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あるシェアハウスに住む、厄介者たちの物語。

2021/2/23 読書記録no.23「プラージュ」

この作品は、源さんが出演していたものです。
ただ映画館で上映とかじゃなくて、
WOWOWでテレビドラマ化されて放送されていたので、
作品自体は、まだ見たことはありません…
(とてつもなく、見たいのですが)

小説を読みながら、
「この役を源さんが演じていて、こんな風なセリフを言っているのかな」
とか、そういう想像力を掻き立てています。笑

今日は、こちらの本をご紹介します。


作品について。

『プラージュ』は、誉田哲也の小説。
2015年9月に単行本、2017年6月に幻冬舎文庫が発売された。
2017年に、WOWOWでテレビドラマ化された。
全5話。主演は星野源。
第8回「衛星放送協会オリジナル番組アワード」
審査委員特別賞(ドラマ部門)受賞。

キャスト

吉村貴生 - 星野源
小池美羽 - 仲里依紗
野口彰 - 眞島秀和
矢部紫織 - 中村ゆり
中原通彦 - 渋川清彦
加藤友樹 - スガシカオ
朝田潤子 - 石田ゆり子

裏表紙のあらすじ

仕事も恋愛も上手くいかない冴えないサラリーマンの貴生。
気晴らしに出かけた店で、勧められるままに覚せい剤を使用し、
逮捕される。仕事も友達も住む場所も
一瞬にして失った貴生が見つけたのは、
「家賃5万円、掃除交代制、仕切りはカーテンのみ、
ただし美味しい食事付き」のシェアハウスだった。
だが、住人たちはなんだか訳ありばかりのようで…


理解するのは難しいけど、印象的な言葉。

なんせ、登場人物は全員が「元・犯罪者」
なのでその人から発せられる言葉も、ちょっと理解しづらい。
でも、その中にでも深いものがあったので、
ここに残しておこうと思います。

P29 社会などという綺麗事は、
たった一太刀の落雷でいとも容易く断ち切られてしまう、幻想だった。
抜け殻となった文明は、もはや人力では弔うことすら、
不可能な怪物の亡骸だ。信じる自由はあろう。
その怠惰にあごの下まで浸りきって死んでいくのもいいだろう。
その方が幸せだというのなら一理頷けるものがある。だが、現実は違う。
この現実は、社会とも文明とも相容れない。
現実とは、光と同等の闇であり、
死に囲まれた偶然の生であり、残酷なまでに、一方的な時間の流れだ。
P74 欲望というのは、相手から何かを奪いたい気持ちさ。
奪い取って、自分の自由にすることで、満足しようとする。
でも、人の思いというのは、そういうものではない。
人を思うということは、むしろ相手に与えるということさ。
P149 ここが足場になるんだったら、そうすればいい。
ここを足掛かりにして、次のステップに踏み出せるなら、そうしたらいい。上手くいかないときは、むしろ立ち止まらない方がいいのかも。
止まっちゃうと、次動き出すのが辛くなっちゃうから。
体だけでも動かしてれば、きっとなんか、いいアイデアも浮かぶよ。
でも、忘れないで。ずっとここにいることは、誰にもできない
P162 人生なんて、そんな簡単にリセットできるもんじゃない。
過去はいつまでだってついて回る。
罪を償うことはできても、過ちを犯した過去を消すことはできない。
だから、疑われるのもある程度は仕方ないと思う。
それは我慢するしかない。別に辛くとも何ともない。
ただ悲しいのは、どんなに本当のことを言っても、
声を枯らして訴えても、結局信じてもらえない
こと。
P190 話せる人間と、話せない人間の、境界っていうかさ、
そういうのを知るって大事よ。みんなに知ってもらう必要はないけど、
誰にも知られないようにしてたら、
人間なんて、案外簡単にパンクしちゃうんだから。
P198 「前科者」というレッテルは、人を確実に、違ったものに見せる。
顔も体も、声も仕草も、笑顔も涙も、何一つ変わらないのに、
まるで根底から人間が違ってしまったかのように見える。
そうしているのは人間であり、されているのもまた、人間だ。
いや、人間の持つ、言葉だ。
P201 人間の性質が平等でないのと同じように、
それに備わる運もまた平等でない。
それらを平等に補正することは誰にもできない。
同じように、法をいくら整備したところで、
世界から盗みは無くならないし、戦争も止められない。
たった一つ明るい材料があるとすれば、
それは、人間はまだその努力をやめていない、という点だろうか。
P201 真実など、あってないようなものだし、
それが正しく評価されること自体、奇跡に等しいことなんだから。
P231 頭の中に渦巻いていたものが、
体の外に溢れ出そうとしているのは事実だった。
あの出口のない、思考の迷路。行き場のなくなった混沌が悲鳴をあげ、
今まさに、この体を内側から突き破ろうとしている。
P235 料理は好きだ。人を喜ばせることができるから。
誰もが必要としていることだから。
すぐに消えて無くなるから。温かい、命の繋がりを感じるから
P236 静寂は嫌いじゃない。孤独も苦ではない。
本当に怖いのは、静寂をなくすことだ。
孤独を選ぶ自由すら奪われることだ。
P236 人間の持つ関心や興味は、下世話な好奇心を安易に作り出す。
膨れ上がり、暴走を始めた好奇心は真実など求めなくなる。
ただ、生贄が欲しいだけ。納得のいく悲劇が、見たいだけになる。


作品を読んで。

なんというか、
この物語の世界が私の経験したことないことばかりなので、
むしろ、その知らない世界観がとても面白いです。

主人公・貴生は覚せい剤をしましたが、
所持ではなく、たった1回だけ服用してしまったせいで、
逮捕されてしまいますが、いたって普通のサラリーマンです。
その「普通」の貴生が間にいるからこそ、
シェアハウスに住んでいる過激な人たちのことを楽しめるというか。

普通の感覚を持っている貴生がそこにいて、
寄り添ってくれるシェアハウスのオーナーさんがいて、
登場人物の人たちは、いろんな過去を抱えていて、
でも、それでもちゃんと生きようと、更生しようと必死になっていて、
私は「そっち側」の人間になったことはないので、
この人たちの気持ちなどは分かりませんが、
一度の過ちで、世間の目が厳しくなる、今の日本の風潮は、
きっと、こういう人たちを苦しめているんだろうな、って思いました。

でも、一度悪い道に走ったら、なかなか戻ってこられない、という、
考え方にも頷ける部分もある気がします。

だから、難しいですね…


私は、その世界のことを知らないけど、
今もこの日本のどこかで、この本のような世界はきっとあって、
その人たちの世界を少しだけ覗けた気がして、
嬉しくはないけど、気づかされることがありましたね。

そっか、そういう考え方をするのか、って。

世間一般の線から、外れてしまった人たちは、
こういう思いをしていて、こういう考え方を持っていて、
新たな知識として、私はこの本を楽しんで読むことができました。

今回は小説ですが、
もしWOWOWで作品が見られるなら、貴生を演じる源さんがみたいな。


おりょう☺︎

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