜しとるやん」なんて。なんだか熱い絆で結ばれちゃって(笑)。

そういうとき、やっぱり、私が感じたことを発してきてよかったなと思うんです。

些細なことから大きなことまで感動して。人生を思いきり楽しみたい。
心からそう願っていれば、ワクワクすること、すばらしいことがたくさん起こります! 今日の取材もそうですよね。
そして、私とかかわった方々が、元気になったりおもしろがってくださるとうれしい。一緒に豊かな人生を創れたら、すばらしいと思いませんか?

(おわり)

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ご自身が描いた絵です。すてき!
親子の関係、子育てのこと‥‥。さまざまな経験をし、人間の本質を勉強してこられた長田さんの言葉には力があり、愛にあふれています。
長田さんのヒーリングやカウンセリングを体験してみたい方は、どうぞメッセージしてみてくださいね。
→→→ 長田友恵さんの facebook ページはこちらです

◆ 編集後記

自分に問いかけ、心の声に耳をすませる。心の声を、口に出して言葉にする。両方の言葉がいつも一致しているから、長田さんは芯から輝いているのですね。学びの多いインタビューでした。衣装やアクセサリー、ヘアメイクやネイルのご準備もばっちり、お部屋にはいきいきとした花も飾られていて、この数時間を心から楽しんでくださる姿に感激でした! (イノウエエミ)

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