運命の人　〜愛はコンビニでも買えるけれど恋はゴミになっても回収できない〜

元気ですか？
わたしはとっても元気！
春は春菊とか菜の花とか、葉物が美味しくて、お浸しばっかり作ってます。あとホタルイカも最高だね。

君のこと書こうとしては気持ち悪い文章になっちゃって自分のことすらも嫌いになりそうだからこれでほんとに最後にします。

わたしずっとずっと好きだった、本当に好きだったよ。
今になって考えてみると、10代の全てをかけて君に全力で恋してた。

君はめっちゃカッコいい。
目が真っ黒で、髪も真っ黒で、ちょっと俯いてる影になったあたりが大好き。
すごく口下手なところも好き。

サッカー部の仲間に塗れて、お年寄りしかいない田舎町なのに、髪セットしてスタンスミス履きこなして、「絶対に陽キャ」みたいな第一印象を持たせつつも全然そうじゃなくて……   というのはわたしにとって親しみやすいって意味で、自分の殻から出ようとしてるけどうまく出られないあの葛藤はわたしにはないものだったからすごく魅力的に思えた。

カッコよかった。

ひとつひとつ言葉を紡ぎ出す様子が丁寧で素敵だった。君の気持ちを聞けた時、この世でこれをわたししか知らないだろう幸せに浸れた。

君と別れた時辛くてつらくて、写真全部消しちゃったけど1枚だけ君がとってくれた私の写真が残ってて、夏の写真でパピコ持っててよく半分こにしてたなあって懐かしい気持ちになりました。

人生初めてキスをしたのは7月だったよね。14日だった気がする。
あの日は雨が降ったり止んだりしていて、ちょうど雨があがった19時くらい。帰り道だったよね。
川沿いの湿気がすごくて、汗とか冷や汗とか涙とか色々滲んじゃって、白い制服のシャツは透けそうなくらいぐったりしてわたしと君もぐったりしていた。
夏の制服の生地ですらもすっかり湿気を吸い込んで少し重かった。
紫陽花と、ウシガエルの声と、人の気配のない川と、ネコが沢山いる空き家の裏。

わたしは確かポニーテールで、君はスニーカーを履いてたいた。



こんなこと聞きたくなかったかもしれないけど、わたしはいつも、いっそのこと忘れてしまいたいような思い出をフォトショップにかけたように綺麗にしないとダメになっちゃうの。

思い出と気持ちが黒くこびりついて錆びちゃいそうで、唯一これだけが救う方法。
君を好きになって以降を全て過ちと思い込む自分から解放される手段。

高校生って難しくてさ、わたし君が好きすぎてもはや君になりたかった。

君がすごいセンス良かったり、運動できたり、友達多かったり、英語の発音上手だったり文系選ぶのに私より数学できたり、自由だったり。
そういうところが1番好きで憧れだったけど1番嫌いで負けたくなかった。

本当に敵意剥き出しに君と戦ったこと何度もあるよ。
恋人にそんなことするなんて今じゃ考えられない。
馬鹿だよね、ごめんね。

君は多分浮気しちゃったのか押しに弱かったのか何かわかんないけどミクちゃんとあの日に何かあったでしょ。
話してくれないからわたしの中で最悪なことになっちゃったのよ。
今更何も言わなくていいし、わたしももうどうでもよくなったから結果オーライじゃない？



そういえば、あの時の別れ話で「それでもひつじちゃんは忘れられないしずっと大事な人だよ。俺の1番だよ」ってちゃんと言ってくれてありがとう。

あの時は周りの友達に君が馬鹿だと愚痴ってしまったけど、今ならちゃんとわかるよ。

口下手で照れ屋で一回もわたしのことを下の名前で呼べなかった君が言ったその価値も嘘じゃないってことも。

大事な人誰？って聞かれたとき、きっと君の姿は頭の隅にすらないと思うけど、それでも君はわたしにとってすごく大事な人だったと言いたい。

君には会えません。

会おうかどうか何度も考えたけどやっぱり会えない。

もしも会えるなら、熱帯夜の恵比寿でおいしいワインを飲んでわたしは黒いワンピースで…と少し考えたりもしたんだよ。

こうして書くことで行き場のない、不燃ゴミみたいな気持ちをちゃんと全部美化できた。

書いてるうちにちゃんとさよならできる気がしたので、ここで終わりにします。

たくさんありがとう。
今は好きでも嫌いでもない君へ。

、

ps.わたしはあなたを忘れるけど、あなたはわたしのこと、絶対に忘れちゃダメだよ。