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「偶然出会える場所」として新たな市場価値を生み出すオンラインマルシェの形 Local Craft Market主催 澤田 哲也さんに聞いてみた!


2020年5月16日~17日、場所を超えて、作り手の想いにふれる、ローカルがつながる​オンライン・クラフト・マルシェ Local Craft Market(ローカルクラフトマーケット)を主催された、ミテモ株式会社 代表取締役澤田 哲也 さんに取材をしました。

【ミテモ株式会社】=================================================

私たちミテモは、人材育成・教育のプロフェッショナルとデザインとITに通じたクリエイターが集まる学びのクリエイターチームです。 教育、デザイン、ITの力を掛け合わせ、人・組織・地域の課題解決につながる「 いまだかつてないアイデア」を様々なお客さまとともに生み出していきます。
https://www.mitemo.co.jp/
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澤田さんを取材していく中で見えてきたのは「オンライマルシェ系イベントならではの可能性」。はたしてそれはなんなのでしょうか?

商品に込められた作り手の想い、そして商品が作られる現場の「温度感」を感じてもらうために

―はじめまして。よろしくお願いします。さっそくではあるのですが、Local Craft Market(以下LCM)をなぜを始めようと思ったのでしょうか?リアルでマルシェなど行っていたのでしょうか?

はじめまして。よろしくお願いします。実は私たちの会社は2020年4月まで、マルシェなどの企画・運営をしてはいませんでした。
私たちの会社の事業の一つとして、工芸ブランド支援として、商品開発や販路開拓の支援をしています。工芸ブランドの皆さんと一緒に、「事業を存続・継承していくためのブランドづくり・会社づくりの支援」を模索し、事業を一緒に立ち上げていくのが私たちの仕事です。
しかし、昨今の新型コロナウイルスの影響で 国内の流通がストップしてしまう中、私たちが支援する工芸ブランドの皆さんの事業も例外なく苦境に陥っていました。
「この予測不可能の状況下でどうするか」と考えた時に、既存の小売・流通がストップしているからといって、ただECサイトを作るだけでは生活者に商品を届けることはできないと私たちは考えました。受け皿としてECサイトを作ったとしても、知られなければその価値は伝わらないからです。
ではどうしようか、ポータルサイトをつくろうか、とも考えましたが、私たちはオンラインの場を違う角度から捉えてみることにしました。
私たちは2013年から、オンライン会議システムZoomを使ったオンライン・ワークショップを企画・開催してきました。
長年にわたって培ってきた、オンラインを使った場を作るノウハウを活用し、作り手と使い手がオンラインで出会い、話し合う場を作る。そうすることで、ECサイトやWEBサイトで商品を紹介する、動画を見せるといった従来の「伝え方」とは異なる情報伝達が可能になることを発見しました。
それは「ダイレクトに作り手の想いを伝えることができる」というものです。

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WEBページや動画は確かに、商品の仕様や雰囲気を伝えることができます。しかし、それらはどこか編集されたものであり、作り手一人一人が商品そのものやその工程に込めている「想い」、現場の「温度感」はこぼれ落ちてしまいがちです。しかし、オンラインで出会い、直接コミュニケーションができる場であれば、作り手の温度感が一人一人に伝わります。そうすることで、結果的に、より商品の価値が伝わるようになるのではないかと私たちは考えています。

商品に込められた作り手の想い、そして商品が作られる現場の「温度感」を感じてもらうために、オンラインで複数の作り手と出会い、話を聞くことができる「オンラインマルシェ」という形式でLCMを開催しました。

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LCMでは「ストーリーが前面化」していた

― 実際にイベントを開催してみて、リアルな販売会との違いは感じましたか?

とても感じました!従来のリアル開催の展示会・見本市では、商品を中心としたモノをいかによく見せるか?が求められます。例えば、ブースの装飾、ライティング、ポップアップスタンドのデザインにこだわり、商品そのものの魅力を引き立てていきます。
これに対して、オンラインのプレゼンテーションでは、そもそも商品そのものの質感や品質を伝えることに向いていません。やはり実際に手に取ってみるのと、画面越しで見るのとでは、伝わり方が全く異なります。


ではオンラインのプレゼンテーションだからこそ伝えられることとは何か?それは例えば、普段のリアル開催の展示会・見本市では見せられないような製造工程であったり、現場の様子、製造・加工技術のディテール、そして「なぜ、この商品を作っているのか?」「なぜ、この製法で作っているのか?」という作り手の想いそのものです。このように、リアルとオンラインとでは、伝えられる情報が全く異なるのだということを痛感しました。

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また、個人的にリアルとオンラインマルシェとの違いで注目したいと考えているのは「ストーリーの位置づけ」です。
これまで私たちは商品を買うとき、その質感や価格など「目」でみえる情報から確認します。そして、その商品の背景にあるストーリーは最後の決め手となる存在でした。
しかし、LCMではこの順番が逆転していました。「目」で見える情報が最低限となり、直接作り手の話を聞く場だからこそ、商品にまつわるストーリーを一番はじめに知ることになる。そして、ストーリーに共感した上で、購入するために必要な情報を知っていく。このようにLCMでは「ストーリーが前面化」していたのがとても印象的でした。

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作り手と使い手の関係を深める一つの選択肢として残っていくもの



―工芸ブランドと深いつながりがある澤田さんが感じる、クラフトとオンラインの可能性は何だと思いますか?

クラフトをはじめとする工芸ブランド業界において、オンラインはブランドを成長させていくための有力な選択肢になっていくと思っています。
今回のLCMのようなオンラインマルシェももちろん、例えばオンライン・クラフト・ツーリズムなども今後台頭していくと考えます。

工房で作って、商品を見せて、販売するという商流から、使い手である生活者にものづくりそのものを見てもらい、共感してもらい、商品を届ける。その過程で子でまでにない、作り手と使い手とのコミュニケーションが生まれていくことになると思います。中には商品を届けてからも継続的にコミュニケーションを取り続ける作り手も使い手も増えていくかもしれません。使い手は作り手から直接メンテナンスの仕方を学ぶことができ、作り手は使い手から次なる商品のアイディアを学ぶことにつながる可能性があります。このように、オンラインを介した関係は、そのブランドをより魅力的なものに成長させていくための基盤となる可能性があると考えています。

このようなオンラインを介した作り手と使い手との関係は、一過性で終わるものではないと思います。ただ、オンラインはリアルにとってかわるものでもないと思います。
作り手と使い手の関係を深める一つの選択肢として残っていくものであり、そのような関係づくり相性がよいブランドや企業が用い続けていくことになるでしょう。そして、その動きは国内市場にとどままらず、海外市場とつながる可能性も大いにあると思います。


オンラインの場のテーマをどのように設定するか、という課題

―澤田さんが思う、今様々な場所で開催されている「オンラインマルシェ」そのもののの可能性とは何だと思いますか?

私は「偶発性」だと思います。場所を超えて、思ってもみなかった工芸や作り手と偶然出会うこと。これがオンライン上で開かれるオンラインマルシェの可能性だと考えています。

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一方で見えてきているのは、オンラインの場のテーマをどのように設定するか、という課題です。
ただオンラインマルシェを開くだけでは誰にも届けられません。よりテーマ設定を洗練させていくことが求められます。ローカル・クラフトだけでは、まだまだテーマとして曖昧なのだと感じています。

また、作り手側にも課題が残されています。そもそもオンラインで伝えることに慣れてもらう必要があります。何よりも、自分たちのブランドの核となるストーリーをしっかりと認識し、自分たちなりの伝え方でプレゼンテーションすることが求められます。運営も、そのストーリーを伝えられる舞台を整えていく必要があります。

このようにオンラインマルシェの形は、今後もどんどん変わっていくと思います。LCMは、今後、作り手の価値あるストーリーを磨き上げること、そして来場者に驚きと感動を与える出会いを演出していくことに力を入れていきます。そのためにも運営チームと作り手が一丸となって場を育てていく必要があると思います。

(インタビュー終)

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澤田さんのnoteでは、「Local Craft Marketのつくり方」という、これからオンラインマーケットを開いていきたい人にとって、貴重な知見が惜しみなく詳らかにされた記事が掲載されています。こちらもぜひどうぞ⇓

「場に参加することに金銭と時間を投資するのではなく、伝える・届ける・つながることに金銭と時間を投資できる文化を育てていきたい」(抜粋)

第3回 Local Craft Marketも開催決定

8月22日には、第3回の開催が決定していて、上記にてチケットを購入することができます。


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プロフィール

澤田 哲也
株式会社インソース 取締役 / ミテモ株式会社 代表取締役

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採用コンサルティング会社を経て、2007年 社会人教育・研修を手がける株式会社インソースに入社。5年間で述べ300社の民間企業に対して、次期経営人材育成や組織変革をテーマに人材育成プログラムの企画・設計に携わる。また、新規事業開発にも取り組み、2012年にミテモ株式会社の事業開発を担当、同年 代表取締役に就任。
オンライン教育サービスやデザイン思考をベースとした新規事業・商品開発プログラムをはじめとした多種多様な育成支援事業を立ち上げる。
2016年から全国各地の地方自治体との連携による事業創出・商品開発・販路開拓・デザインイノベーションのための教育事業に取り組む。2018年にはJAPAN BRAND PRODUCE SCHOOL設立。日本の地場産業や伝統工芸にデザイン・クリエイティブを取り入れ、商品開発・販路開拓を手がけるプロデューサー育成に取り組む。2020年5月にはローカル・クラフトに特化したオンライン商談会 Local Craft Marketを立ち上げ、オンラインを活用した作り手と使い手がつながる場づくりに取り組んでいる。

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【記者プロフィール】

村田愛  アレルギーっ子の旅する情報局 Child × Allergy × Trip 主宰

2016年 アレルギー対応ツアー制作クラウドファンディング83万円集め達成
・2016年8月 環境アレルギーアドバイザー資格取得
・2016年12月 第二回みんなのアレルギーEXPO出展&講師
・2017年 S&B エスビー食品株式会社営業用資料に掲載
・2017年7月 クラブツーリズム様主催アレルギー対応ツアー説明会に講師
・2017年10月 第三回みんなのアレルギーEXPO出展
・2018年2月 アレルギーマークリリース(読売新聞・毎日新聞・朝日新聞掲載)
・2018年6月 WAKUWAKUリリース
・2018年10月 FOODALLERGYCARDリリース
・2019年2月~2020年2月 WAKUWAKU VOL2~4リリース


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