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BTS「Butter」戦略的プロモーションの極み

うちのバンタンことBTSがあさって5/21に新曲「Butter」をリリースするんですけどね、その広告宣伝がえげつない。戦略的プロモーションの極みで震えてる。勉強になるのでまとめておきます。。。

それは4/26深夜23時、唐突なライブ配信から始まった。公式YouTubeチャンネルで何やら黄色い直方体のイラストが登場し、ゆっくりと溶けて小さくなっていく。

「何?」「チーズ?」「ぐでたま?」
「中から何か出てくるんじゃない?」
ざわめくArmy(ファン)たち。

画面右上には60分間をカウントダウンしていくデジタル表示。
果たして日付が変わった瞬間、溶けてハート型にひしゃげていた物体は黄色い奔流に押し流され、代わって現れた「Butter」のロゴ文字とリリース日が示されてライブは終了(メンバーの映像・画像の類はゼロ)。

数時間後、公式ファンコミュニティにて、文章でリリース情報がアップ。

“「Butter」はダンスポップベースの楽しい雰囲気で、優しくもカリスマ性溢れるBTSの魅力を感じることができる曲だ。
 2020年8月21日に発売したデジタルシングル「Dynamite」に続き、2曲目の英語曲。「Butter」は、5月21日午後1時、全世界で同時発売される”

2日後、公式アカウントから、新曲のプロモーションスケジュールが発表された。先日のライブ配信で流れた黄色いバターのイラストをモチーフに、1枚の画像にコンパクトにまとめられている。

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(リンク先に飛ぶと、カレンダー式になっている)
情報を文字で列挙すると

5月2日 コンセプトポスター
5月4日 コンセプトクリップ
5月5日 コンセプトクリップ
5月6日 コンセプトクリップ
5月10日  ティーザーフォト1
5月12日  ティーザーフォト1
5月13日  ティーザーフォト1
5月14日  ティーザーフォト1
5月17日  ティーザーフォト2
5月19日  オフィシャルMVティーザー
5月21日  オフィシャルMV公開

ちなみに、
ひとつのスケジュールに2つの時間が記されているのは、
 KST‥‥韓国時間(日本=JSTもも時差なしですね^^)
 EST‥‥アメリカ東部時間
を意味する。
最後のミュージックビデオ本体以外、どの情報も
韓国(日本)では日付が変わる瞬間、アメリカでは午前11時にアップされているということ。アメリカで売る気まんまんですねw

●最初5/2のコンセプトポスターは、トーストやジュース、キャンディ、風船などの「小道具」のみ。

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どれも、散らばっていたり無造作に置かれているのが意味深。
てか、先に公開されたポップなバター動画とあまりに雰囲気が違いすぎる。
小道具の数が「7つ」とメンバーの数に一致するため、
どのメンバーがどの小道具をもつのか、SNSでArmyの予想合戦がスタート。

5/4~6にかけて、2人(3人)ずつコンセプトクリップ(動画)公開
深い青みのある、どこかアンニュイな動画。
一人につき15秒ほど。
どの小道具を誰が持つのか、3日間かけて判明。
また、それぞれ異なるバックトラックが流れていたため、
7つのトラックを合わせたものが新曲のトラック(の一部)になるのだろうと予想され、すべてのトラックをミックスしてSNSに投稿するArmyも続出。
ただし、7トラック合わせてもジャンルすらよくわからないw

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●5/10 メンバー7人が1枚に収まるフォト公開

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全員スーツ。
一言でいうと派手でガラが悪い。(あ、二言だw)
先に公開されたアンニュイな動画とまったく違う雰囲気。
か、髪の色が~! 長さが~! スーツ! ピアス! 着こなし~!
などなど、ファンたち錯乱。
ちなみに髪の色ですが、黄色い人、ピンクの人、紫の人、そしてプラチナにレインボーなメッシュを入れた人がいます‥‥

●5/12~14にかけて、2人(3人)ずつティーザー(予告)フォト公開。
10日と同じファッションで、ソロ写真。

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アングルと表情にファンたち悶絶。
「Butter」の文字ロゴとリリース日時が写真内に挿入されている。

●5/17 ティーザー(フォト)その2
メンバー7人が1枚に収まったものと、メンバーごとのソロ写真、合計8枚を一挙公開。
ソロ写真、バックはニュアンス深い黄色、そしてこれまでとまたガラッと変わったファッションが斬新!!!
ファン、くらくら。 

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●今日5/19: オフィシャルMVのティーザー公開

ミュージックビデオの予告動画、実質わずか18秒。
これまでとまた違うファッション! スーツ! モノクロ! 
コレオ(振付)は首のみ! トラックはビートのみ!
最後3秒で鮮やかなシンセ音とボーカルが!
「♪Get it let it roll !」
さあ始めよう、やってみよう などの意味らしい。

そして明後日、やっと、まんをじして、ミュージックビデオが公開され、デジタルシングルのリリースとなる。
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ここまでが、4/29に公開されたスケジュールに沿ったプロモーション。
それはまるで、「ステップメール」。
ターゲット層に特定の期間、サービスやお役立ち情報を配信する、マーケティングの手法。
ちなみに、今ちょうどステップメール作成のお手伝いをしている私であるw

今回BTSのケースでは、徐々に新曲の情報を小出しにすることで、
ファンの期待感を高め、
次々に異なるファッションやコンセプトを投下して
混乱させつつ想像力を刺激し、
SNSを盛り上げてメディアによる報道を喚起。

もう半月ほど見てるので、ファンたちはButterのロゴ文字にもすっかり慣れ、全貌がわからないなりに(笑)コンセプトを受け入れ、愛している。

ゆうべ、ミュージックビデオの予告18秒を見るに至っては、
期待や楽しみを通り越して生殺し状態ですよ。
「もう無理‥‥早くとどめを‥‥」
と息も絶え絶えに願っている私がw
*

しかも! 実際はこれだけじゃない。
ほかにも4月末からさまざまな媒体に露出している。

●5/4、7、11、14(全4回)Run BTS×十五夜
オンライン配信しているバラエティコンテンツ「Run BTS!」と、韓国の地上波人気バラエティ「出張十五夜」とのコラボ番組(爆笑モノ。日本語字幕付きだし、新規Armyさんにもおすすめです)

●FILA Korea のイメージキャラクター
4月末から数日おきに写真や動画を一人ずつ公開

マクドナルドとコラボ
4/20 世界50か国で期間限定「BTSセット」販売決定をリリース

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5/13 マクドナルドスタッフが着用するコラボTシャツ発表
5/17~23 コンセプトフォト少しずつ公開

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●米ローリングストーン誌6月号で特集
5/13 表紙および全員でのフォトと動画、インタビューリリース

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5/14~ 一人ずつ個別インタビューと動画リリース中

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●5/16 ロッテ免税店ファミリーコンサート
3月、グラミー賞授賞式以来、ほぼ2か月ぶりのパフォーマンス披露。

※以上、ほとんどすべてが、 SNSやYou Tubeで全世界から視聴可能

*
4月末からこっち、ほとんど毎日
何らかの媒体から「新しい供給」がある状態。

すごいのは、この人たち、新人歌手でも「猛プッシュ中」でもなんでもない、今や世界の防弾少年団、BTSだ。
米ビルボードHOT100でナンバー1に輝き、Twitterでは「全世界で最も多く言及されたアカウント」第1位。しかも2017から4年連続だ。
AMAことアメリカン・ミュージック・アワードも常連で、昨年はアジアの歌手で初めてグラミー賞にノミネートされた。

「Army」と呼ばれる熱狂的ファンが世界中にいて、ほとんど何もしなくても、「出せば売れる」レベルの人気のピークを維持している。

それでも、こんなにもプロモーションに力を入れるんだね。
今春かなわなかったグラミー受賞を始め、数々の偉業達成を視野に入れているのもあるだろうが、彼らに限らず、持てるリソースを最大限にそして戦略的に投下していくのがプロの仕事なんだろうなあと感じ入った。

堂々と売る。知恵を絞って宣伝する。
精魂込めて作った作品だから。
すばらしいものだと信じているから。

もちろん、量だけじゃない。質もすごい。 
ひとつひとつの写真や動画に粋と贅が尽くされている。

色みが綺麗で、好奇心を刺激し、斬新だ。
ティザーフォト2には特に驚いた。パールのアクセサリーやフリル、レースなどを駆使しているのに、ごくクールな印象。
フリルやレースは「フェミニンなもの」「かわいいもの」という先入観をあっさり超えている。

ストーン誌によるインタビューの濃さも出色で、
音楽について、2020年ワールドツアー中止から今に至る日々について、
BTSというチームについて、そして自分の人生について、
考え抜かれた言葉が引き出されている。

ちなみに、「光州事件」から41年経った昨日5/18には、
光州出身のメンバーが事件に関連した歌詞を書いた
「Ma City」を絡め、出身地とメンバーのアイデンティティについてのコラム記事も出ている。

ポップな広告から音楽性を深く掘るインタビュー、そして社会派コラムまで、幅広くカバー。
ざっと列挙したけど、私が気づいていない露出もあるだろう。

こういった、すべて、すべての広告や露出を、「Butter」という新曲のリリースに向けて、戦略的に組み合わせスケジューリングしてきたわけですね。
すごく考えられてる。すごいチームだ。

それが「いかにもな広告」「いかにもな宣伝」ではなく、ひとつひとつに中身が詰まっていること。
そして楽曲やパフォーマンスそのものにも、メンバーの意向が色濃く入っている様子がうれしい。

先述のインタビューに、ファッションについても、歌うパートについても、メンバーを含めてかなり綿密な打ち合わせをすることが書いてあった。
新曲の制作クレジットにはメンバーの名前も入っている。

明後日21日の13時(NY時間では21日0時)にいよいよリリース。

それで終わりじゃない!
21日1時にミュージックビデオ解禁、
1時間後の2時にはグローバル記者会見、
23日にはBBMAことビルボードミュージックアウォードで初パフォーマンスすることになっている。

ほんと、過呼吸になるくらいのプロモーションなのですw

すごいね、K-popのカムバ。BTS is Back!!

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