見出し画像

『loveless』 solo exhibition by 圭子

圭子さんの初個展 「loveless」 を見に行きました。見て見て~、シロートがスマホでしゃらっと撮っても、この「映え」感! ふふ、バエってもう死語ですねw

ふつう写真の展示というとだだっ広い壁に作品を貼りだして、空洞の室内を歩いて見て回るイメージだけど、ここはカフェバーだからテーブルとソファがたくさんある。しかも壁は赤く、一面がほぼ完全に窓で、無数といっていいくらいの植物と本と置物にあふれたインテリア。

ここで展示をするという発想そのものがけっこう驚きだったのだけど、圭子さんの作品はさすが力があって、この場所に飲み込まれない。かといって、ケンカもしない。どちらも勢いを殺さずに深いところで絡まり合っているようで、圧巻でした。

これって圭子さんのソロデビューだったんだよね。いくつかのグループ展や企画展を経て、初めての個展。彼女は私とほぼ同年代(四十路💕)。なんかすごくいいよね。

画像1

店主が来る前の早い時間は、彼女がドリンクを作ってくれる。ノンアルカクテルすごくおいしかった!

SNS見てると、彼女がわーわー言ってる時があるのね(笑)。「プリントってどこでどうすればいいの?!」「写真のサイズって? KBとMBはどっちが大きい?」「物販ってどんなふうに値段つけたら?」「知ってる人、教えて!!!」みたいな。

そこまで何も知らない状態で「展示をするぞ!」ってなるのが、いつも本当におもしろくてすばらしいと思って眺めてる(笑)。

わかんなくても、やる。わからないことは聞けばいい、きっと誰かが教えてくれるハズ‥‥っていうマインド。
そして、実際に誰かが教えてあげて、なんとかなってる。
そこで別に厳密な貸し借りが発生してるわけじゃない(たぶん)。すばらしいよね。
もちろん、それまでの信頼関係とかあるんだろうけど。

考えてみたら、写真展という言葉で思い浮かぶのは、ふつう「カメラマン/写真家」の展示ですよね。「撮られる側」の個展って、とても珍しい。

モデルさんはいろんなカメラマンに撮られる。モデルさん無しに人物写真はあり得ないんだけど、なぜか写真は普通「カメラマンの作品」になる。

冨永愛とか、あるいは乃木坂とか宝塚とか、相当なブランドになれば別だけど。でも撮る側は、アマチュアでも写真展とか普通にやるもんね。モデルの側にはそれがない。これは、実はとても非対称だよね。
写真には「撮る側が強い」という関係性がひそんでいる。

プリントのやり方、どんなピンで打って、ラミネートするのか、どう搬入して並べてチラシを作って‥‥
みたいな「実務」をひとつひとつクリアしていくことで、固定観念を破って、“撮られる側” のできることを増やし、よりフラットな関係性を築いていく。

圭子さんのそんな姿はとても頼もしくて刺激的です。

 

で、「撮られる側」ならではの発想があるのよ。やっぱり。
自分が写った写真をクシャッとして貼ったり。
鳥かごの中に入れてたり。

きわめつけは、上下を逆さまに貼って吊るされているような意匠にした大きな写真のそばにたくさんの虫ピンと金づちが置いてあって。

見に来た客に、写真にピンを打ってもらうという遊び(遊び?)。
(※もちろん、すべて撮り手の了承を得てされています)

画像2

これは写真を見るのとはまた全然違った感情を呼び起こすもので、その感情は人によってさまざま違うはずで、すごくおもしろい。
圭子さんの展示は見る側の感情を誘導したりしないので、本当に自由。
ぜひ、やってみてほしい。

 

一角に、圭子さんが「初めて服を脱いでカメラの前に立った日」のスペースがあった。

なすすべもない、むきだしの姿。
天敵を前にした手負いの獣のような。

その、覚悟と恐怖が相まったような緊迫感は、やはり そのときならではの雰囲気で。

何かを始めるときって怖くもある。どうなるかわかんないから。
でも、そこからしか始められない。

「このときの写真をよく飾れたね、恥ずかしいとかは思わない?」
と聞くと、

「全然。このときの私はここに置いてきたから」
と圭子さんは笑った。

「この写真がなかったら今の私はない、本当に」
とも言ってた。


私が見てると、圭子さんの中高時代のお友だちが入ってきた。
十数年ぶりの再会だって! 連絡も特にとってなかったようで、圭子さんもすごくびっくりしてた。

LINEのタイムラインに流した告知を見て、来たんだって。

「彼女がこんな活動を始めたのも、展示のリード文に書かれた告白を見ても、全然おどろかなかった。むしろ、『やっと始めたな』って感じ。中学の時から変わってない」

というお友だちの言葉に圭子さんがびっくりしてるのもおもしろかったけど。

お友だちはいわゆる普通の主婦でお母さんで(圭子さんの同級生だから四十路で)、仕事の帰りに見に来たらしく、

「今までの私だったら、告知を見ても「ふーん」って思うだけで行こうとか思わなかったと思う。でも、今回はなんか、来ちゃったんです」

って。それすごくいいな!!!と思った。
もっと詳しく聞きたくてうずうずしたけど初対面なので自重w

写真とか絵とかを見に行くって、やってる人には当たり前だけど、やらない人にとっては、気軽な行為ではないよね。
なんかちょっと高尚というか。見てもわかんないし‥‥うまい感想も言えないし‥‥とか。

そこを、ひらっと飛び越える瞬間に、とても興味がわいたし、
そういうきっかけになり得る発信をしてる圭子さんはやっぱりすごいと思う。 

画像3


展示は、26日(日)まで。
観覧無料、1ドリンクオーダー制。
とても美味しいカクテルも飲めるよ(ノンアルもあり)。
西鉄平尾駅すぐそば。
詳しい情報は圭子さんのブログで。
https://un-grn.com/blogs/keiko/3918/

はじめての方にもぜひ見てほしい!!!

 
半年ほど前、彼女に2回目のインタビューをしました。
その記事にも、いい写真をたくさん載せてます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?